大事な話
夕暮れの丘、愛海がいつも通りに訪れるとベンチには東弥が座っていた。
「よっ愛敬!」
「どうしたの? 珍しいわね」
相変わらず上下ともにジャージを着ている東弥の姿を見てため息が漏れるが、彼自身は気にする気配はない。
東弥は、片手でベンチを指差してから手をこちらに振った。どうやら横に座るようにうながしているようだ。
「わるいな。ちょっと、愛敬に用事があったから待ってたんだ」
「へぇ? 何?」
「実は……愛敬に大事な話がある」
そう言って愛海を見る目は真剣そのものだった。
よく見れば彼の背中からきれいに放送された何かがチラッと顔を出している。何かのプレゼントだろうか? だが、思い当たる節がない。愛海の誕生日は12月だし、何かを達成したわけでもない。
いや、愛海の思考回路はある答えをあえてスルーしていた。
彼に限ってそんなことないだろうと……いや、でも彼ものすごい真剣なまなざしでこちらを見つめていた。それこそ、何十年ぶりかに見る真剣な目だ。
「愛敬……いや愛海。俺は、お前とずっと一緒にいたい」
ほら! 来たよこれ! 完全に告白じゃない!
愛海の心臓はばくばくと早く、大きく脈を打ち、顔はリンゴのように真っ赤になる。
ここで醜態をさらすわけにはいかないと大きく深呼吸してから顔の顔見ようとするが、恥ずかしさのあまり直視できないでいた。
「ちょっと待って! 心の準備が!」
そして、思わずこんなことを言ってしまうのである。
「そうか。と言いたいが、そんな悠長なこと言ってられないんだ」
「待って! 本当に待って!」
「わかった。仕方ないな……3分間待ってやる」
愛海の様子がおかしいと感じつつも時計と夕日を交互に見ながら時間を過ごす。
こうしているとなんだか時間が長く感じていた。
それは、愛海にしても同じで色々な考えが頭を巡り巡っていた。
「そろそろいいか?」
そうしているうちに時間が過ぎていたようだ。
東弥は愛海の顔を覗き込んでいた。
「えっうん。別にいいわよ!」
何とか平静を取り戻した愛海は、できる限りいつも通りの態度を取ろうとする。
東弥は、背中から大きなプレゼント箱を取り出した。
「愛海! 俺と一緒にジャージ愛好部に入ってくれ!」
「はい?」
あまりに予想外の内容に力の抜けたような声が出てしまった。何を急に言い出すんだこいつは
「実は、あまりにも部員が足りなくて廃部の危機になってるんだ! いっそのことユウレイ決め込んでくれても文句は言わない! 入部してくれ! 必要な道具はこちらでそろえてある!」
愛海は、彼の言うことを理解するまでに時間がかかった。しかし、それを理解してからの行動はとても速い。
「何を言ってるの! 私の時間を返せー!」
柄にもなく怒りをあらわにした声を上げる。
これはまずいと悟った東弥は、逃げるように走り去ろうとするが、愛海にがっしりと腕をつかまれそれはかなわなかった。
「あっえっと愛敬?」
「何?」
あっ終わったな。この時、東弥は本能的に悟っていた。




