曇時々〇〇
夕暮れの公園。
丘の上に設置されたベンチには、今日も愛海と歌奈子の姿があった。
「ねぇ。曇り時々雨とかいうだろ? それって、天気以外で使えないかな?」
「何を急に言い出すのよ!」
座ったとたんにこれだ。
昨日はあいにくの天気だったけど、今日は晴れてるな……なんてぼんやりと考えていたところへの不意打ちである。
「いやな。どっかにそんな本があった気がするから」
「あぁーそういえば小学校の時に読んだわね。そんなの……それは置いといて、何が言いたいの?」
「これって晴れ時々雷雨とか曇り時々猫とか天気のことばっかりだろ? 突き詰めれば新しい言葉が生まれるかもなって思っただけで深い意味なんてないよ」
「曇り時々猫ってどんな天気よ」
一瞬、空から可愛いにゃんこが雨あられと降り注ぐ風景を想像するが、急いでその妄想を打ち消す。
「まぁいいや。何かあるか?」
「何かって聞かれてもな……たとえばそうね、赤時々青とか?」
「なるほど……信号か」
「どこが! 時々しか青にならない信号機って不便すぎでしょ!」
「いや、愛海が言っただろ!」
愛海は、額に手を付けてため息をつく。まともに取り合った自分が馬鹿だったと……
「でも、やっぱり雨とか晴とかそんな風に使うのが一番いんじゃないの? 無理に新しい言葉造る必要もないと思うけど」
「そうだな。と言いたいんだけどな……実は、こんな宿題が出てたことを思い出したんだ」
歌奈子が突き出した紙には、確かに“課題 次の丸に当てはまる言葉を造りなさい。1.曇り時々○○”と書いてある。
「造りなさいってどんな宿題よ……聞いたことないかも」
「だろ? 私も驚いちゃって……それでな。参考にと思って話を持ちかけたんだよ」
どうやら、彼女は本当に困っているようだ。下の方を見れば、犬も歩けば○にあたるとか、石の上にも○年とか、ラーメン・つけ麺。ボク○○メンというような当てはまりそうな言葉なんてそうそうなさそうな言葉が羅列されている。
「歌奈子ってそんな変な学校に通ってたっけ?」
「いんや。普通の公立高校のはずだ」
はずだのところの声が小さかったというのは気にしてはいけないのだろう。いや、きっと創造力を育てるとかそんなことを重視した宿題に違いない。そうなれば、少しひねった内容のものがいいかもしれない。
「曇り時々……うーん。新しい言葉となると難しいものね」
その後も二人は懸命に頭をひねったが、ちょうどいい言葉が思いつかずに日が暮れていく。
気づけば夕日が沈みはじめ、今日もも一日が終わろうとしていた。




