感謝、提案
どうも、作者です。85話です。
今回は王様登場、どんな話になるでしょうか?
帝都の中心。そこには帝都のどこにいても見えるくらい大きなお城がある。この帝都の象徴にして、この帝国の象徴たる城。私はそこに足を踏み入れている。
バーレさんは私たちを扉の前まで運んだあと、そそくさと帰っていった。これ以上面倒ごとに巻き込まれてたまるかといわんばかりに。
正直、ここに入ることなんてないだろう、と思っていたからかなり緊張している。何せこの国で一番偉い人に会うことになるなんて誰が思っていただろうか。普通思わないじゃん。
「ま、まさか王様に謁見することになるとは」
「流石に俺も予想外だわ」
私以外に事前に聞かされていなかったイドハさんやウロクもかなり緊張している。それはそうだろう、私もそうだが、もとより二人とも、地方のギルド受付嬢(魔人)と、ただの情報屋(元マフィア)だ。私なんてただの薬屋(転生者)だ。王様と会う機会なんて・・・こう見ると、個性あるな。
それに、暗殺者と貴族の令嬢、そして、SSランク冒険者。後半のメンツは普通に強そう。というか普通に強い。前三人がかすみそうだ。
「ジョゼさん、今回の一番の功労者なんですから、堂々としていればよろしいんですのよ」
「いや、普通に王様相手って、私礼儀作法とか知らないよ?」
「大丈夫ですわ、あのお方は寛大ですし」
え~、ほんと~? 私は内心疑心暗鬼になりながら、王のいる間まで向かう。
「主殿よ! いざとなれば某が守る! 安心せい!」
いや、王相手には立ち向かわないよ? いやまぁ安心するけどさ。
そんな風に緊張しながら歩いていたらいつの間にか、大きな扉の前までたどり着く。でかい、今までに見たことないくらいでかい。この街の関門とそう大差なさそうだ。でかすぎない?
いや、ここに始めてきたであろう、ウロクもその大きさに驚いている。イドハさんは、緊張しすぎて門が見えていないかもしれない。
門が開く。そこにいたのは、兵士の列ではなく、大きな玉座に座っている、明らかに威圧感のある人と、見慣れた二人だった。
「あれ、ギルマスさんと、バンカさん?」
「おう、ジョゼ一か月ぶりくらいだな」
まさかの二人で驚く。何故かバンカさん、いつも通りですね。というより、顔に手を当てながら首を横に振る。どこか喜んでくれる気もするけど。どうしたんだ?
「はははは! まさかこの王を差し置いて、この二人に話しかけるか、薬屋」
た、確かに。王様がいるのにそれはおかしいか。と、良く周りを見てみると私とイサム以外の四人が跪いてた。まずい、そう言う流れか、私もあわてて跪いたら、イサムも私に続いて跪く。
「なるほど、本当にSSランク冒険者を従者としたか」
いや、従者とかそんな関係では、いやそういう関係か。
「さて、跪いてもらったところすまないが、面を上げるがいい、貴様らの半分は臣下でもないのだからな」
そうなのか。
「何、どうせここにいるのは、俺とこの二人、そして貴様らしかおらん。無礼は許す。何より、今回は俺が礼を言わねばんらん立場だ」
この王様急に真面目モードになるな~、なんとなくギルマスに似ている気がする。というより、この人なんだろう? 表情の感じが、他と違うような、『鑑定』は勝手に書けるのはまずいか。本当に、感覚的には、レーシュやウロクというより、
「イドハさんみたい」
「ひぇ、わ、私がどうかしましたか?」
あ、やばい。声に出ちゃった。その瞬間、王様の目が少し変わった気がする。私を見る目が本当に少し変わった。なんだか、他の人より考えてることが分かんないや。
「ご、ごめん、何となく読んじゃった」
「そ、しょうですか」
あ、噛んでる。
「ふ、まあ良い。さて、先ほども述べた通り、其方らには感謝せねばな。改めて、名を言わせてもらおう。ウミノジョゼ、レーシュ・フニール、イサム、イドハ、ウロク。其方ら六人にこの帝国の代表として、謝辞を述べさせてもらう。この国を救ってくれてありがとう」
そう言って、王様は少しだけ頭を下げる。私以外の皆は、表情は色々だったけど、みんな驚いていた。あの王が頭を下げるとは、と。
「ほう、王が頭を下げるか」
「我らが王に、感謝されるとは」
「おいおい、国のトップに頭を下げられる日が来るとは」
それぞれ小さな声でそんなことをつぶやいていた。それだけ、すごいことなのだろう。私としてはあまり実感がないことだが、すさまじいことだということだけは分かった。
「本当は盛大にパレード、といきたいところだが、内密なものだから、そうできんのが惜しいな」
「こっちとしてはジョゼが目立つようなことはやめてほしいがね」
「それもそうか」
ギルマスが割と普通に軽口叩いている。あれ大丈夫なのかな?
