帰宅部
夕暮れの公園。
愛海はいつもと同じように散歩していた。
「よっ愛海! 偶然だな!」
「偶然ね……ここ最近、毎日会ってる気がするけど」
どこからともなく現れた歌奈子と並んでベンチに座り、夕日を眺める。
「にしてもお前も暇人になったよな」
歌奈子がどこか懐かしい表情を浮かべる。
「確かに前はこんなことなかったかもね」
「だろ! いやー気分転換に散歩しようと思うとここが一番だよな! 風は気持ちいいし、景色はきれいだし!」
「そうね。小学校の時はよく来てたけど、中学に入ってからは全然だったもの……なんか懐かしいわね」
少し強い風が街の方へ吹き抜ける。
軽く帽子を押さえたのち、歌奈子は愛海の荷物に目を付けた。
「そー言えば、その荷物はなんだ?」
「あぁこれはちょっとね……そんなことよりも、訊きたいことがあるんだけどさ」
愛海は、抱えていた荷物を足元に置いて、歌奈子の方を向く。
「なんで、部活に入らなかったの?」
「あぁそのことか……別に帰宅部だって立派な部活だと思うけどな……」
「それはないと思うよ」
帰宅“部”という名称はあるが、それが正式な部活として存在する学校は聞いたことがない。最低でも自分が通っている高校にはそんな名称の部活は存在しない。
あきれたといわんばかりにため息をつく愛海の態度が気に入らなかったのか、歌奈子は何やら熱弁し始めた。
「何をいうか! 帰宅部……それは、いかに補習や先生の呼び出しと言った要素をかいくぐり、学校を出るか……自らの自由時間を増やすことを目的とした立派な活動でしょうが!」
「意味が分からないし」
立ち上がって自らの考えを高らかと演説する友人を前に愛海は思わず頭を抱えてしまう。主に余分なこと言うんじゃなかったという感情が中心だが……
「とにかく! 帰宅部も立派な部活です!」
「はいはい。わかったわかった」
これ以上、下手なことを言っても神経を逆なでするだけだと悟った愛海は、とりあえず歌奈子の意見に同意する。
「それよりもさ……私も気になってたんだけど、愛海って何部に所属してるの?」
「えっ歌奈子知らなかったっけ?」
別に知られたくないというわけではなかったが、部活の話というのはあまりしたことがなかったため、文化部だということ以外はあまり言ってなかったかもしれない。
だが、ここで正解を言ってしまうのもつまらないと考えた愛海は隣に座った歌奈子に向けていたずらっ子のような笑みを浮かべていた。
「愛海?」
「クイズしよっか。クイズ」
「クイズって普通に教えてよ!」
「まぁまぁ! 私の高校にある部活は全部教えてあげるから!」
渋る歌奈子の横で愛海はメモ帳に次々と部活名を書き出していく。
沈んでいく夕日が公園を赤く染めて行く中、二人の影はもう少しその場から動きそうになさそうだ。




