第14話 4時間目 数学
「はいお帰り」
……あ、やっとまともそうな先生だった。
「……数学の積分寺です。サッカー部の顧問です」
無口だ。
「……教科書、42ページを開いて。これ新しい教科書だから何が載ってるか分かりにくいんだよね」
パラッと開く。隣を見ると普通に授業が進む。
「……ここ、試験に出るから」
最低限の事しか話さず、感情もほとんど見せない。
「それでこの問いの別解は……ん?これは」
積分寺先生は急に静かになった。細かった目が開かれる。
「……見える。見えるぞ!」
「何が!?」
ここが本番。
突然チョークを高速で走らせる。
カカカカカカカカッ!!
黒板が一瞬で埋まる。途中で変なBGMが流れている。
x2+2x+1=(x+1)2
と言う当たり前の数式から始まったは良いが、いつの間にか話が微積や複素数平面まで飛んでいる。
「実に面白い。これでラマヌジャンに勝てるぞぉぉぉぉ!!」
「何もんだよ!!落差が激しすぎる!!ガリレオか!」
俺はついツッコんでしまった。
「この式は美しいのです。皆さんもこの美しさを享受しましょう。まぁちょっとこの辺りとか大学の範囲あるんですけどね」
「センセーどのくらいですか?」
「50%より上ですかね」
それ過半数高校数学じゃねぇじゃん!
「えーっとその範囲は……あれ?ここの式汚いな。こう修正できるか」
そのままカッカッカと式を描いていく。
そうだったこの学園の教師がまともな訳がなかったのだ。
琴音に目線を送るとコソコソ答えてくれた。
「この人大丈夫か?」
「まぁサッカー部の顧問だけどその理由がサッカーコート上に大量に数式を書きなぐるのが真の目的だったらしいし」
何だそりゃぁ!やっぱ変人だったじゃないか。
前を向くとそこには教室一面、数式。
明らかに黒板の面積の限界超えてるだろ!
「じゃあ解説していきますか」
先生はそのまま少しずつ解説していった。
「……ここを移項します。移項については分かりますか」
「はい分かりません!」
愚太郎はバカだったので放っておこう。
「とりあえず阿房君は補習ですね」
それが良い提案だと思います!
「それでこの問いの式は凄く綺麗になるんですよ。裏技なんですけどね」
この人は数学愛は本物なんだろう。式一つ一つが細かいがどこが難しいのかをよく熟知している。そのせいで書かれている式ほどは難しい説明はしてこなかった。
正直なことを言うと大分分かりやすかった。
舞香が静かに「……分かりやすい」と評価していた。
静かで分かりやすい先生だった。ただ熱が入るとヤバくなる先生だった。チャイムが鳴る少し前の時点では既にチョークの音がこだましていた。
「そしてここをこう解くことができると。これが美しい!!これが宇宙の真理だァァ!!」
そう叫んでからスッと落ち着いた。
「と言う訳で今日はここまで言っておきますが、証明問題はもっとうるさくなりますよ」
えぇ……証明はもっとうるさいの?
俺は流石に呆れたが、内容だけは分かりやすかったので授業を受け続けようと思ったのだった。




