部活動
街灯もつきはじめ、そろそろ日も沈もうかという時間。
公園のベンチで暇そうに空を仰ぐ愛海の横で必死にメモ帳と格闘している歌奈子の姿があった。
メモに書かれているのは新聞部、合唱部、パソコン部、古典部、吹奏楽部などなどたくさんの部活が羅列されている。
すっかりと大事な要素を忘れていた。愛海が通う高校が生徒の自主性を重んじるとか何とかで部活を立ち上げやすいのが特徴だ。よって、どこにでもあるような部活から少々意味が分からない部活まで様々な部活が乱立しているのだ。
「しまった……話には聞いていたが、これほどの数とは思わなかった」
「でしょ? 私も選ぶときすごい迷っちゃって」
愛海が浮かべているのはいつも通りの笑顔のはずだが、それがなんだか恐怖を覚えさせた。
文化部だけに限っても相当数の部活があり、よくこれほどの情報を覚えられているなと関心すら覚える。
「なぁマンガ研究部と漫画部ってどう違うんだ?」
「そうね……あんまり一緒にしてほしくないからちゃんと言わせてもらうけど、漫画の描写や内容について語り合うのが研究部で制作して文化祭とかで出品するのが漫画部ってところかしら……」
「探偵部って何してるんだ?」
「文字通り探偵よ。学校内で起こった小さな事件の解決とかしてるみたいね。たまに新聞部か生徒会新聞で取り上げられるけど、そこまで目立って何かってことはないかしら」
説明を聞く限り、それぞれ違う活動をしているらしいが、探偵部だけではなく、なんというか名前からなんとなく想像はつくが、本当に許可が下りたのかと疑問を浮かべざるを得ない部活が多数ある。
ワープロ部、ファミコン部、公衆電話部、昼寝部、快眠部、全部……いくら何でも自由すぎやしないか。
前二つは分からなくもない。しかし、公衆電話部って何をしているのだろうか? 昼寝と快眠って絶対寝てるだけの気がする。そして、全部は部活なのだろうか? だとしたら何をしているのか全力で問いただしたい。
「ヒントくれないか。一曲、歌うから!」
「歌はやめてほしいかな。ヒントね……文化祭に出品するようなものがある部活ってところかしら。これで大分絞られたんじゃないの?」
愛海のヒントを聞いて再び、手元のメモ帳に視線を落とす。
まず、出店ではなく、出品となれば何か物を作る部活のはずだ。これだけでかなりの数が削れた。残っているのは美術部、漫画部、パソコン部、カフェ部、手芸部、調理部などだ。
ふと、愛海のカバンを見てみれば、中からあるものがはみ出ているのが見えた。
「あぁ……なるほど……」
「わかったの?」
「まぁな」
得意げに宣言する歌奈子を見て愛海は意外そうな顔を浮かべる。
実際に文化祭に出品をする部活動は約20なのだが、名称だけだと何か出しそうだという部活を合わせればそれなりの数になる。
あてずっぽうかもしれない。そう思った愛海だが、一応先を促す。
「じゃ、正解を聞きましょうか」
「答えは漫画部だ!」
その瞬間、二人の間を沈黙が支配する。
「なんでわかったの?」
愛海が聞けば、歌奈子は無言でカバンを指差した。
そこからは、スケッチブックと“漫画の背景の描き方”との題名の本がはみ出ていた。
「あーなるほど……これでわかったのね」
「まぁな」
公園に二人の笑い声が響く。
夜の闇が町を包み始めていき町に灯りが灯っていく中、二人は立ち上がってそれぞれの家に帰っていく。
今日も一日が終わろうとしていた。




