第1話 入学式。そして出会う
初めての登校は不思議な出会いがあった。
俺の名前は隼人。どこにでもいる普通の高校生である。背は中肉中背かつ、黒髪で短く整えている。肝心の顔は……自分でも平均よりは良い方だとは思う。少なくとも夜に歩いていて女性に理不尽な悲鳴をあげられるようなことは無いはずだ。多分。
珍しくカッコつけて空を見上げる。この通りから見える空と雲のコントラストはいつもより蒼く美しい。空気も今まで吸っていたものと大分違うような気がする。
おっと柄にもなくカッコつけてしまったな。それだけ新しい環境に刺激を受けているということか。しかし急がないといけない。今日は私立高校の入学式である。
そこは一度親とともに道順を確認したきりの場所だが、ちゃんと地図アプリで何回も確認したし余裕を持った時間に出た。流石に5月には慣れるだろう。
俺は路地を歩いていく。親は後から来る予定だ。別に一緒に行っても良いのだが俺が通う高校は激王学園と言い、小学校から大学までそろった巨大な学校でありながら、その入学式を全て同日に行うという中々の暴挙をする学校でもある。当然混みあうため式の時間はずらされており、激王高校は諸々の確認をした大分後になるため親は後から来る手はずになっているのだ。
俺は確認したばかりの道をまっすぐ行く。細い道だが自転車でも十分行けるだろう。そう思ってペダルを漕いでいく。
俺は高校に進学するタイミングでこの街に引っ越した。いわゆる仕事の都合と言う奴だが俺も最初は混乱した。でもよく考えたらこの街は俺の昔住んでいたところよりは大きく便利な街だし、新しい人間関係を一から創り出すということにも興味はあった。外様だからあちら側が受け入れてもらえるかは怪しいのだけれどね。
俺は風を切りながら新しい風景や見慣れない通行人を風景の一部にしていく。と広い道路に合流して信号機の前に立ったところで俺はある女子に目を奪われた。
彼女は白色の髪を長く伸ばして、横断歩道で規則通り信号を待っていた。冷静に結ばれた口、綺麗で透き通った肌、碧色の目。どれをとっても美しいことこの上なかった。あまり見つめていると苦情を言われるかもしれないので他の所に目線を移すとパンフレットで見たウチの女子制服を着ていた。この人は恐らくウチの生徒なのだろう。
しかし美しいからと言って彼女と特に話すような事柄は無い。気持ち悪がられないように少し離れて隣に立った。
身長は俺と同じくらい。この年代の女子では平均より高いだろう。スタイルも良く引き締まっている。白髪ロングが風で揺れ、流れるシャンプーのいい匂いが鼻を刺激する。
俺がそれに反応し、変な声を出さないように耐えたところで結ばれた口が開かれた。
「……新入生?」
「え、あ、はい良く分かりましたね」
「その制服のネクタイの色はウチの世代だから」
「あ、そうなんですね。ウチの世代って事は」
「うん私も同級生だよ」
距離が近い。なんでこんな自然に話しかけてくるんだ……?
彼女はそのまま歩いていくので俺も隣で自転車を押して歩く。
「ねぇ名前は?」
「え、あ、隼人です」
「……隼人くん。良い名前だね。私の名前は舞香だよ」
舞香。そっちも可愛らしい名前だし、きっと親に大切にされている名前だ。
そのまま校門を通り過ぎる。そこには茶色の野良猫が居た。
「あっショコラ。おはよう」
舞香は手を軽く振る。
「ヤァ」
ショコラと名付けられた猫はそう鳴いて答える。猫がいるのかこの学校には。
「ショコラって言うの?」
「うんこの猫は私が小学生の頃からずっと学園に住み着いてるよ。誰かの飼い猫なのかは分からないけど」
互いにそんな古参なのに飼い猫かすら分からないのかよ!
おっといけないつい心の中で突っ込んでしまった。
そうこの頃の俺は彼女の異常性。と言うかこの学園や街自体の異常性には全く気付かないままだったのだ。




