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脳内パンク寸前  作者: 朝比奈和咲
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「チャンチャン♪」と彼女は言った。モグラの話を終えたらしい。

「で、どうして謝らないんですか」

 そして間髪を入れずに、私が話したことに話を戻した。

「バラバラになってなかったら、謝っていたんだよ。たぶん」

 私は先ほどまで考えていたことをなんとなく言った。

「そんなこと関係ないですよ。あなたがそこで盗まなかったら、そんなことは起きなかった。そうじゃないですか」

「そんなこと言ったら、あの子が持って来なければ良かったことになるじゃないか」

 痛いところを突かれ、少しムキになって言い返した。すると彼女も言い返してきた。

「違います。そういう考えが人間をゾンビにするんです。脳みそないない人間という意味ですよ、ゾンビは。彼女はみんなに見せたいから持って来た。別に彼女は何も悪くないですよ」

 私は少し言葉を詰まらせた。

「盗むなんてサイテーです」

「だから、少し脅かして返すつもりだったんだよ。そう言ったじゃないか」

「じゃあ、何で返さなかったんですか?」

 また私は言葉が詰まった。

「だから、それは少し壊してしまったから」

「そこで謝れば済んだ話じゃないですか」

 確かにそうだ。けれど私にはそれが怖くて出来なかった。

「だから、謝ろうと思ったんだ。とっさに捨てて隠してしまったけど、後で拾って謝ろうと思っていたんだ。気持ちが落ち着いたら」

「じゃあ、なんで謝らなかったんですか」

「だから、バラバラにしたのは私じゃなかったからだよ」

 そうだ、バラバラにした奴のせいで、私は謝れなかったんだ。

 彼女は言い返してこなかった。少しだけ周りが静かになった。

 私は彼女に言った。

「あんなに酷くバラバラにした奴がいたんだ。あの中に。たぶん間違って踏んづけてしまった人もいるかもしれない。けれど、あんなにバラバラになるまで踏み続ける奴がいたんだ。あれは絶対に事故なんかじゃない。事件だった。

 もしあの時、『僕がやりました。けど、そこまでバラバラにしていません。ごめんなさい』とでも言えるか? 結局は全部、私が悪かったことになるじゃないか」

「そうですね。私もあなたが全てやったと信じてしまいます」

 彼女はそう言い、私はほっとした。

「そうだろ。だとしたらおかしいじゃないか

 どうして全ての罪を被らなきゃいけないんだよ」

 彼女は少し考えているような顔をして黙った。

 私はこの話を彼女にしたことを今になって後悔した。さっきから自分の喋っていることがみっともなく感じてしまって仕方がなかった。ヤモに非がないことは前から分かっていた。夜道を歩いていて殺された人間に対し歩いていたお前が悪いと言っているようなものだ。ヘンテコでいかれている。でも、私はそれを信じてしまった。そして後戻りのできないところまで隠し続けて、忘れることも出来ぬまま今日になって打ち明けた。

 そして彼女には全うなことを言われてムキになって言い返している、ただのガキだ。

 彼女は口を開いた。

「言いたいことは良く分かりますし、分からないところもありますけどね。でも、私はあなたのことをサイテーな人間だと思いますよ。サイテー、サイテー、ズーパーサイテー人です」

