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顔無き者たち

どうも、作者です。86話です。

前回の続きです。最終回が近いのに、何も話すことがない作者です。

「私は王の命令なれば」


一番最初に答えたのは、レーシュだった。レーシュは忠誠心が高い。多少悩んだみたいだが、王命なら断る理由はないと感じたんだろう。ならレーシュがそう答えるのは必然だった。


「一つ聞いていいかい?」


そう聞いたのはモロゾフだった。王様相手に適当な言葉遣いだ。というより本人的には仕事相手という感じなんだろう。だから相手が王であろうと、こんな感じの態度なんだろうか?


いや、さっきはすぐに跪いていたから人前ではきっちりしているんだろうけど。


「なんだ?」


「それは一度でも入っちまったら抜けることはできないのか?」


確かにそれは気になる。王の(それと同時にギルドの)私兵になるということは、きっと色々と重大な秘密を手に入れることになる。そうなれば簡単に抜けることはできない気がする。


「いや、可能だ。こっちとしても、そっちに秘密をあまり握らせないように注意しよう。何だったら、依頼を受ける受けないも自由でいい」


そこまで、自由でいいのか。


「あくまで、俺やギルドがこの国の範囲内で個人的に動かしたい理由ができたときにお前らに頼む程度のものだと思ってくれ。レーシュみたいに俺の配下である人間は別かもしれんが」


レーシュは当然ですわ。という顔をしている。確かにレーシュなら王からの命令なら大体こなすんだろう。どこまでやるかはわからないけど。


逆にレーシュからしたらギルド側からの依頼に関しては断る権利があるという訳だ。


「はぁ、そういうことなら契約の範囲内なら従いますよ」


モロゾフは、あくまでも契約の範囲内ならという形で承諾した。


「こう、まずいことがあったら殺されるようなこともないですよね?」


冷や汗をかきながら言ったのは、ウロクだった。ウロクはかなり慎重そうだった。何せ一度忠誠を誓った、のかはわからないが、所属していたマフィアに殺されかけたわけだから、慎重にもなるだろう。


「そこは安心しろ。そもそも今作ろうとしているこの組織はお前たちと、俺、そしてそこのギルドマスターとその秘書だけだ」


バンカさんって秘書扱いなんだ。というか、ここにいる人間しか知らない、つまり王国の人間も知らない組織ということか。なんだかすごい話だ。


「何だったら、何かあったときは俺たちが後ろ盾になってやろう」


つまり守ってくれると、それは良いかもしれない。


「なるほど、ま、もとより俺はギルドの犬なんで断る気もなかったんで、俺も入ります」


そうあっけらんかんとウロクは言った。どうやらウロクは断る気はなかったらしい。そもそも、ウロクは元からそんな状態なんだから問題はなかったということか。じゃあなんで聞いたんだろう? まぁ確認ぐらいはしときたいものか。


「ふん、おまけ程度にしか考えていなかったが、気に入った。ただの情報屋ではなさそうだ」


「・・・お褒めに預かり光栄です」


少し髪を搔き、少し驚きながらウロクはそう言った。どうやらウロクは王様に気に入られたらしい。よくわかんないけど。


ふむ、今の話を聞く限り、思ったよりは悪くない提案な気がする。別に悪い提案ではないし。めんどくさそうなら断ればよさそうだ。


「・・・ジョゼ、依頼をこなせばきっちり報酬が入るぞ。それに」


それに?


「お前の場合、自分が動く必要はないだろう?」


・・・そうか、普段はあまりがちな召喚獣の枠を貸し出すだけでお金を稼げると考えれば、確かに。うーんこれは思ったより魅力的だぞ。


「わかりました。入るだけ入ります」


「はっはっは! ああ、それで構わん。何、報酬に関しては何でも言っていいぞ! 応じれる範囲で応じてやる」


やったぁ。う~ん、案外いい働き口を手に入れた!


「イサムも別にいいよね?」


完全に放置していたイサムにその話をする。本人はあんまり話が分かってそうにないのであれだが、私の従者になったからといって、本人の話は聞かなければ。


「うむ! 主がそう決めたのなら、某も従おう!」


「嫌なら言っていいからね?」


「わかった!」


本当にわかっているのかな? まぁいいか。


あと残っているのは、イドハさんだけだった。そもそも、イドハさんは()()()受付嬢だ。なったところで、力にはならないだろう。


「・・・別にここで決めなくてもよい。お前がただの受付嬢であろうが、()()()()であろうが、別に構わん」


「「!!」」


その言い方、なんとなくだが察する。この王様は恐らくだが、イドハさんの素性を察している。よくよく考えてみれば、ギルマスとも組んでいるのだ。先に聞いていてもおかしくはない。


というか、バンカさんもギルマスも平然と聞いているあたり、本当にそうなんだろう。


「俺がきにするのはただ、実績があるかだ。確かに、メインの作戦では動いていなかったかもしれないが、お前が有用であるのはもう証明されている。だから自分が入っても意味がないと思っているのなら、それは間違いだということは指摘しておく」


あ、そうか。イドハさんがあの作戦で動いてたのを知ってるの私だけだ。


「・・・一つ問うてもよいですか?」


イドハさんの空気はいつもと少し違う。ただおどおどした雰囲気がないだけではない。彼女本来の聡明さが出ている瞬間だった。


「許可しよう」


「応じられる範囲とは、どこまでなのでしょう?」


「・・・ちょっとした頼み事でも構わんし、この国を動かすことでも構わんよ。もちろん働き次第だが」


それは、もしかしなくても、()()()()()の彼女にとっては何よりは必要な言葉だったのかもしれない。


「・・・わかりました。わ、私程度がどこまで役立てるかわかりませんが」


ちょっといつも通りに戻った。やっぱり自信はないのだろう。強いし、賢いんだからもっと自信持てばいいのに。


王はその言葉を聞き、大きく口端を吊り上げて機嫌がよさそうに、もしくは思った通りに行ったと言わんばかりにその席を立ちあがる。


「ああ、全員からの許可はとった。何、忠誠は必要ない! だからこそ、俺の提案に乗ってくれて感謝しよう! 貴様らの名は、この時代には残らないかもしれない。だが、どうか互いのために俺に、ギルドに尽くしてくれ! 時代に名を残さないかもしれない者たちよ! お前たちの名は今日より顔無し(ノーフェイス)、よろしく頼む!」


その言葉に、全員が跪いた。忠誠ではなく、同意を示すために。


顔無し(ノーフェイス)、後の時代において、本当にいたかはわからない集団として、しかし確実に帝国の時代に影響を与えたとされる、存在しない組織が、発足した日だった。

読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。

さて、顔無しどもがどんな活躍をするのか、もしくはしたかは私にもわかりませんが、ジョゼの人生がまた少し変わった瞬間でした。とりあえず、ジョゼは本人の知らぬ間に無双してそうです。

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