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【12話】妹

包丁を無理やり引っこ抜き、ドアを元に戻す。……穴開いてるよ。


さて、飯だ飯。……ってて。

「ってて……」


痛む頭に、腫れる頬をさすりながら、箸をとる。


「まったく……。まーくんったら」


まだ怒っているのか、正面に座る咲がそう言う。気のせいか、頬が少し膨らんでいるようにも見える。


 左隣に座る美波は、味噌汁を軽く口に含んで飲むと、口を開いた。


「ごめんなさいね、咲さん」


「い、いいんですよ、美波さんは。悪いのはまーくんなんです。きっと」


「咲……俺は悪くな……何でもないっす」


なぜか、咲の全力で睨まれ謝る。……俺悪くないのに。


「つか、部屋に入るときはノック……しなくてもいっす」


再度蛇に睨まれた鼠のように、居すくまる。


 先程から俺をにらんでくる咲。桜山家の一人娘だったはずだけど、家が隣同士で幼馴染なわけで……まーくんって、あだ名で呼んでくるし……。というか、昔はもっと優しい目をしてたはずなのに。


「でも、なんでそんなに怒ってんだ。咲」


目玉焼きに醤油をかけながら聞く。あ、美波先輩はソース派か。


「別に、怒ってないもん」


「そ、そうか?ならいいけどさ」


 ご飯を軽く口に含む。噛みしめてるうちに会話が途絶える。そして、寂しい食卓に鳴り響く時計のは、針が進む音だけだった。


 そんな中に、最初に入ってきたのは、ドアが開かれる音だった。


 ドアの奥から現れたのは、茶がかかったような黒髪に包まれる眠たそうな顔をしている子だった。目はほとんど開かれていなかった。


「ふわぁ……お兄ちゃん、咲おねえちゃん、おは、よ……う」


と、目があいていないと思っていたのも束の間。目は一気に開かれ、驚愕の色に染まっていた。


「お、お兄ちゃん、その人。だ、だれ?」


眠たそうな雰囲気から打って変わって元気に慌てる女の子。それを見て、苦笑する咲。


「お、落ち着け花織(かおり)。今説明するから」


「あらあら。私は紅葉美波。瞬の彼女をさせてもらってるわ」


 先程、咲に説明したときには言わなかったことを、ここで新たにさらっと言う。


 そんな爆弾発言を聞いた二人は、動きを完全に停止させていた。ただ、その代わり、首から上がカクカクとロボットのように、小刻みに揺れているだけだった。


「……えっと、こいつは花織っていいます。一応、義妹(いもうと)です。……花織?」


返事がないので、立ち上がって近づき、肩をたたく。


「ねぇ、お兄ちゃん」


肩を何度か叩いたところで反応する。


「ん?どうした」


「お兄ちゃんは、私だけのお兄ちゃんじゃないの?」


「……へ?」


いきなり、何を言い出すんだこいつは!?


「お兄ちゃんは、お兄ちゃんは、私だけのお兄ちゃんだもん、わぁぁぁぁん」


と、言いながら泣き出す。そして、そのまま俺に抱き着いてくる。


こういったことは、昔から親がいないなため、慣れている。昔は本当に俺と咲が兄と姉みたいな感じであやしていたことすらあった。


 だから、こういうときには、撫でてやると落ち着くってことは熟知している。


「大丈夫だから、安心しろ?俺は花織だけのお兄ちゃんだからな」


ゆっくりと撫でながらそういう。泣きながら抱かれたため、制服がザンネンなことになっているが、ここはお兄ちゃんの意地にかけて我慢。


「ほらほら、花織。お兄ちゃんはどこにも行かないから」


何度も何度も、ゆっくりと撫でてあげる。日頃、髪を大切にしているのかサラサラと艶がある。そんな髪を触っていると、なんというか落ち着く。昔から撫でてきたからだろうか。


 すると、いつの間にか泣き止んだのか、胸元で軽く涙を拭っているだけだった。


「ほ、ホントに?お兄ちゃん」


 まだ拭いきれてないのか、目尻に涙を少し浮かべながら上目使いで見てくる。


「当たり前だろ?だから、飯食え。じゃないと遅刻するぞ」


「うん!分かったよ、お兄ちゃん」


 泣いていた時の顔はどこに行ったのか、笑顔でそういうってきた。

 

 まったく、何時まで経っても、子供のままだな、花織。



花織は、小学生ですので悪しからず。



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