 私は何も言い返さなかった。これ以上、言い返しても無駄だと思い、

「うるさい、人間にしか分からないんだよ」

 とぼそっと呟いた。

 彼女は何も言い返さずに、足を止めた。

 私も足を止めた。さすがに言いすぎたと思った。

「もし、あの時。ミニ四駆に一つもキズが付いていなかったら、あなたはすぐにその場で返したんですか?」

 思ってもいないことを言われて、動揺した私は隠さずに言った。

「いや、返していなかったよ。たぶん。そのまま何処かに隠して、それで私が見つけて彼女にありがとうって言われたかったから」

「そうですか」

 そう、彼女に好かれたかったから、ヒーローになりたかっただけだった。下らない自作自演がその時は素晴らしい策に思えてしまった。別にあのミニ四駆が欲しかったんじゃない。ミニ四駆ではなく私と一緒に遊ぶ彼女が好きだった。独り占めしたいとかそういうことじゃなくて、ただ最初に隣にいてほしかった。恋とか愛とか私にはまだ分かっていなかった、ただいつも遊んでいたかっただけだった。一人でいたときよりも彼女といたときの方が楽しかった。だから、ヤモが私と仲の良い友達と付き合い始めたと聞いた時、取り戻したいという気持ちがおきたことにびっくりだった。どうしてもその二人が話している時を目撃すると気になって、話の中に割って入ろうとしたのだけど、最後まで行動に移すことは出来なかった。

「彼女のことが好きだったんですねえ」

 茶化すようにナースは言った。

 どうせ相手はホログラムだと思って私は言った。

「あの子のことが好きだったからね。あの子といて楽しかったから」

「ああ、そうですか」

「何だよ、その馬鹿にしたような言い方は。にやにやしやがって」

「いやあ、両想いって素敵だなあって。私もそんな恋がしてみたい!」

「両想い? 何を勘違いしているんだ」

「ミニ四駆に嫉妬するだなんてすごいことだと思いません?」

「ミニ四駆に嫉妬だ? 馬鹿か、そんなわけないだろう」

「あなたじゃ、ありません。彼女の方ですよ!」

 彼女が叫んだ瞬間、私の周りが真っ暗になった。


 違う、空が暗くなっただけだ。そう気付いたとき、空にはたくさんの星!

 その光景に目を奪われた私は唖然として光景の変化を見ていた。

 足下のアスファルト道路は鏡みたいになって星の光を反射して、どこまでも続く直線の天の川のようになった。言葉を失って私は辺りを何度も見回した。

 近くの草原からキラキラと光る小さい物がふつふつと泡のようにあちこち浮いてきた。ミラーボールのように光を撒き散らして、光と光をぶつけて明るくなったり暗くなったり、七色の光のカーテンができて、それは本当に風に揺られているように揺らめいた。

 その光のカーテンを突き破ってあの蝶が現れて、『◎』の模様のところを強く光り輝かせてあちらこちらに舞った。舞うたびに羽から光る粉を撒き散らして、道路の上もあちこち輝いていく。蝶の数はいつの間にか無数に増えていて、あちこちに光る粉をまいていった。七色に光る線があちこちに出来て、すぐに線は粉になって天の川に降り落ちて、天の川の光が浮いているように見えた。

「イエス! ホーリーナーイト!」

 驚いて私はそっちを見た。両手をいっぱいに高く広げて立っている彼女がいた。

 彼女は私と同じ、天の川の上に立っているように見えた。ナース服も靴もストッキングは蛍光色に光り、

 彼女は私の視線に気が付いたのか、私の方を向いてはにかんだ。

「話を続けましょう!

 淡い思い出に終止符を! 新たな出会いが欲しいでしょう!

 ここから私の独演会! 無駄口叩かず聞いて下さいね!」

「なに言ってんだ」勝手に口から出た言葉だった。

「シャラップ! はいはいはいはい聞きましょう!」

 言いながら彼女は近付いて来て、手を伸ばせば触れられる距離のところで足を止めた。急に自分の顔が熱くなった。無数の星の光によって美しく照らされた彼女は、本当に可愛かった。

 彼女はさらに一歩出た。そして両手を伸ばして私の右手を掴んだ。

 しっかりと私の右手は彼女の両手に掴まれた。そして右手は前に引っ張られて握手するような格好になった。私より少し小さい両手に右手はきつく握手された。温かくて柔らかかった。

「ありがとうございます! まさかこんなところに来られるとは!」

 私は「ああ」とだけ言えた。彼女は笑顔だけで返事をした。

「宇宙です! この世界を作ったところに来られるなんて! ここに来られればもうバグなんて怖くありません! 全てはあなたのおかげです! もう私は大丈夫です! あとはあなたの思い出に決着をつけましょう! やっぱりあなたはかっこいいです! 一度の嘘で多くのことを学べるなんて! パティシエさんから聞いたようなお方、そのままでした! 

