上法先輩
公園から見る夕日はいつも通り美しく、制服に身を包んだ愛海は、いつも通りベンチに座ってその夕日を眺めていた。
結局、彼の勧誘を押し切れずにジャージ愛好部に入部して一ヶ月が過ぎようとしている。
あれから、多くのことを経験し結果的にはあそこに入部したのは間違いではなかったのかもしれない。
彼から手渡されたジャージは今でも大切にとってあるし、上法先輩はうわさ通りすごい人だったりする。うん。ある意味間違ってはいない。
「あらぁこれはこれは新入部員ちゃんではないですか~なにをこんなところで黄昏てるんですか?」
「あっ上法先輩」
のんびりとした口調とまったりとした動作を携えて登場したのは、上法美教先輩その人である。
彼女は、どこか気品がある動きでベンチに腰掛ける。その姿を見れば、どこかのご令嬢に見えなくもないだろう……ジャージを着用しているという点を除けば
「さぁて、ちょっと聞きたいことがあるんだけどね」
「なんでしょうか?」
「あなたって、ジャージ愛好部のことをどうおもってるのかしらぁ? いやじゃないならいいんだけど、ちょっと勧誘が強引だったみたいだし……」
つまり、彼女は何かしらの方法で東弥の勧誘方法を知り、自分と一対一で話そうとしているのだろう。
少しばかり申し訳なさそうな顔をしていることから、愛海が本心でこの部活への入部を望んでいるのか疑問を持っているのかもしれない。
「大丈夫ですよ」
「えっ?」
愛海の言葉に美教は意外そうな表情を浮かべる。
本当に顔に感情が出やすい人だ……
クスッと笑って愛海は言葉を続ける。
「私なら大丈夫です。最初こそ、何と言いますがあまりいい感情は持ってなかったんですけど、最近は違います。部員の皆さん優しいですし、私自身も楽しめています。ただ、掛け持ちしている関係でいつもいるわけではありませんが」
「それでも十分よ。私としてはねーあなたがいやいやじゃないかって結構不安だったのぉ。まぁこれで安心できるわぁ」
美教は自身の疑問を解決できたからかご満悦の顔で立ち上がる。
夕日をバックに立った彼女はとても美しく、この風景によく生えていた。
「そうそう。あなたの意志も確認できたし、今日はこれで帰ろうかしらぁ。ちょっと、駅まで付き合ってくれない?」
「はい。喜んで」
美教が歩きだし、愛海は置いて行かれまいと必死に彼女の背中を追いかける。
今日もゆったりと一日が過ぎていく。
そして、これからも私たちの日常というのはずっと続いていくのだろう。だって、それは当たり前のことなのだから。でも、その当たり前というのは意外と難しい。だから、毎日を大切に過ごそう。そうすれば、毎日が特別な日になるのだから……
今まで読んでいただきありがとうございました。




