あなたのカゼはどこから?
季節の変わり目、とくに夏から秋、そして冬になるとカゼを引きやすくなりますね。
その森では花梨の木が黄色い実をつけていおり、甘い香りが漂っている。
木の下に小さなタヌキくんと、頭に王冠のようなものを乗せた白いおサルさんがいる。
二人の間にあるお茶を飲みながら、どちらも魔法の鏡を持って別の世界の『天気予報』を見ていた。
「白猿さん。んとね。最近は寒い日も増えてきたの。少し前まで夏だったように思うの」
「そうだな。子狸くん。いつの間にか朝晩は冷え込むようになってきた。急な気温の変化で体調を崩したりアレルギーになる人もいるから注意がいるな」
「冬になると、どうして寒くなるのかな」
「大きな理由は、太陽の光が地面に当たる角度が変わることだ。太陽の光には、地面を暖めるエネルギーがある。太陽の光が地面に垂直に近い角度で当たると、狭い範囲にエネルギーが集中する。反対に、斜めから当たると、同じ量の光でも広い範囲に分散してしまうんだ」
「同じ太陽の光でも、当たる角度によって暖まり方が違うのかな」
「部屋を暗くして、懐中電灯を壁に向けてみるとわかりやすいぞ。壁に正面から光を当てると、光が当たる範囲は小さくなる。斜めから当てると、光が横に広がるだろう。太陽の光も、それと似たようなことが起きているんだ。同じエネルギーが広がって当たると、それぞれの地点の光は弱くなるんだ」
「なるほど。地球でいうと、赤道のあたりは太陽の光が強く当たるので暑くなって、北極や南極に近づくほど寒くなるんだね」
「そうだ。ただし、気温は太陽の光が当たる角度だけで決まるわけではない。海や陸地の違い、風の流れなども関係している。それでも、太陽の光が当たる角度は、地球の季節を考えるうえで大切なポイントだ」
「その説明だと、夏と冬では太陽の光が当たる角度が変わっているのかな」
「地球は、コマのように自転しながら太陽の周りを回っている。で、地球が自転する回転軸は傾いているんだ」
「地球が傾いたまま、太陽の周りを回っているんだね」
「そうだ。北半球が太陽のほうに傾いている時期は、北半球に太陽の光が当たりやすくなり、昼の時間も長くなる。そのため、地面が暖まりやすくなって夏になる。反対に、北半球が太陽から遠ざかる向きに傾いている時期は、太陽の光が斜めから当たり、昼の時間も短くなる。だから冬になるんだ」
「では、北半球が夏のとき、南半球は冬なるのかな」
「その通り。北半球が太陽のほうに傾いているとき、南半球は太陽から遠ざかる向きに傾いている。だから、日本が夏のころ、オーストラリアでは冬になるんだ。クリスマスの時期にオーストラリアでは夏を迎えるというのも、このためだな」
「んとね。日本ではクリスマスに雪が降ることもあるのに、向こうでは夏なんて不思議なの。でも、冬でも暖かい日と、ものすごく寒い日があるよね。季節が同じなのに、どうして違うのかな」
「太陽の光の当たり方だけでなく、天気や風向きも気温に影響するからだぜ。日本の北側には、北極圏などから冷たい空気がやってくることがある。一方、南側には比較的暖かい空気がある。冷たい空気が日本に流れ込めば寒くなるし、暖かい空気が流れ込めば、冬でも気温が上がることがあるんだ」
「んとね、天気予報で『今日は北風が強く、厳しい寒さになるでしょう』と言っていることもあるの」
「よく気がついたな。風は、空気を別の場所へ運んでくる。たとえば、北から冷たい空気が流れてくれば気温が下がるし、南から暖かい空気が流れてくれば気温が上がりやすい。風が強いと、体から熱が奪われやすくなるので、実際の気温以上に寒く感じることもあるぜ」
「んとね。冬は北風が吹くイメージなの。どうして北風が吹くのかな」
「日本の周りの気圧の配置が関係している。日本の西側にはユーラシア大陸が広がり、東側には太平洋という広い海がある。冬になると、大陸は冷えやすいため、冷たく重い空気が集まって高気圧が発達しやすくなる。一方、北西太平洋では低気圧が発達することがある。このような配置を『西高東低』、または『冬型の気圧配置』と呼ぶんだ」
「西が高気圧で、東が低気圧だから『西高東低』なんだね」
「そうだ。高気圧の周りの空気は時計回り、低気圧の周りでは半時計回りの風が吹きやすくなる。冬型の気圧配置になると、日本付近では北風が吹きやすくなるんだ」
「高気圧と低気圧の間で北風になるんだね」
「その通り。風は高気圧から低気圧の方に流れるから、まっすぐ北から南に吹くのではなく、北西から南東方向に斜めに風が吹く。このため、シベリアなどの大陸の内陸部で冷やされた空気が、日本へ向かって流れてくる。これが日本の冬を寒くする大きな理由の一つなんだ」
「うわあ、ただでさえ冬は寒いのに、冷たい空気まで運ばれてくるの」
「いちおう補足しておくが、日本海側と太平洋側では、冬の天気に違いが出やすい。大陸から吹いてきた冷たい風は、日本海の上を通るときに水蒸気を取り込み、雲をつくる。その雲が日本列島の山々にぶつかると、雪を降らせるんだ」
「冬は新潟県や東北地方などの日本海側では、雪がたくさん降るイメージなの」
「その一方で、山を越えた風は水分が少なくなるので、太平洋側では晴れた日が多くなる。これをフェーン現象っていうんだ。地域や天気によって違いはあるが、冬に日本海側で雪が降り、太平洋側では晴れることが多いのは、こうした仕組みが関係しているんだ」
「同じ日本でも、住んでいる場所によって冬の様子が違うんだね。んとね。ある書籍で、イギリスは日本より北にあるのに、冬でもそれほど寒くならない日もあるって書いてたの」
「イギリスは日本の北海道よりも北に位置する地域があるが、冬でも比較的温暖なことが多い。これは、大西洋から流れ込む暖かく湿った空気や、北大西洋を流れる暖流などの影響が大きいんだ」
「北にあるのに、海の影響で暖かくなるんだね」
「そうだ。日本は大陸の東側にあるが、ヨーロッパの多くの地域は大西洋の東側にある。冬型の気圧配置が日本とは逆になって南風も吹きやすくなる。それにヨーロッパでは、西から吹く偏西風が大西洋上の比較的暖かい空気を運んでくる。そのため、緯度が高くても冬の寒さが和らぐことがあるんだ」
「んとね。冬に暖かい風が吹いてくるなんて、うらやましいの。日本にも、そんな風が吹いてくればいいのに」
「日本にも暖かい空気が流れ込む日はあるぞ。地球温暖化の影響で、世界の平均気温は長い目で見ると上昇している。日本でも、長期的には平均気温が上がっているんだ。ただし、温暖化が進んでいても、冬に強い寒気が流れ込むことはある。これから先、寒い日がなくなるというわけではないぜ」




