【16話】話し合い
今回は、まさかの雄二君目線。
「「「お願いします」」」
流石は天才集団というべきか。こいつ等挨拶とか、そう言う類の事はしっかりやってやがる。普段の生活があっての勉強とか言いたいのだろうか?
「じゃあ、桜花祭の出し物、ちゃっちゃと決めちゃって」
そんな2年5A組に似合わぬ学級担任、高梨律子は適当にそう言っては教室の隅に椅子を寄せ座った。
次いで、何処から持ち出したのかわからない本を読み始める。
まったく、それでも教師なのか分からなくなるが、あれでも結構いいところもあるので、クラス委員長として渋々教卓へ向かう。
「んじゃあ、さっそくだが、誰か良い案あるか?」
そう言っては自分を除いた29人を見る。幸いにも2人ほどテヲあげてくれている。
まずは、どんな案でも参考にしていこうと思う。だから、取り敢えず否定はせずどんどんだしてもらいそこから決める。
もし、出された案に此れと言って良い案がなければ自分のを出すとしよう。
「じゃあ、瞬。どうせ卑猥なことしか言わねぇんだろ?まぁ、聞くだけ聞いてやるよ。」
「何でそうなるの!?」
一人勝手に慌てる瞬を睨みつける。まぁ、クラスの奴ら皆、似たり寄ったりの目で見ていたのだが。
「んで、どんなのやりたいんだ?」
「それはね、ホステ―――」
「却下な」
話だけでも聞く?誰だよ、そんなこと言ったの。
予想を裏切らない回答を聞く前に止めさせ次に進む。やめさせられた本人は憎らしげにこっちを見ているが、それ以上にクラスメイトの目が瞬へ鋭く突き刺さっているのを確認し無視する。
「じゃ、次。如月はどんなのだ?」
手を挙げていたもう一人、如月を指名する。
「は、ひゃい」
……噛んだ?さっきの瞬への対応で緊張しているのだろうか?
「えっとですね。この教室と、外でできるちっちゃな屋台とかそういった飲食店がいいのではないでしょうか?王道と言えば王道ですし……」
後半、声が弱まるのが分かった。やはり、瞬への対応で緊張していたのであろう。しかし、その答えは偶然にも同意見であり、「確かに、それはいいな」と肯定する。すると、如月は否定されなかったのが嬉しかったのか、安堵の表情で席に着く。
他に、誰も手を挙げていなかったことを確認し、決を採りたい。が、瞬がさっきから「ホステスホステスホステスホステスホチキスホステス」と、一回ほど何か間違ったことを口にしており、なんか気になる。突っ込んでやりたいが面倒なので無視。
「んじゃあ、飲食店……そうだな、軽食が取れる店、それでいいな、みんな?」
いいよーやら、おっけーだの、様々な返答があったのでよしとする。そして、新たに出てくる問題はメニューをどうするか。
だが、こうなることを見越して、先にある程度のメニューを考えてきていたので、黒板に書き始める。
「わかってるとは思うが、メニューは幾つか考えなきゃいけない。俺も如月と同じような案だったから、前もって考えてきてる。今書いてるのが、それだ」
黒板に花見に来る客が多いと踏んで、桜餅。餡子と黄粉、そして抹茶で作る三色団子。ハーブティーなど、様々なものを書いていく。
「他にもこれとかどうっていうのがあったら、言ってくれ」
「悠二、いいかな?」
「ん?どうした佐川」
佐川憂。学年13位で毎日自分の弁当を作って来てるという、クラスのみんなにも料理上手として知られている彼が声をかけてきたので振り向く。
「この教室も使えるんだったら、チャーハンとかも作れるんじゃないかな?それこそ王道だしね。それにさ、簡単だし」
「なるほどな、そう言うのもありか」
ブツブツと一人言いながら、黒板にメモしていく。
「他には、なんか得意料理とかないのか?」
「たくさんあるよ、オムライスとか。凝ってるのだったら、家庭的なカレーから、肉じゃがに至って何でも」
おおー、と、クラスのみんなから感嘆の声と拍手を浴びる佐川を見て、瞬が立ち上がる。
「それだったら、俺だってなんか作るよ」
「何かってなんだよ。まあいいや、佐川にためしになんか作ってもらうか。弁当忘れてきたから頼めるか?」
「勿論、構わないよ」
「そういうわけだから、先生。調理室使っていいッスか?」
本をずっと読んでいたらしい教師に声をかける。すると、ポケットから携帯を取り出すと思ったら、とてつもない速さでガラパゴス携帯に打ち込んでいるのが分かった。そして、終わったかと思うと、今度はピロロロロとm軽快な音が鳴る。
「いいってさ。ただし、材料は事前に支給される金から出せってさ」
打つ速さもだが、返してきたも相当な速さだと思う。一体、どうなってるんだ?
「へーい。んじゃあ、皆移動だ」
この校の教師には言いたいことが山ほどあるが押さえて、皆に支持を出す。金は、支給される分(実質幾らでも出る)で払えばいいというので、気兼ねなくできる。無論、返済しなくてはならないが、無利子で貸してくれるというのだから、すごいの一言に尽きる。それで、どうやって設けているのだろうか。
しかし、今はそれをほっといて、買いものに行かなくてならない。
「んじゃあ、誰か、買い物手伝ってくれるか?」
「俺行くー」
「あ、じゃあ私も」
瞬と如月が手を上げる。他の奴らは面倒だのなんだの言って、来る気配がない。瞬は嫌だが、来るなと言えば、如月も来なくなるだろうから、渋々頷き、教室を出る。
「よし、残ったやつらは準備を頼んだぞ」
それだけ言い残し、瞬と如月を連れ、2年5A組の教室を後にした。
おかしくなければそれでいいのです。
評価お願いします。