パーティはおしまい
どうも、作者です。81話です。
今回で、長く続いた作戦は終了となります。最後はモロゾフのお話です。
俺は戦場で死んだらしい。正直死んだときの記憶の前後がないから実感はないが、死んだってのはもうわかってる。だが俺からすれば、戦場から、唐突にこの世界に飛んだってことだけだ。
俺が気が付いたときにはよくわからない城の地下にいた。その時にはもうこの体、鍛えられた体から弱っちいガキの姿に変わっていた。そっからクソみてえにこき使われて二年。俺は何とかあの場所から抜けてやった。
死んだはずの俺をこの姿で蘇らせやがって、しかもこんな肉体で。本当に意味が分からなかった。抜け出した後も俺はいろんな人間の元で傭兵として、アサシンとして生き延びてきた、いつか俺をこの世界に転生させやがった、あの女神に報復するために。
何、今回もそんな過程に過ぎない。
くそ!? どうしてばれた!? いやどうしてこんなことになっている!?
王国への反旗を翻すためのパーティであったはずなのに、どうして乗っ取られている!?
あいつは確かに辺境まで飛ばしたはずだ。私の意見に幾度となく抗議をし、家畜どもに慈悲を与えようとし、挙句の果てに王と和解すべきだなどしたおのバカ息子は追い出したはずなのに、どうして!?
他の人間と協力せぬように監視もつけさせた。そのはずなのに、どうして西のタラスの連中と共にここに来ている!? 何故!? 何故!?
何より私はなぜ? 無様に逃げている?
兵士を数人殺す。全員後ろから一突き、俺に気づくことなく死んでいく。さて、これで監視の残っていた奴らは全員だろう。パーティ前の目標はこれで終了、これで相手に抵抗されることなくパーティを乗っ取れる。まぁ、それは貴族の皆さんに任せようか。
外では、分かる者にしか分からない火事によっててんやわんやだ。その状況に何も聞かされていない兵士たちは、真面目に中でパーティを守ってる。帝国反逆のことを知っていた兵士はこれで全部殺した。
ここまで段取りを進めるのに随分と面倒だった。西の貴族へ話し合いをする貴族どもの護衛、それにほぼ軟禁状態のダハーカの領主の息子の捜索、そして監視役の暗殺。ついでに救出。
そこからは、王命で来たレーシュと合流、そしてあいつらと情報集めをし、西の貴族との情報共有。色々とこき使われたな。
だが、今回の作戦はもう一人の異世界人のおかげでここまでうまくいっている。はっきり言ってしまえば、いなければ恐らく失敗していた。魔獣の方がどうにもならなかった可能性が高い。
はっきり言ってしまえば、あいつの召喚獣はあまりに無法だ。俺もそれなりのスキルをもってこの世界に来たが、だがそんなレベルじゃない。チートというやつだ。あいつ一人いれば、国家転覆くらいできそうだ。
さて、ここまでのことを振り返っているうちに、領主様のところにたどり着いた。さて、殺しに行きますか。
「くそ!? 何が起こっている!?」
そんなことを叫んでいる声が聞こえる。外の状態に恐れているのか、それとも中の状態に困惑しているのか。まぁどちらでもいいが。
俺はその扉を開ける。目標の相手は開いた扉の先の俺を捕捉している。
敵が声を上げるまでもなく敵の懐に潜り込む。手に持っているナイフで一突き。これで終わり、だと思ってたんだがな。
俺のナイフは敵の剣によって抑えられていた。ちっ、やはり筋力が足らん。純粋に力で押し負けて俺は後ろに退く。
「なるほど、屋敷の中の人間を殺していたのはお前か、ガキ」
「そーですよ」
ガキといいやがったなこいつ。いや冷静になれ自分。確かに今の俺は正真正銘のガキなんだ。もう三年だ。そろそろ慣れよう。うん、それはそうとしてこいつは殺す。
どうやら、領主様はいつの間にか、逃げていたらしい。どうやらこいつはいわゆる影武者か。そういえば、貴族の領主はそなえとして、こういう影武者を用意していることがあるとか、レーシュが言ってたな。忘れてた。
はぁ、これではアサシン失格だ。つっても、この稼業を始めて一年の未熟者だしな。成功率はここまで十割だったんだが。まぁ、次に活かせばいいか。
「そうか、ならば貴様は殺された仲間のためにも始末する」
隠れ場所のない部屋、姿が見えたアサシン。その上、俺が知っている扉側は防がれている。袋のネズミというやつだ。今の俺はそれらしい。
「すまんね、俺はここでもう一度死ぬ気はねぇんだ。それに」
相手は怪訝な顔をしている。どうやら俺を見失ったらしい。俺は悠々と相手の背中に回る。
「てめぇ如きじゃ俺を殺せねぇよ。だからてめぇが死ね」
