夏の思い出
夕暮れの公園。丘の上にあるベンチには、歌奈子と愛海の姿があった。
「ねぇ今年の夏休みの思い出って何がある?」
「どうしたの急に?」
「いや。もうすぐ夏休みが終わるからさ」
確かに気づけば夏休みはあと一週間ほどしかない。夏休みなんてものはあっという間に過ぎて逝ってしまう。
「そうね……私は、この公園に毎日通い詰めたことが一番の思い出かな。いろんな人とも出会ったし、毎日変化があって面白かったな」
「なるほどな。私はやっぱり、沖縄へ行ったことかな。いやー本当によかった!」
「本当に言ったわけ?」
「あぁ! 確かに行った! 土産だって渡しただろ?」
「えぇ賞味期限ぎりぎりのちんすこうのことね」
ちんすこうという単語を聞いた途端、歌奈子は汗をかきながら目をそらしてあさっての方向を向く。
「ねー本当に夏休み中に沖縄へ?」
「もちろんよ。茶っちゃんと行ったから心配するなって……ちんすこうは沖縄で買ったやつじゃないけど……べっべつに忘れたとかそんなわけじゃないからな!」
「へー忘れてたんだ」
「ごめん! 本当にごめんなさい!」
手を前に倒して拝み倒すように必死に謝る歌奈子を見て、愛海は思わずため息をついてしまった。それはともかく、ちんすこうの入手先が気になるところだが、あまり気にしないようがいいのかもしれない。
「まぁそれに関してはいいから……ほかに何かある?」
「そうだな……愛海こそもっとないのか? 公園に来たって話のほかに」
おそらく、ほぼ毎日公園に来ていたという話は本当なのだろうが、夏休みにそれだけというのはさすがにないだろう。歌奈子とて、愛海ほどの頻度ではないがここを訪れるが、常い彼女がいるということはなかった……はずだ。
「まぁいいや。他には学校へ補習受けに行ったりとかそんな具合だからさ……あんまりこれといった感じのものはないな」
「まぁそんなイベントばかりでも疲れちゃうから、私はここで空や町を町をいてるのが一番いいのよ。町灯りにはそれぞのれ物語があって、空を流れる雲は生まれてからずっと世界を旅している。太陽や月、星々は空からみんなを見守ってくれている……そう考えると、なんかすっごく楽しいの。特にここにいると町は見渡せて空もよく見えて……考えをまとめたりするのにも最高なのよ」
愛海は立ち上がり、転落防止用の柵の前へ行き、両手を大きく広げる。
「みんな、どんな世界を見てるのって同じ地球に住んでるはずなのに一人一人で見る世界は全く違うからその世界を知りたくなる。その世界に触れてみたくなる……そう感じさせてくれるこの公園が、この丘が、この町が大好き。だから、私はこの場所にいることが一番の思い出だし、これからこの町を離れることになってもここでの出来事は大切にいしたいって思えるの」
高らかと演説する愛海の後ろで真っ赤な夕日が沈んでいく。
今日も終わりだな……夏も終わろうとしていき、秋の足音が少しずつながら聞こえてくる。
もうすぐ夏も終わりか……
歌奈子は感慨深げに空を見上げていた。




