四人目の悪友……
妹の入学式から何ヵ月過ぎただろうか……。なんて、言ってみたい今は、式から二ヶ月程が過ぎて、夏という暑苦しい季節に近づいていた。いまでは、妹の水樹は帰宅部、その友達の比奈ちゃんも帰宅部、高瀬は水泳部にと、一年生メンバーは色々と変わっている。なのに、二年三年はというと……まったく嫌なことに、なんにも変わっていない毎日を過ごしている。少しくらいは俺から距離をとってもらいたいもんだ。俺からとっても近づいてくるしな………。
「………で」
「……?」
なんで予想できないお前がここにいるのか………。俺は神とやらにもて遊ばれてるのか?
「なんでお前がいるんだ……」
「………」
そう言うと、回りをキョロキョロと見渡し自分か?と顔に指を指す。
「ここにいるのは俺とお前だけだろ!」
「なに言ってんだ。後ろを見てみろ」
もしや、香里がいるんじゃ!?と思い後ろにふりかえる。
「――誰もいないだろう」
「しばくぞクソヤロォ!」
なんてやつだ。それじゃあ、俺達悪友でしか伝わらない、アイコンタクトまでがフェイクだったのか………。
「でだ、久しぶりだなぁオイ」
「無視か……そうだな。お前もそう言うヤツだったな――龍騎」
「元気にしてっか?」
「ああ、俺も春樹も香里も元気だよ。お前は……聞かなくてもいいだろ」
「冷たいやつだな。聞くだけでも聞けよな」
「学校に無断で入ってくるやつにだけには言われたくないもんだな」
俺達の関係は悪友。悪友だった。中学卒業までは一緒にバカしていた仲だ。なんて言っても、こいつはヤクザの息子だからあんまり手出しができない。そのお陰で教師からもあんまり怒られたりしなかった。すごく役立つやつなんだよなこれが。見た目も少し威圧感があるが、ケンカっぱやいとこもないし、それどころか優しすぎて不気味なくらいだ。今は、中卒したこいつとは会うことはなかった。連絡もしてなかったしな。どうせ、ヤクザ関係の仕事の手伝いでもしてるんだろ、なんて思ってたんだが、どうやら暇してるようだな。
「それじゃあ、授業サボって屋上にいるお前には言われたくないな」
「……言ってないだろ」
「そういやそうだな」
二人で笑う。
また一緒に笑えるとは思わなかったな。
「最近どうしてんだ?龍騎」
「そだな…家出中でなんもしてないんだよな。これがよ」
一瞬吹き出しそうになった。は?家出って言ったか?
「いま、どこにいんだよ」
「そこらの公園とか、ネットカフェか……」
「いつから?」
「今年の……今年だ」
んな、さっむい時期から家出……。いや、一番驚かなければいけないのは、この六ヶ月間一人でよく生きていたことだ。
「金はどうしてるんだ」
「十万ちょっと持ってきてたが、さすがに足りないからな。俺の知り合いの所でバイトしてんだ」
「……ハァ。金はなんとかしてるんだな。で、家出の理由はなんだ」
「ただの親子ゲンカさ。どこの家庭にでもある理由だろ?」
「ああ、リアルで見るのは初めてだがな……」
どうせ、しょうもない理由だろうな……。こいつの両親も優しいもんな。ヤクザとは思えない。だから、なにか心配だったからかシツコク注意したとかでもめたんだろ。本当しょうもない理由だ。
「そんでさ、ちょうどここ通ったから来たんだよ。お前らしき人影も屋上に見えてたしな」
「俺じゃなかったらどうするつもりなんだ」
「ん~、そんときはそんときさ」
「……香里たち、呼んだ方がいいか?多分喜ぶと思うが」
「いや、いい。とりあえず、お前に会えただけで嬉しかったし」
「……おいおい、もう行くのかよ」
「俺はお前…もとい三人の誰かに会いに来ただけだからな。そんじゃあいつらによろしくっ!」
立ち上がり、屋上のドアノブを回す龍騎。
「………」
そして、龍騎がドアを開け出ていこうとした…その時、俺は龍騎に声をかけた。
「……なぁ」
「ん?」
「俺の家に来ないか」
「はぁ?」
「一時的じゃないからな。居候として、しばらく泊まらないかっていってんだ」
「………」
「言っとくが、なんも気にするこたぁない。親もお前のこと知ってるし、妹の水樹だって、喜んで歓迎してくれる。下手したら歓迎会になるかもしれないぐらいな」
「……よし、じゃあそうするぜ」
「うし、水樹の子守り役ゲット」
「……ん?」
「んじゃ、夕方の…そうだな六時頃に校門前に来てくれ。一緒に帰ろうぜ」
「なんか、嫌な言葉が聞こえたような気がしたが……ま、いいか、了解」
「そんじゃ、あいつらにも言っとくぞ?今週の休みにでも、お前がバイトがないんなら遊ぼうぜ」
「ああ」
こうして、何故か変なタイミングで学校に侵入してきた悪友の龍騎と話をして、家出という事実を聞かされた。――結果、俺が家に誘い…水樹の相手をゲットした。さてと、龍騎……俺の辛さを少しでもプレゼントしよう。恨みはない、どっちかというと感謝で一杯なんだが……許してくれよな?そうして、今晩、壮大な歓迎パーティーが行われ一日の幕が閉じたのだった。