「かはっ!?」
俺は相手に振り返る暇も与えずに心臓を一突き。相手は無様にも領主の服を着ていたことで鎧もないその背中から心臓を突き刺す。
「どう・・・やって」
「教える義理はねえし、教えねえよ。死人に手向けを送る性格じゃないもんで」
それが聞こえていたかは定かではないが、相手の目は虚ろになっている。俺は注意深く相手を観察する。どうやら完全に死んだらしい。はぁ、相手がちゃんと死んだかいちいち確認するのも面倒だな。だがこの異世界じゃ、相手がどんな力を持っているかわからない以上、きっちり確認しとかなきゃな。
ま、珍しいスキル持ちなんて異世界人でもない限りこの世界じゃ稀らしいが。ま、とりあえず、暗殺失敗を知らせなきゃいけねぇな。といっても、このまま屋敷の中にいるような俺が殺すが。外にいるようなら・・・仕方ない。
俺は、手に持っている石に魔力を込める。透明な石は赤色に変化する。そうすれば、対応する方の石も同じ色に変わる。これであらかじめ話し合っていたように、俺の暗殺失敗の情報があっちに送られた。
「はぁ・・・はぁ・・・」
私はどうして無様に逃げている? それにこの道はどこだ。無我夢中に走っているうちに知らない裏道に出ている。
いつの間にか外は暗くなっており、周りには味方も敵もいない。
くそくそくそくそくそくそ、どうして俺はこんな目にあっている。どうして、誰も助けに来ない。研究者はどうした。兵長はどうした。精鋭部隊はどこにいった。
おかしいおかしいおかしい、私は今頃、優雅にパーティで帝国反逆の言葉を掲げ、スゲにでも帝国が滅ぼせる状態だったはずだ。どうして俺はこんな裏道でうずくまっているのだ。いや、まだだ。生き残りさえすれば、別の国にいる部下たちと合流できるはずだ。そうだ、私が生きている限り、問題はないはずだ。
俺は裏道から大通りに出ようとする。しかし、いきなり現れた妖しい笑みを少女に道を防がれる。
「ねぇ、どうしてそんなに怒った顔をしているの?」
「退け。私を誰だと心得ている」
「どかないよ?」
俺はその言葉に怒り、手を上げる。少女を無理やりどかそうとする。しかし、振り上げた手は一向に動く様子はなかった。
「な?」
「そうやって、すぐに手を上げてどうにかしようとしたんだ。そうやって、人を見下してきたんだ」
少女の顔は、軽蔑するように俺を見上げていた。その瞳は吸い込まれそうなほど冷たかった、まるで冷たく燃える火のようで。だが、俺はすぐに視線が外れる。その少女の後ろにいる大きな蜘蛛のシルエットに気づいてしまったから。
「う、うわ、あ、あああ」
「私はあなたを裁かないけど、あなたの未来には心底興味ないから、さようなら」
俺は一生の暗闇に絡めとられたのだと、悟った。
石の信号を送って二時間。石の色が緑色に変わった。どうやら捕縛に成功したらしい。俺はやることもなくなったのでパーティの方を緩く見ていた。
新たな領主として、あの貴族の息子は迎え入れられている。普通、前の当主がいなくなったら、相当怪しまれそうなものだが、どんな仕込みをしたんだろうか。そこらへんは俺の仕事の範囲外だから干渉しないが。
パーティはまるで何もなかったかのように和やかに続いていた。まぁ、周りは血で染まっているのだが。
とにかく、パーティの乗っ取りもうまくいったらしい。これで、南の領地もこれからはあの帝王様とうまくやっていくことになるんだろう。国としてはかなり安定したと言っていいんじゃないだろうか。雇われの俺にはあまり関係のない話だが。
はぁ、事後処理は多少あるだろうが、任務は終了。さーて、帰るとしますかね。
読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。
最後に領主を捕まえたのは誰だったんでしょうね(すっとぼけ)。と、さてまさかのモロゾフは領主の暗殺に失敗しました。何やってんだこのおっさんショタ。まぁ、この後きっちり始末されました。
書いているときに、すごい大人っぽい喋り方だけどこの人すっごいショタボイスなんだよなと思いながら書いていました。
さて、これで作戦は終了。無事にジョゼが課せられた王命も終わりとなります。ということで最終回まであと少し、もう少しだけお付き合いください。
捕捉:何となく察せるかもしれませんが、モロゾフが相手から見えなくなったのはモロゾフの人間に認識されなくなるというスキルによるものです。レンズのそれに近いですね。今までの情報収集や唐突に現れたのもこのスキルによるもの。




