表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/22

【10話】黒

命。それは、どんな生き物にも必ずある、かけがえのないもの。


そして、それは……

 血のように紅く染まる空。


 その下に広がるのは、まるで夢でも見ているかのような、非日常的光景だった。


 黒い大きな翼を背にしている男が4人、円を作って立っている。その中心には、夕日の輝きを受け、赤みを帯びていた黄金(こがね)の髪を携えている少女が立っていた。


 加えて、その後方に、少年が一人座りこけていた。


 少年と少女は、先程まで二人仲よく遊んでいた。しかし、この4人が現れた途端、全てが壊された。一緒に漕いでいたブランコは跡形もなく壊れ、砂場に有る、小さな砂のお城には、黒の羽が落ち、崩れていた。


 全てを破壊され、何もできず、ただ目の前の光景を見る事しか、少年には許されていなかった。


 そんな中、一人の男が少女の腕を粗々しく掴み、黒い翼で包んだ。その一瞬。包まれる直前、少年はほかの物はまるで見えなかった。でも、それだけは。電子顕微鏡でを介してみたかのように、鮮明に、見えた。


 少女の眼から零れ落ちていく(なみだ)を。


 (なみだ)を見た少年は奥歯を強く噛みしめ、動かない体を無理やり起こし上げた。衝動に駆られ起きたわけではない。


 ただ。(ただ)守りたかった。


 少年は立ち上がるとよろよろとふらつきながら歩み始めた。先程倒れていたところから、男たちまでは精々10メートル前後。その間を少しずつ、可能な限り早く進んでいった。


 黒い翼に包まれながらも、少女は必死に抵抗しているようだった。黄金色の髪が何度も、黒い翼の中から覗く。その度に少年の体は、鞭を打たれたかのように、身を震わせていた。


 あと5メートルというとこまで進んだ。その時だった。地面に有った黒い羅列を少年は踏んでしまった。


 刹那、男が一人、少年に気付く。直後、右手を 横にかざした。


 すると、手から闇の如く黒い何かがそこに現れると、長く、槍のように伸びていった。


 男はその何かを振りかぶると、何のためらいもなしに、少年に向かって放った。


 5メートルもない距離。黒い何かは一直線に少年に向かって突き進んでいった。


 そして。


「えっ……」


 胸へと吸い込まれる様に突き刺さる。


 胸からはドクドクと血が溢れだし、胸を押さえる自分の手を、腹を、滴りおちていった地を。夕日の(くれない)にも引けをとらない赤が倒れていく周りを染め上げて行った。


「―――――!!」


少女が声にならない悲鳴で少年を呼ぶ。 


 しかし、血を溢れさせながら、倒れ行く少年の耳には当然の如くとどくはずもなかった。


 それを最後に、男たちは少女をつれて、その場から消えて行った。消える直前、少女が零した涙を残して。


 その涙が、地面に触れ、僅かに跳ねたんを最後に、少年の鼓動が地に響かなくなった。


 公園からは、花も、無視も、少女も。そして、少年を。


 すべての生命(いのち)を刈り取られていった。


     ☆


 そこは重力、空気、なんの流れも感じない空間。そこに、少年は佇んでいた。


 そんな、何も感じない世界に、一つの声音が響き渡る。


『お前、能力(ちから)は欲しいか』


 言葉が鮮明に耳に届くと、少年は首を縦に一度振った。


「さきちゃんをまもれる……あの子をぼくがたすけてあげられるだけのちからを、ぼくにください!」


 想いを乗せた願いは、世界に響き渡り、やがて彼方(どこか)へ消えていく。


『そうか、ならばやろう。今のこの世界ではお前ともう一人、最強の天使しか、扱うことのできないこの能力(ちから)をな』


 その言葉が耳い届くのと同時に、少年の目の前に小さな焔が現れる。そしてゆっくりと少年を包んでいった。


『お前にそれはやる。しかし、一つ約束しろ。その焔と共にほかの4つの魂を封印するとな』


「え?たましい……?」


『そうだ、お前のその輪廻(レナトゥス)の焔を操り、戦う宿命だ。(ちから)の扱いは、お前がその力に完全に目覚めた時、自然にわかるはずだ。それでも分からない時には、もう一人の焔使いに聞くが良い。だが、今説明してもお前は覚えていないだろうがな。だが、いつの日には思い出せ。我との約束を。-------」


それを最後に、声は、聞こえなくなった。


 少年は、体を包む焔を汲み上げるようにしてもう一度見ると、目を瞑った。


    ☆


 血に包まれている少年の小さな体に、何処からか火が灯り、血を気化させ、傷を治癒(なお)していった。

現在までで、多分謎だと思われる言葉。


・天使

・天力

・輪廻の焔

・強化(いつだかの話を参照

・美波の特権


ぐらいかな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