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【9話】鮮血

戸惑う瞬。


闘う神流。


謎を召喚する美波。


黒き羽をもつ女。



「み、美波先輩。どこから!?」


「ここからよ。それより今は、下がりなさい。今のあなたは簡単に殺されてしまうわ」


足元を軽く指差しながら話してくる。しかし、状況が呑み込めないが故、自分で聞いたのに、周りを分かろうとする方が先決だった。


「え、え?意味が……。てか、殺されるって、お、俺を狙ってるんですか?


 目の前では神流が短く溜めて拳を振り切っているところだった。それに対し、女は軽くいなしていた。


 そんな、異様な光景を目の前に戸惑いながら質問する。


「そうよ。あなたは天力(てんりょく)を有しているから。それを見て、殺しに来たのよ」


「て、天力?なんですか、それ?」


目の前の光景もだが、今の話もだいぶ意味が分からず問い返してしまう。それに答えるよりも先に、神流の蹴りと、女の蹴りが交錯する。その余波により校舎が崩れてくる。


 それにより落ちてくる瓦礫を、美波が先程見せた白い羅列で次々とはじいているようだった。


「後で、全てを説明するわ。だから今は、逃げなさい」


語気が強まるの感じ、軽く気圧される。しかし、それに後押しされるような形で立ち上がり、走り出した。


 ☆


「! 逃がさない」


 瞬が走り出したのを見て、女が小さく呟く。しかし、追うにも、目の前の物を倒さねばならない。そう判断し、右の拳を構える。


強化(ブースト)。……(あいつ)のとこには、行かせねぇぜ?どうしてもっていうなら、俺を倒し(ころし)てけ」


 強化。これで7度目だった。口にする度、力や速さ(スピード)が増していっていた。女は厄介なやつだ。胸中でそう呟くと詠唱を始めた。


「ッ!させるかよ!」


 唱え始めてすぐに、神流は全力で振りかぶり殴りかかる。そして、触れるかどうか、寸前で女の姿が無くなる。


 (くう)を殴り、軽く舌打ちをし、上を見上げる。すると、そこには、巨大な魔法陣が雲に囲まれた空に描かれていた。


「―――チェック」


 女が小さく結びの言葉(ラストワード)を口にする。刹那、黒い塊が超範囲にわたって放たれた。校舎には穴が開き、地面は抉られる。草木はボロボロにになっていった。


 神流と、美波はそれぞれ魔法陣を展開し、防ぐ。しかし、慌てて逃げ惑う瞬は、なす術もなく、正面から食らってしまった。


「グハァ……」


 血を吐きながら、地面に倒れていく。それを確認するなり、女は軽く口を動かし足元に魔法陣を展開する。そして、その姿を完全に消した。


「チッ……そうだ、瞬は!?」


 神流は舌打ちをし、思い出したように瞬の元へと走っていく。


 近づくにつれ、赤い血が地面に広がっていた。


「これじゃあ、天力まで一緒に流れちまうじゃねぇか……。どうする、美波」


一足遅れて到着した美波、血を出し続ける瞬を見るなり、屈み込む。


「確かに、このままだと……。展開」


 魔法陣を詠唱無しに瞬時に開く特権を所持している美波が傷の治癒を始める。


「今のままだと、自己治療(オートヒール)は無理そうね……」


「じゃあ、どうするってんだ?」


 後ろから見守ることしかできない神流が焦れたように声をかける。


 美波の治療(ヒール)によって、傷はほとんど塞がっていた。しかし、失った血はすぐには生成することはできない。困った様子で治療を続ける美波。だが、打開する方法を見つけたのか、先程とは打って変わって、明るい声で、話し始める。


「そうよ、天力で回復できるのだったら、そうすればいいじゃない」


自分でも、よほどの名案だったのか、笑顔になっている。


 しかし、立って見ている神流は逆に暗い顔のままだった。


「そうすればいいたって、(コイツ)はまだ初心者(ビギナー)なんだぞ?自力で天力の生成なんて難しいんじゃないか?」


「大丈夫よ。私の天力を分けてあげるから」


 笑顔を絶やさぬまま、話し続ける。その代償と言うべきなのか、神流はより一層、顔が暗くなっていた。


「まさか、あの方法じゃあ、ないよな?」

 

 違ってあってくれ。そう願いながら、恐る恐る尋ねる。


「勿論、あの方法よ?というより、そうに決まってるじゃない」


 嬉しそうに話してくる。それは、神流をどん底に落とすのには十分すぎる一言だった。


「だ、よな……」


 効果音が付きそうなぐらい分かりやすく肩を落とす。そして、神流は小さく詠唱し、魔法陣を召喚すると、その姿を消した。


「さぁ、私たちもいきましょう」


 美波から発せられた言葉は風によって消された。


 その代わりに残されたのは、血と、大量に抉られた穴だった。

天力等々は、また何処のお話で説明させていただきたいと思います・・・

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