第6話 喪失感
無限に続く砂漠を、ホバーバイクは轟音を立てて疾走する。後部座席に座るミューズの細い腕が、ユタカの背に回されていた。二人を包むのは、ホバーバイクの排気音と、重苦しい沈黙だけだった。
YUTAKAの脳裏には、ガスの最後の言葉が繰り返し響いていた。「飽きたんじゃ」あの言葉が、彼との最期になるとは思いたくなかった。
唯一の理解者であり、血は繋がっていなくとも、彼にとって唯一の肉親だった。その喪失感は計り知れず、胸の奥が締め付けられるようだった。ホバーバイクが巻き上げる砂塵が、彼の目に熱いものを呼び起こす。
隣にいるミューズもまた、似たような感情に苛まれているようだった。
彼女にとっても、ガスとYUTAKAの元での一ヶ月は、逃亡生活の中で初めて得た安息だった。温かい食事、他愛ない会話、そして差し伸べられた温かい手。それら全てが、彼女の冷え切ったアンドロイドの心に、かすかな光を灯してくれたのだ。
その光が、今、再び闇に飲まれようとしている。
夜の砂漠は、どこまでも冷たく、そしてどこまでも広かった。二人の小さな背中を、星々の光だけがぼんやりと照らしていた。