「さて、感謝もほどほどにしておこう。報酬の方はあとで渡すことにするとして」
あ、そうか、報酬とかあるのか。どれくらいもらえるかな? というか、として?
「お前たちに一つ頼みたい、というよりかは提案がある」
「提案?」
「さて、今帝都ではある噂が流れていてな」
誰一人としてその噂について知らないからか、頭にハテナを浮かべる。そりゃ私含め南の町にいた組は今日帰ってきたばかりだから知らない。
「モロゾフとかも知らないの?」
「いや、知らん。俺たちも何だかんだいってずっと後処理だなんだで、色々なところ駆けまわってたからな。本当に知らん」
レーシュもそれに同意する。そういえば、馬車の中でも追う一か月以上まともに学校に行けていないという話をしていた。ということは学校の友達からそういうことを聞く機会もなかったわけだ。
「まぁ知らなくても、当然だわな、バンカ」
「はい」
ここまで傍観していたバンカさんが口を開く。どうやら噂の内容を教えてくれるらしい。
「色々ありますが、冒険者の間では、魔獣が活発したということは強い魔獣があらわれたから、というのが噂になっています。これに関しては魔獣が活発化するときは決まって、新しいダンジョンや強い魔獣があらわれるから、というのが常識になっているからですね。そして、その強い魔獣があらわれないから、誰かが討伐したのだと」
ふむ、噂というか事実なような。どっちかというと誰が討伐したのか? という方がメインなのかな?
「他には、南のダハーカの家の領主が急に変わったのは裏に誰かいるからだとか、この帝都に現れた奴隷だった人たちから、誰かに救われただとか、そういう話がこの帝都にたくさん流れましてね」
・・・あれ? もしかして、これ全部。
「私たちのこと、ですわよね?」
「そう、だな」
レーシュとウロクもそのことに気づいたらしい。
「そういうことですね、そしてこういったうわさ話はどれも信憑性が高くて」
高いも何も、事実だが。
「そして、それらの噂話が集結された結果、貴族や上位の冒険者、商人の間でこんな存在が言われるようになりました」
「この帝国でひそかに暗躍する、王しか知らない謎の部隊。黒い面の”顔なし”ってな」
何か、私たちが知らない間に大ごとになっている気がする。
「そ、それってつまり、私たちがそう言われていると?」
「ああ、中々に的を射た表現だろ?」
「ちょ、ちょっと待って、私たちがやったことばれてない?」
「それもそうだろうな、お前らは相当完璧にやったんだろうが、それでも生き残りもいれば、お前らが救った人間もいる。そういう奴らからお前らに関する証言が出てる。ようは噂ってよりかは、証言から現れた謎の部隊って感じだな」
なるほど、私たちが戦った相手にはもちろん生き残りはいる。そういう人たちの証言から私の存在が浮き彫りになったと。
「だけど、その噂、というかその話がどうしたんだ?」
「まぁ、ここからが本題さ。確かにこのまま、もう二度と現れることのない部隊でもいい。というか表向きはそうするのがいいだろうな」
表向きは?
「ああ、実はな、こいつとちょくちょく話してたのさ、俺たち私設隊がほしいとな」
「あ~、それはつまり」
「ああ、どうだ。この話、本当にしちまわないか? 名もなき救国の英雄さんたち?」
まさかの提案に、全員が頭を抱えた。あほな狼を除いて。
読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。
まさかの王様の部下になってしまうのか? といっても、その後の話は書くか分かりませんが。




