第5話 宇宙船の発射場
翌朝、サイオンの家には重苦しい空気が漂っていた。YUTAKAとミューズは、夜通しガスを説得し続けたが、「行かない」の一点張りだった。
「じいちゃん、なんでだよ!なんで一緒に来てくれないんだよ!」
YUTAKAは語尾を強め、苛立ちを隠せない。ガスは深くため息をつくと、冷たい声で言い放った。
「お前みたいなクソガキと生活するのは飽きたんじゃ。あと、忘れているぞ。大切な本」
ガスがテーブルにそっと置いたのは、YUTAKAが宇宙への夢を抱くきっかけとなった、あのボロボロの『アンドロイドの現在と未来』
YUTAKAは何も言わず、その本をイスの下に置いてあったバックパックに押し込んだ。ガスの言葉は、まるで冷たいナイフのようにYUTAKAの胸に突き刺さったが、彼の表情からは、それ以上の感情を読み取ることはできなかった。
ドンドンドンドン!
突然、家の静寂を破るような激しい音が響き渡った。「おい、早く開けろ。ここにいるのは、わかってんだよ!」野太い声が外から聞こえてくる。
YUTAKAが恐る恐るカーテンを少し開けると、そこには数人のハンターが立っていた。彼らの視線は鋭く、獲物を狙う獣のようだ。
「いいか、ここが私が食い止める。だから、早く行くんだ」
ガスの声は静かだったが、その中に揺るぎない覚悟が宿っていた。ドアが足蹴にされ、今にもこじ開けられそうな状況だ。迷っている時間はない。
「ミューズ、行こう!」
YUTAKAはミューズの手を強く握り、裏口へ向かおうとした。
しかし、ミューズは「駄目、YUTAKA!」と強く抵抗する。ガスを置いていくことに耐えられないのだろう。
「ミューズ、じいちゃんの気持ちを無駄にするのか!」
YUTAKAの言葉に、ミューズの力が一瞬弱まった。
その隙を逃さず、彼女を引っ張って外へ飛び出した。
裏口に回っていた一人のハンターが、二人の姿を見つける。「いたぞ、こっちだ!」
YUTAKAは拾ってきたばかりのホバーバイクにミューズを乗せ、自分も飛び乗ると、一気にフルスロットルで走り出した。
止めようと前に飛び出してきたハンターを轢き飛ばし、土煙を上げながら、宇宙船の発射場がある場所へと向かう。