 あなたに会えて良かったです。では、私の良く分かる解説をどうぞ!」

「それよりもどうして、ホログラムじゃないのか、君は?」

「そうですね、意識自体が実体の無いモノだと思いませんか?

 もう時間もありません。伝えたいことを全て話させて下さい! では!」

 そう言って彼女は私の右手から両手を離すと、くるくると回りながら後ろに数歩下がっていった。

 私はその彼女に引き寄せられるように前に歩こうとした。

「ストップ! 名探偵のお話は黙って聞くものです!」

 私の足が止まった。手も動かなくなった。

 言おうとしても口が開かなくなった。

 いったい何をしたんだ、私に。

 彼女は話を始めた。


「そのミニ四駆を潰した犯人がその彼女だったら、全てが解決すると思いませんか」

― そんなわけ ―

「あなたと同じことを考えたんですよ。彼女との関係を壊したくなかったんでしょう、あなたは。ミニ四駆一つで守られるなら安いものです。

 まあ、その後は大失敗みたいですけど」

― 馬鹿なことを言うな ―

「あの子もあなたのことが好きだったんですよ」


 あなたがミニ四駆を投げ捨てる時に背後から彼女に見付かってしまったんでしょ。たぶん、何を投げ捨てたのかは彼女には見えなかったかもしれませんが、何かを投げたことは見えたはずですよね。

 好きな子でなくてもそんなことを目にしたら気になるはずです。何を投げたんだろうって。まあ、もしかしたら気にならないかもしれませんが、近くを通ったら探そうという気にはなってしまうでしょ。鬼ごっこの最中だし、そんな機会はいくらでもあったりなかったり。

 それで見付かったのが、自分の壊されたミニ四駆だった。ショックでしたでしょうねえ。

 壊されたミニ四駆を見て、彼女は思いました。「ああ、あなたがやったんだ、と」

 同時に彼女はその思いを否定しました。「そんなはずはない。あなたがそんなことをするはずがない」と。自分の好きな子のいやなところなんて認めたくないですから。

 でも彼女は見てしまった。あなたが何かを投げ捨てる瞬間を。小枝を肌や服に引っかからせてまでも向かって行くあなたの姿も。足を止めて。いくら足が遅くても、追いつきますよ。だって、あなたのことを捕まえたくて彼女は鬼になったんですから。一人狙いってやつです、一人で鬼から逃げているあなたを知って、彼女はあなたと少しでも二人きりになれるかもって思ったんでしょう。足の早い鬼にわざと捕まり、そしてあなたを待ち伏せしていたんです。鬼ごっこなのに。鬼役失格ですね。

 捨てられていたミニ四駆を見て彼女はショックを受け、泣きたくなりました。一つはあなたがそんなことをする人間だとは思わなかったから。でもあなたは確かに何かを投げていた。犯人じゃなければ、あなたは壊れていてもそのミニ四駆を投げ捨てずに彼女のもとへ持って行くでしょう。彼女はそんなあなたを知っていた。だから、あなたが犯人なのではと直感で思ってしまった。

 けれど、そう思いたくもなかった。でも他の誰かが命令してやらせた、とかそういう陰謀説までは思い付かなかった。人を疑わない、彼女の素敵な点ですね。

 何かの間違いだったんだと思って彼女はそのミニ四駆をこっそり元の場所に戻しておこうと考えたんですが、壊れたミニ四駆をあとで他の友達にみせることになったらそれこそ厄介なことになってしまう。あなたはそんなこと言わないけれども、彼女に対して猛烈ニアタックしていた方が一人いましたからねえ。

