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【15話】メール

いつもと変わらないはずの道。

いつもと変わらないはずの教室。

そして、いつもと変わらずに笑っているはずの俺達……


しかし、瞬の何かは、変わっていた。

「どうした、瞬。元気ねえな」


 今日も、ワックスで止めているのか、ツンツン頭の悠二が普段回さない気を回してくれたのか、話しかけてきた。


「ん……いや、何でもない。たださ……何か、大切な事を忘れた気がしてさ。それだけは絶対に忘れちゃいけないものなのにも関わらずに」


 どんなに振り絞っても出てこない記憶。つい先ほどのはずだと、何処か痛む体がそう告げてくる。しかし、一向に出てくる気配はなかった。唯一出てくるのは、耳に残る、あの2発の銃声だけだった。


「ま、お前のことだ。その内思い出すだろ。気にすんな。お前らしくもないからな」


 悠二がいつもよりも妙に優しい気がする。……なんか、気持ち悪い。


「ていうかさ、悠二。いつもより優しくない?ひょっとして、テンション高かったりする?」


 と、正直言って気持ちの悪い悠二に疑問をぶつける。その答えは、悠二らしい気がするものだった。


「おう!桜花祭の出し物。いいの考えてきたぜ」


「へえ……。ま、頼んだよ。特には、興味ないし」


 特に、桜花祭自体には興味がない。興味があるのは、出し物でメイド服とか、ドレス姿とか、和服姿とか。可愛い女子生徒と、桜花祭に来る若い女性にしか興味がない。


「興味がないっていう割には、顔が残念なことになってるぞ?ん?元が残念だから別に関係ないか?まあいい。他の奴の案も聞いて、何もなければ、これになるだろうな。そんな時には、任しとけ」


 なんか、最初に行っていた気がするが、このツンツン頭野郎もなかなかの残念さを誇っているから無視をする。その残念な雄二はというと、決まったわけでもないのに自慢げに高笑いをしていた。まあ、それこそ悠二らしい気がし、つられる様に苦笑いをする。


「ハハハ……ん?メールだ。んーっと……」


ピロロロと、軽快な音を鳴らす最新型の携帯を取出し確認をする。メール欄を開き、着信メールを見る。すると画面に表示される文面に書かれていたのは、たった一言。桜花祭の日に貴様を殺す、と。


「ん?なんて書いてあるんだよ?」


覗きこむ様にして見ようとしてくる悠二を慌てて手で制し、電源をすぐさま切る。そんな二人のやり取りを見てか、沙夜が寄って、話に入ってくる。


「何かあったんですか?」


「ん?それがな、瞬が誰かからメール来たらしいんだよ。でも、見せたがらないんだよ」


 クエスチョンマークを頭に浮かべてそうな顔をしている沙夜に瞬から携帯を奪おうとしている悠二が答える。

 

 対し瞬は、動揺を抑え込むかのように、慌てて携帯をつかんでいた。


「いや、人に見られたくないものとか、あると思いますよ?私だって、パソコンの中は見られたくないですし」


 自分のパソコンに記憶されているデータを思い出し、頬を薄く赤に染めながら話す沙夜を見て、悠二の力が緩む。その隙をついてか、瞬は携帯を掴み直すと、走り出す。


「別に、大した内容じゃないから。ちょっとトイレ行ってくる」


教室を出る間際、それだけ言い残して出ていく。トイレに行くなんて普通は報告なんてしないが、他に、良い言い分けが見つからなく、そう口が勝手に言ってしまった。しかし、そんなことを考える余地も暇もなく、瞬はどこを走っているかも分からないまま廊下を走り、ある程度進んだところで一息はいてから、歩き出す。


 そして、携帯に電源を入れて、再度メールを見る。


「一体……誰なんだ」


 メールアドレスを知っているのは、悠二と如月さん。そして、生徒会メンバーの皆。あとは、精々、お子様携帯の花織ぐらいだった。


 まず、メールアドレスが誰のとも一致していなかったので、この7人は考えずらい。


 こうなったら、仮に携帯をもう一台持っていると考えて、一人ずつ、考えていくしかない。まず、悠二。俺と話してたから無理。次に、如月さん。確か、本を読んでいた。……一組の男子がキスをしてるシーンなんて、俺は見てない。そうだ。決して見てない。


 美波先輩はどうせ、神流先輩に追われてそんな暇はないはず。青山さんは学年1位を目指して常に勉強しているらしいから、無いだろう。まあ、全教科満点とって、同率順位じゃなきゃ1位になれないけど、それは言わないであげる。そして、シャネルちゃんは、俺を助けてくれたんだ。殺すなんていうはずもない。大体にして、殺すというなら助けなくてもいいはずだ。


 じゃあ、一体だれが……


 その答えに思考が辿りつくのと同時、生徒会室の前に着いていた。それも無意識のうちだった。


 だれもいないと思われる生徒会室のドアを開けてみる。すると、窓の開けられた部屋の奥では、紅茶を飲み、クリームブラウンの髪を風に(なび)かせている美波先輩がいた。


「あら、瞬。どうかしたの?」


 瞬に気付いた美波は、紅茶の入っているカップを置きながらそう言った。


「え?いや、何でもない、です……ただ……」


 先程のメールの事を話すか否か。そう迷い口ごもる。それを不審に思ったのか、美波は軽く首傾げて問う。


「ただ?何かあったの?」


「い、いや。なんでもないです」


 咄嗟に言うべきではないと判断し、慌てて会話を切ろうとする。自分が作ったと思われる厄介なことだから、巻き込むわけにはいかない。


しかし、そんな安易な考えはまるで見透かされているかのように少し笑みを浮かべ、美波先輩は言った。


「そう。ならいいわ。でも、瞬は私の眷属であり、大事な戦力(なかま)でもあるのだから、私に何でも相談していいからね?」


 そんな美波を見ていると、言おうとは思っていなかったメールの事を言おうか、再び迷う。いつかの様に、温かく包まれるような感覚がある中、頭の中に何度も過ぎる。


 加えて今は、眷属という言葉が同時に頭を過ぎる。意味の分からないことをすぐに聞こうとするのは優等生となった血が勝手にすることなのか、それとも、自分自身の悪い癖なのか、分からないが疑問を口にしてしまう。


「眷属……って、なんですか?」


「そうよね。まだ何も説明してないのに、いきなりじゃ分からないわよね。説明を……する時間は無いわね。また放課後に話すわね。だから、早めに来てくれるから?」

 

 時計を見てみると、すでに8時27分と、HR3分前というギリギリの時間になっていた。湧き上がる疑問を無理やり飲み込むと、どこか慌てたまま喋る。


「わ、分かりました。じゃあ、放課後に会いましょう。それでは」


 そう言っては軽く礼をし、今来たばかりの道を戻っていく。


 戻っていく最中、再度メールの内容が頭を過ぎる。

 

『桜花祭の日に、貴様を殺す』


 たったそれだけの言葉に込められた意味。いや、殺意からまるで逃れるかのように、瞬は走りながら教室へと向かった。

流石に、2000字を超えると、辛いです…

ここまでは、布石。

つまり、こっから先。

つまりは、桜花祭当日とその日までが決戦です(←何言ってんの俺


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