【6話】最後の一人
「それじゃあ、次は俺の番・・・って、言いたいところですけど、知ってますよね?美波さん」
相手を見据えて、ゆっくりと話す。
知っていた理由は至極単純。すでにあの時―――保健室での一時―――に出会っていたから。そして、そのまま導かれるようにこの生徒会へやってきた。だから、自分も彼女も。両者ともに忘れているはずがなかった。
「ええ、勿論知っているわよ、神崎さん。でも、改めてお願いするわ。形だけでもしっかりやらないとね」
そういわれ、特に断る理由もないため素直に頷く。
「じゃあ・・・。改めまして、俺は神崎瞬です。一応、学年首席でここまでやってきました」
と、軽い自己紹介を終えるのと同時。ドアが勢いよく開かれた。
開かれた先には、窓から差し込む光を浴び、微かに黒光りする漆黒の髪。ストレートに伸びた髪に包まれた体は、髪とは対照的に雪のように白い肌を持つ女性が立っていた。
顔には大量の汗が浮かんでいた。気のせいか、髪と同じ色をしている目には若干の水滴がついてるようにも見える。
「ハァハァ、す、すいません。ハァ、お、遅れちゃいました」
肩を何度も上げ下げしながら話す彼女は慌てつつも謝っていた。そんな彼女を美波は一目見て、案内を始める。
「取り敢えず、席にどうぞ。自己紹介は、落ち着いてからで大丈夫よ」
美波により指し示されているのは、ちょうど瞬の目の前だった。
その、目の前の席に案内され、席に着く。そして、大きく一呼吸し、落ち着いた様子で話し始めた。
「え・・・っと、まず、遅れてすみません・・・。私は青山奈緒って言います。クラスは、2年5Bです。よろしくお願いします」
と、自己紹介をし最後に、ニコッっと笑顔を見せた。美波は笑顔をみて「よろしくね、青山さん」と言い、微笑み返していた。
「んじゃあ、俺の番だな」
先程まで倒れていた男がいつの間にか立っていた。・・・つか、美波先輩にちかすぎじゃね?20センチもあいだねぇじゃねぇかよ。
「俺は、紅木神流。美波の彼氏だ」
親指をグッ!っと、たて、異様なほど笑顔を浮かべている。その笑顔をま反対の―――氷ついた―――表情をしている美波。その顔に一本の青筋がとお―――
「グハァ」
―――った瞬間、神流が宙を舞っていた。笑顔が3割増しになりながら。
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