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転生したら国を滅ぼす予定の悪役令嬢でした!?〜青写真どおりの破滅なんてごめんです!〜  作者: ちょこだいふく


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3/6

3.

春の光が、青薔薇の花弁を透かしていた。

 庭園の中央、白いテーブルに並ぶティーセット。

 金縁のカップに注がれた紅茶から、やわらかな香りが立ちのぼる。


 クラリスは小さな手でカップを持ち上げ、練習通りに礼をしてから口をつけた。

 一口、そして微笑む。

 甘さ控えめの香草茶――王家の定番だ。


「おいしいですね、殿下」


「うん。お母さまが好きなんだ。

 でもね、ぼくは……ちょっと苦いと思う」


 リアンが、申し訳なさそうに舌を出した。

 その仕草にクラリスは思わず吹き出しそうになり、慌てて口元を押さえる。


「ふふっ……失礼いたしました」


 リアンは目を丸くし、それから嬉しそうに微笑んだ。

「クラリス様、笑うと……なんか、やさしい顔なんだね」


 クラリスは少し驚いて、胸の奥が温かくなるのを感じた。

 誰かにそう言われるのは、いつぶりだろう。


「そうかしら? ありがとう、殿下」


 風が通り抜け、青薔薇の香りがふたりの間を包む。

 リアンは紅茶をひとくち飲んで、少しだけ首をかしげた。


「ねぇ、クラリス様。

 こういうお茶会って……退屈じゃない?」


 唐突な質問に、クラリスは瞬きをした。

「え?」


「だって、ぜんぶ決まってるでしょ?

 話すことも、お菓子も、笑うタイミングまで。

 本当は、もっと自由にお話ししたいのに」


 その言葉に、澄の記憶が胸を刺した。

 ――会社の会議室。空気を読む発言。決まっている結論。

 “自由”とはほど遠い日々。


(……同じだ。

 この世界でも、形式が人の心を縛ってる)


 クラリスはゆっくりと微笑んだ。

「ええ、退屈かもしれませんね。

 けれど、退屈な場でも――誰かが笑顔になれたら、それだけで少し違うと思いませんか?」


 リアンは考えるように紅茶を見つめ、それから笑った。

「じゃあ、ぼくがクラリス様を笑わせてみせる!」


「ふふ……それは光栄ですわ」


 その無邪気な宣言に、クラリスの笑みが自然と深くなる。

 青薔薇の花びらが風に舞い、陽光を受けて輝いた。


(未来は確定じゃない――)


 女神の声が、遠くで微かに響いた気がした。

 澄としての記憶も、クラリスとしての感情も、今はただひとつに溶けていく。


 初めて心から笑ったお茶会。

 それが、この国の運命を静かに変えていく第一歩になることを、

 この時のクラリスはまだ知らなかった。


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