 じゃあ、このままにしておくか。むしろ私が隠してしまおうか。

 素直に考えて、ミニ四駆がなくなったことに誰かが気が付いたら友人全員で探し始めるでしょう。そしたらどうなります? あなたは焦ります、そして絶対に現場に戻ります。穴でも掘って、そこに埋めてしまいたいと思うでしょうし、そこまで壊れてなかったら、第一発見者となって彼女のところに持って行くでしょう。

 ミニ四駆が見付かります。そして次に行われるのは犯人探しです。さてさて、あなたはこの犯行を一人で行っていたのだから、今まで誰にもばれずに済んだわけですが、知っていましたか? あなた以外の友達は、必ず二人以上で行動していたということ。足の遅い彼女は鬼でしたから、とりあえず恋心を隠すためにもなんとなく他の友人も追っていたふりをしていたんです。友達たちは他の友人のいる場所を常に確認しながら遊んでいたので、いついつどこに誰かがいたというアリバイが勝手に出来上がっていたんです。そして、公園にはあなたたち以外誰もいないということは、全員で証明できました。

 まず疑われるのは当然あなたです。あなたは必死に否定するでしょうが、彼女はそんな姿すら見たくはなかったんです。ほぼ犯人のあなたが出来る事は必死に否定して泣きべそをかくか、泣いて彼女に謝るか。どっちみちあなたは問い詰められて最後に泣く。そんな姿を見たくなかったんですよ、たぶん。というより、あなたが犯人だと彼女は知っていたから、むしろ皆の前で自白して「ごめんなさい」とも言われたくなかったんですよ。だって、惨めじゃないですか、お互いに。

 物を壊したなら許されますけど、物を盗んだとなると周りにいる友人たちの目の色もだいぶ変わってしまいますからね。その結果壊して捨てただなんてサイテーです。ガキ大将でもない限り嫌われちゃいますよ、ぜったいに。お互いにそうなることを知っていたから、口に出せなかったのでしょうか。

 彼女もその時少し後悔していたそうです。ミニ四駆なんか持って来なければ良かったなあって。来週にも家の事情で引っ越しをしてしまう。二度と会えなくなる。しかも家の事情で引っ越す当日まで内緒にしていなければならない。誰にもお別れを言えずに去る。いつかは忘れられる。好きだったあなたに忘れられることが本当に嫌だった彼女は、いつかあなたに会いに行くまで忘れられないようにという願いを込めてあなたの大好きだったミニ四駆をあげることにしたんです。すんごくロマンチック。私もこんな恋をしてみたい!

 でも、こんな結果になってしまった。大ショックでした。

 自分の持ってきたミニ四駆が原因であなたを苦しめることになる。しかも被害者の彼女は来週にはいなくなって、取り残されるのはあなた一人。

 どう考えてもミニ四駆を投げ捨てたのはあなただと推理した彼女は、そのミニ四駆をあなたにあげることを諦め、まあもう壊れているので無理ですが、あなたのことも結局はそういう人だったんだと思いこむことにしました。そうして彼女はあなたと縁を切るということにして終わりにしようと。

 落ち込みながら彼女はミニ四駆を見つめてそんなことを考えていました。

 ミニ四駆を見ているとあなたとの思い出が蘇ってきたそうです。あなただけだったそうですね。彼女の訳の分からないSFの話を聞いて共に楽しんでくれていたのは。男の子は未来についての話よりテレビゲームの攻略情報に夢中になり、女の子は可愛い洋服にキッズブランドの話ばっかり。話が合わなくて孤立してしまいそうだった彼女の隣で、SFの話を意味が分からなくても必死に理解しようとしているあなたが大好きだったそうです。

 そして共通の話題としてミニ四駆が出来たとき、二人の話は一番盛り上がった。

 楽しかった。本当に楽しかった。もう現実では無理だと知ってしまったけど、多くの夢を語る事が出来た。いつか人間が小さくなってミニ四駆に乗るだとか、空も飛べるミニ四駆にどこまでも水中走行が出来るミニ四駆。光の速度を超えれば過去や未来に行けるかもという話を信じて、最速のミニ四駆を創ろうとして失敗した思い出とか。

