疑問
いつもの公園のベンチ。今日もどこからともなくやってきた愛海は、ベンチに座って夕日を眺めていた。
「ところでさ。ジャージ愛好部って結局なにしてるの?」
ちなみに今、愛海は東弥からプレゼントされたジャージを着用している。
だからと言って、彼女がジャージ愛好部に入ったということはない。ただ、活動内容が少し気になっているだけだ。
「あぁジャージ愛好部だろ? そらまぁ……なんだ、ジャージの歴史について調べてみたり市場に出回っている人気のジャージを調べたり、あとはみんなでお気に入りのジャージについて熱く語り合うぐらいか……」
「ごめん。よくわからない」
彼はかなり具体的な内容を挙げてくれたのだが、結局活動目的があまりにも不明瞭だ。
ジャージについて調べるのか、ジャージ愛をひたすら追求するのかどちらなのだろうか。
「わかりやすく言えばジャージに関することなら何でもやってOKだ」
東弥は当たり前だろといわんばかりにドヤ顔である。
うん。普通の学校にそんな部活ないのだから、知る由もないだろう。
膨大な量を誇る愛海の記憶の中にもそんな活動内容の部活がこの学校以外にあるという記憶はない。
「それで? どうするんだ? ジャージ愛好部は」
「まだいうか」
あれ以来、意外としつこく部活の勧誘をされている。ぶっちゃけた話、兼部してもいいのかもしれないが、なんというか成績表とかに“ジャージ愛好部”と書かれたくないし、今後その類のデータを見た人に突っ込まれた際に何と答えればいいのだろうか。
活動すればわかるのだろうが、なんだか入ろうと気になれない。
「俺たちはいつでもお前を待っている。愛敬……思い切って楽になれよ」
うん。そこまで悩んでいるつもりはないけれど、東弥は愛海の肩に手を乗せいる。
はたから見れば悩んでいる女の子に幼馴染が“悩みがあるなら相談しろ!”とでも錯覚しそうな状況だ。
「別に入部は考えてないって……ほか当たったら?」
「いーや! 愛敬にぜひとも入ってもらいたい!」
なぜ、そこまで押すのだろうか?
その点が不思議でならなかったが、愛海はなかなか首を縦に振らない。
「見学だけでもいいから来てくれ! 本当に頼む!」
だが、真剣に頭を下げる東弥を見て愛海はわずかながら、罪悪感を覚えだしていた。
本当に入らないで断り続けてよいものかと……
「わかったわよ。見学だけね」
そして、ついついこんなことを言ってしまうのである。
「マジか! 本当にありがとう! さっそく部長に報告するからな! 日時はいつでもいいぞ!」
それだけ言って東弥は勢いよく走り去っていく。
「なんなのよ……」
ベンチの前には困惑した愛海が残るのみである。
日は沈み、街の灯りが一つ、また一つとつき始めた時だった。




