第2話 新しいクラス
俺と舞香は高校の昇降口まで隣同士で歩いていた。内部進学組の舞香には既に知り合いが多かったらしく、友人たちに話しかけられてはいちいち優しく応対していた。一方の俺には話しかけてくる知り合いがいない。その格差を感じながら俺は早歩きで舞香から離れ、そのまま昇降口の外の壁に張り出されたクラス表に目を通す。俺のクラス分けは2組らしかった。
後ろでは「ヤッター!同じクラスだよ!」などと互いに喜んでいる声が聞こえる。
友達かぁ。俺には関係のない話だ。この私立激王学園は小中学校からある私立学園である。高校から入学する生徒もいるにはいるがもうその時には既に身内で固まったグループが形成されていることも多い。
しかも俺はこの街に高校から引っ越してきた。一層学園に最初から知り合いがいる訳がない。外様だからこそ今の第一印象で作り上げる新しい人間関係が大切なのである。
その為にはまともな人とともに普通の学校生活を送ることが必要だ。
教室の扉に手をかけてそっと横に引いて開ける。人はまだまばらだった。一番乗りで席について本を読んでいるマジメ君もいればそうでなく徒に戯れている人々もいる。俺は前者であるべきだろう。
俺は扉を開けて中に入った瞬間、俺は巨大な影に覆われる。
「お前見ない顔だな。新顔か」
俺は声のした方を振り返るが、そこにはベルトがあっただけで顔が無い。どこにいるんだと思って困惑していると「上だよ上」と遥か上から声が聞こえてくる。俺が恐る恐る見上げてみればそこには大分大柄でゴリラみたいな顔をした男がいた。いや大柄と言うのに適していないかもしれない。だって俺と比べてあまりにもデカすぎだもん。コイツ身長3mくらいあるだろバトル漫画の世界かよ!
でも一応挨拶をしないとな。
「は、初めまして実写版のキングコングさんですか?」
「んなわけあるか。俺はこの学校の1年。名前は王昂虞って言う」
名前そのままキングコングじゃねぇか!
「あとキングコングはもともと実写だろ」
知るかそもそもあれ特撮だろ。こんな数メートルもある奴はリアルキングコングだよ!
と言おうと思ったが止めた。コイツの機嫌を損ねたら俺は窓ガラスから違う校舎に突っ込むのは自明だったからだ。
でこのゴリラは俺の同級生だと?いやよく見れば大分サイズが違うがウチの制服は着ているし校章も着けている。信じられないが俺と同じ立場なのは確かなようだ。
「俺は隼人って言います。よろしくお願いします」
「あぁよろしく」
昂虞は俺に手を差しだしてきた。当たり前のように手がデカく俺の手はスッと包み込まれた。二人で固い握手を交わした。つくづく手を握り潰されなくて良かったと思う。
俺が昂虞と握手をしていると後ろから背中をつつかれる。
ヒィっと超高音の叫び声をあげながら振り返ると背が低い男子が居た。遊ばせている茶髪にくりくりっとした可愛らしい目に悪戯っぽい笑みを浮かべているどことなく子供っぽい雰囲気を持った生徒だ。
「何か用か?」
「ねぇねぇ。君チ○コデカい?」
Pardon?
それが俺の最初の返答。いや誰でもこうなるだろ出会って最初の質問がそれ?もっと他に聞くことあるだろってここ男子校じゃねーし!
「さぁ。俺比べたこと無いから知らないよ」
「え?じゃあここで比べっこしよ」
とベルトを緩めかけたので「誰が比べるかァァァ!」と思わずコイツを一本背負いで投げ飛ばした。
下ネタ男は10mくらい飛んでから華麗に着地すると俺を振り返って。
「記録10m!新記録だよ新記録!」
と相変わらず喜んでいる。返答に困って辛うじて知っている昂虞の方を見てみると対して反応していない。
「いや反応しろよ!」
「ん?あいや春の季語だなぁと」
なんで季語なんだよ。もしかしてあのイベント定期的に起こってるの?
「僕の名前は安保愚太郎!可愛くてイケイケな男子だよ!」
あコイツ多分絶対バカだ……関わり合いになるのは止めておこう。俺はそう思って振り返った。すると昂虞が声を出す。
「あ、でも少なくとも俺の方がお前のより確実にデカいぞ」
そりゃそうだろ。こんな図体デカいんだから!
俺は突っ込んだ。何だこのバカ男子は皆中学生か!いやちょっと前まで中学生だったわ!