 思いだすと、あなたのことが憎めなくなって、むしろミニ四駆の方が憎らしく見えてきたそうです。私じゃなくてミニ四駆の方が好きだったんじゃないかと思い付いて、カッとなった彼女は足でぐしゃって壊されたミニ四駆を潰したそうです。

 衝動的にやったことでしたが、彼女にとってある名案が閃いたそうです。

 ああ、もう時間がない。すみません。少し早口に話しますね。

 ぐしゃぐしゃにしたという新たな犯人を作った方が、良いと信じてしまったのです。ここまでミニ四駆をぐしゃぐしゃにするような友達はいない、というよりいてほしくない、と友達たちに思い込ませるようにしたんです。そうして犯人探しをしないようにする。むしろ複数犯の犯行にみせかけても良い。いずれにせよ、あなた一人に責任を負わせないようにしようと思い、これが最善の方法だと決めつけた。

 それは見事に成功しました。犯人探しなんて誰も言わなかった。外部の犯行だとみんな思いました。この中に犯人がいるとなんとなく分かっている人も何も言えなくなった。

 けれど、そこでアクシデントが発生。それがあなたの行動です。

 あなたは、一目散に彼女のところまで走って来て、必死に彼女のことを思って声をかけた。

 彼女、それでものすごく傷ついた。

 彼女はあなたが犯人じゃない、とそこで思い込んでしまったんです。あなたの優しさに触れて。彼女は思っていたんです。犯人であるあなたは、たぶん私のところには来ないで、悲しそうな雰囲気で黙って見ているだろうって。それが彼女の知っているあなただった。それで、こういう奴だったんだとか悪い方向にイメージをつけたりして、ケジメでも何でもつけてやる、って、思っていたのに。

 だから、彼女、すごく自分のことが情けなく感じちゃって、それでさらに泣いちゃったんです。小学生のくせして、ずいぶんと考える人ですよね。

 あとはあなたの知っている通りです。

 その、あなたもあの方が素直じゃないのは知っているでしょう。でも、私にここまで記憶させているんです。私は話をしただけです。どうか、昔の思い出だなんて言わないで、その、あの方、あなたに見せたい物がいっぱいあるとか言ってましたし。これは私の意見です。

 最後に、何故私がこんなことを話しているのか、私にも分かりませんが、プログラマーからの伝言で、パティシエの方ですよ。それで、「これからもごめんね」だそうです。

 やっぱり、私はあなたのことが嫌いじゃないです。というのはどっちの意見でしょう?

 もうここまでヒントを与えれば十分でしょう。長い長い伝言を終わります。

 ついでに、手術も終わります。お疲れさまでした!


 急に前の方から風が吹いて、小さな光の粒がその風に流されて、私の方へ風に乗って向かってきた。迫りくる大量の光に私は目が眩んだが、体は動かず目はしっかりと機能していたため周りはかすかに見え、光の粒は私に当たると跳ね返ってそれ以外は全て後ろに流れて行った。

 風は吹き続けて彼女のことは見えなくなった。私はSF映画のワープするシーンを見た。いや嘘だ、そんなちんけな物ではない。今までの人生が全て良かったように思えるぐらい綺麗で幻想的な光景だった。私に当たって跳ね返った光の粒は、すぐに別の光の粒に当たってそこで小さな爆発を起こした。目の前でいくつもの爆発が見えた。流星群の中にいるような気がした。体が浮いている気がした。地面に立っていた感覚などもうない。ここは星空だ。せめて、手が動けばどれでもいいから触れてみたい。触れて、つかまえて、手に入れたい。一瞬だけ顔だけが動かせて下を向くと、私は蛍光色に光っていて、笑った。

 私は次第に瞼が重くなってきて、するといっきに体から力が抜けて足を支えられなくなり風にあおられて直立のまま後ろに倒れていき、雄大な星空が見えて飛んでるような感じがして。



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