第4話 変人教師登場の段
しばらく時間が経ち、教室中にクラスメイトが集まって来た。合計30人くらいか。5クラスあるらしいから一学年約150人か。それなりの人数だがとりあえず同じクラスのメンバーで仲良くなるべきだろう。
廊下側の窓を見るといくつかの人影が通り過ぎていく。多分他クラスの先生なんだろう。ウチにも先生がいるはずだがいったいどんな先生なのだろうか。流石に先生くらいはまともな人であって欲しい。
「舞香さん。俺らの先生って誰なんだろうね」
とりあえず適当なことで舞香との会話を繋げよう。
「出席表に書いてあったよ。歳を取ってる体育の先生みたい」
「そっか~。美人な先生が良かったなぁ」
俺がそう呟いた瞬間。愚太郎が指を指して叫ぶ。
「あ!来たよ!」
それに反応して俺が振り返ると……
「フォフォフォワシに気づかぬとは愚か者めが新入生」
シュッ。耳元で風を切るような音がして青ざめる。
「え?どういうことだよ愚太郎」
俺が困惑して机を見てみると、そこにあったのは銀色のクナイ。それが机に堂々と刺さっていたのである。
「え?」
俺の困惑をよそに一同は冷静だ。離れたところに座っていたポニーテールで眼鏡をかけた上を見上げた女子が、無言で手を上に振り上げるとグサッと天井から音がした。
しかし彼女は「チッ逃しました」と言うだけだ。よく見ると天井にナイフが刺さっていた。
「フォフォフォ未熟者めが。後数センチ差で仕留められたのにのう」
老人らしき声が続いた後ですぐに琴音が椅子の上に飛び乗ってそのまま飛び上がって天井を叩く。
「ねぇ知ってる?蚊って天井をぶっ叩くと居なくなるんだよ」
アンタの場合は蚊の文明ごと滅亡しそうだけどな!
そうした俺のツッコミを無視して老人の声は続く。
「フォッ荒業とは御見それした。ではそろそろ現れるか。百賀流現代忍法出現の術!」
ストンと教卓の前に老人が現れる。立派にひげを蓄えていて相当なベテランだと思われるが……何より不思議なのはその装束である。真っ黒になっている上に口には巻物を咥えているその姿は。
「忍者?」
「左様。拙者こそお主らのクラスの担任。百賀甲三郎で候」
一つだけ言おう。この人はマトモではない……マトモなら初見で生徒にクナイを投げては来ないだろう。
「何だこの人」
俺がつぶやいた言葉は既に拾われていたようで。
「何だこの人とな。そこの新入生」
「えっ?何で聞こえるんです」
「何で聞こえるんですとな。拙者の収音の術によればこの学園内の小さな音でさえ聞き漏らさない。逆に煩すぎていつもイヤホンをしておるのだがな」
何か意味ない術だなぁ……てかこの人が俺らの担任なのかよ!
「隼人くん。甲三郎先生はね百賀流忍法の上忍なんだよ」
舞香が優しい声で説明してくれる。それだけでありがたいはずだが俺にはなぜ忍者がいるのかと言うことで頭がいっぱいだった。
「とりあえず短いが続きの説明だけをさせてもらおうか。拙者は百賀の家の上忍にして、この激王学園の体育教師。忍者部の顧問も務めておる」
忍者部って何なんだよと言うことはいちいち触れていたら日が暮れそうなので後に回すこととするが、忍者の甲三郎先生は黒板に縦書きで自分の名前を書いていく。文字は綺麗では無いけど普通に読める字だ。こういうところは普通の先生なんだなと思った。
「とりあえずこれから入学式なのでな。制服や髪形と言った身だしなみを整えた上で講堂に集まるように」
そうだよまだ入学式じゃないんだよ。何で入学式の前なのにここまでツッコミが追い付かないかねぇ……
感傷に非たる間もなく、先生は次のようなことも言った。
「そう言えば出る時間が遅れてしまったようだ。時間短縮のため校内の絡繰りで講堂までショートカットするように」
は?
俺の困惑を全て無視して「ドロン!」と煙を出して消えてしまった。
困惑している隙に既に廊下に近い生徒たちは出て行っているようだ。
てか絡繰りってどうやって突破するんだよ。俺はこの校舎に絡繰りがあるなんて知らないぞ?俺の混乱を察してか舞香が立ってくれる。
「隼人くん。一緒に行こうか?」
「え?良いの」
「うん元々この学園にはずっと長くいるから。そもそもこの学園って忍者養成機関でもあるからあちこちに絡繰りや罠が仕掛けてあるんだ」
あのお伺いしたいんですが罠が仕掛けてある学校って何なんです?




