第12話 3時間目 体育(後編)
「それではまずはハンドボール投げからじゃな。そこに並ぶのじゃ」
甲三郎先生はそう言って地上に引いてある白線に案内する。ずいぶんきれいに引いてあるなと思った。いつの間にか陰で引いていたんだろうか。
校庭に目をやると何かがせっせと白線を引いていた。四輪の小さな車のようだが、せっせとその下から白い粉を落としている。確か小学校にもあったがあれは手押しで動かすものだった。もしかしてこれは自動で引いてくれる機械なのか?
「用務員ロボットのYOMマーク2じゃよ。これからあちこちで働いておるから高校入学者は覚えておくように」
ロボットいるのかよ!平安貴族だとか忍者だとかやけに古いと思ったけど近未来的な設備も付いているんだな。
「まずは私吾愛です。とっとと投げますね」
てか吾愛は男子だったのかよ!髪長いから女子だと思ったんだけど?
吾愛は挨拶を言い終わる前にハンドボールを投げた。
「えいやぁ!」
てか俺らまだ並んでないんだけど!勝手に投げないでくれェ!
俺らの悲鳴空しくボールは既に向こうに跳んでいく。
飛んでいったボールは30mを越したあたりで、YOMマーク2の目の前に落ちた。
「32mデス」
「はい次」
YOMマーク2は普通にアームから伸びたグローブでひょいと拾って投げ返しているのが見えた。
めちゃくちゃ器用だなこのロボット!本当にただの用務ロボットなのかよ。
「凄く器用ですねこのロボット」
「何か大学教授が作った物らしい。拙者は良く知らんが庭木の選定とかいろいろできるようであるぞ」
それあんら教師もしてくれないかなぁ。免許の関係で無理そうなのは変わってるけど。
俺がそんなことをしていると愚太郎も投げ終わったらしい。
「元気が無いからあんまうまく行かなかったなぁ。40しか飛ばなかった」
「十分飛んでるわい!40mなんて」
「いや単位はmじゃないよ」
「え?cmか?そりゃあんまりだな」
「いや40ヤードだよ」
「ゴルフかよ!てかお前ヤードで計算できる知能あったんかい」
「失礼だな。1.6㎞だろ?」
「はぁ?それはマイルだろ。ヤードは91㎝だ!」
「あ、そっちかぁ!」
感心したようにポンと手を叩いているが、ヤード単位ではかるのをやめてくれ。
俺がそんなことを言っていると俺の番が来た。
「さて投げるぞ」
俺は円の中からハンドボールを投げた。結果は25mだった。
「普通だね!」
「普通だな」
「普通言うな!俺はモブで平均的なんだぞ!」
俺はそう主張するが、次の50m走も俺の結果は普通だった。愚太郎も1位では無かった。なぜなら……
「吾愛行きます!」
そう言って吾愛は走って行った。その速度は5秒台……
「いやはやっ!お前運動部なんか?」
「いえ効率的に動くのに移動効率を極めた結果です」
「だから足だけは速いのね」
「髪を切らずに長くしているのも、髪を切る回数を減らすためですから」
コイツも変わった奴だなぁ!俺はそんな感想に陥った。
俺の肩に手を置いた。
「俺は足こそ遅いが握力には自信があるぜ」
「だろうな。この図体ならとんでもない怪力なんだよね」
俺は理解した。俺はこの中では平均的なモブなんだと……いやモブで良かったけどさ。




