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向かうべき覚悟

どうも、作者です。75話です。

前回、戦闘を書くみたいなあとがきを書きましたが、今回はそこまで行けませんでした。申し訳ありません。その代わり、彼女の過去を、覚悟を書きました。よしなに。

私は、黒い面をかぶって、その廊下を通り抜ける。監視の兵士たちは、倉庫の方に向かっていき、館の元から警備が手薄だった部分は完全にがら空きとなっていた。


誰もいないくらい空間を私は落ち着いて通り抜ける。わざわざ、ジョゼ様以外のほかの皆様に隠してここまで来たのだ。少し、申し訳ないなと思う。それでも、これはきっと私がやるべきことだろう。


私は目的の場所にたどり着く。ジョゼ様の召喚獣、レンズさんが見つけた場所。この先に、私が殺すべき者がいる。ここに魔獣を解き放ち、そして魔獣に奴隷にされた方々を食わせるという方法を教えたであろう人物、()()()といわれていた人物が。


私は少し昨日のことを思い出しながら、扉を開く――




「ジョゼ様、少しいいでしょうか?」


私はその日、不思議と緊張がなかった。


「うん? どうしたの? イドハさん?」


私は作戦決行前夜、ジョゼさんの部屋を訪れた。それはジョゼさんに頼みごとがあったから、何より、打ち明けなければならないことがあったからだ。


「明日の作戦、私をどうか館側に一緒に行かせてはくれないでしょうか」


館側の作戦では、ジョゼ様の召喚獣であるアークさんを使う予定だ。それなら、私ひとりが増えても問題はないだろう。


「それは、どうして?」


「・・・ジョゼ様、あの兵士たちへの尋問で出てきた名前を覚えているでしょうか?」


「え? えーと」


「”研究者”と呼ばれていた人物のことです」


ジョゼ様はそれで合点がいったように、うなづく。


「ああ、そんな名前の人いたね。その人に会いたいってこと?」


「はい・・・いえ、ちゃんと言わなければですね。私はその人を()()()と、思っています」


その言葉で、ジョゼ様は険しい表情になる。当たり前だ。ジョゼ様は、死が当たり前ではない場所で過ごしていたお方で、今でも人を殺すことに抵抗がある。明日の作戦でも、やはり人を殺すことはしないだろう。


だが、それが正しいのだ。人を殺すことに慣れてしまうことこそ、本当は愚かなことなのだから。ジョゼ様が人を殺すことに関しては、誰も賛成はしないだろう。


「それは、どうして?」


「魔大陸の魔獣をこの土地へと連れてきたのはその研究者です」


「どうして、そう言い切れるの?」


ジョゼ様からすれば、怪訝な話だろう。


「一番にあるのは、尋問の時にも兵士の人たちが言っていたように、研究者が来てから、いろいろ進み始めたと言っていましたが、実際、あの後詳しく聞いたところ、魔獣の動きが活発化した時期と研究者と呼ばれた人物が来た時期が一致していました」


魔獣たちが活発に行動するようになったのは、魔大陸の魔獣が来たことにより、住処を奪われたことが理由だ。


「・・・それは確かに、その人が連れてきたっぽいね」


「はい」


「それはわかったけど、どうしてわざわざイドハさんが殺さなきゃいけないの?」


ジョゼ様の言う通りだ。それだけの理由であれば、私が手を出す理由にはならない。何より、この事実はモロゾフ様なども理解していたはずだ。それでも今回その人物を殺すという目標を立てなかったのは優先度が低いからだろう。


ここの頭さえ落とせれば、わざわざ招き入れらただけの研究者をつぶす方法なんていくらでもある。だからこそ、目標から外した。


だが、その人物は恐らく容易に逃げられるだろう。そういう力をもらっているだろうから。そして何より、私が決着をつけるべきだから。


「ジョゼ様、魔大陸の魔獣を連れてこられて、その上その魔獣を興奮させるような草を持ってこられるとしたら、どんな人物でしょうか?」


ジョゼ様は少し考える、その後、すぐに思い至ったのか口を開く。


「魔大陸に住んでいる人間、魔大陸に住んでいるのは主に、魔族」


やはり知っていたらしい。誰かから教えてもらっていたのだろう。


「その通りです。ジョゼ様、もう一つだけ聞きます。魔獣災害を起こした存在を知っていますか?」


ジョゼ様は首を振る。どうやら誰からも聞いていないらしい。


「それは、とある魔人種の王の中の一人によって引き起こされたものです。同士以外を害し、人間に忌み嫌われるその種によって引き起こされたものです」


魔人種には三人の王がいる。魔人種はより細かく、魔眼、魔角、尾魔という風に分かれる。それぞれにいる。


「つまり・・・今回もその王様が関わっているってこと?」


「そう思ってもらって構いません。魔人種の王の一人、魔眼の王。その研究者はその王の臣下でしょう」


ジョゼ様は怪訝な表情をより深くする。どうしてその話が私につながるのか、と。


「ジョゼ様、私を、『鑑定』してください」


私は眼鏡を外して深呼吸をする。そして、ジョゼ様の目をまっすぐと見つめる。


ジョゼ様は、疑問を深めながらも『鑑定』を起動する。その瞬間すべての疑問が解けたように、顔に驚きと納得が同時に来たように目を見開く。そして、顔をゆがめる。


「どう・・・して?」


「私は逃げたんです。同胞から」


ジョゼ様の表情はますます険しくなる。


「”裏切り者”と呼ばれ、たくさんの同胞に追いかけれました。たくさんの仲間とともに、ほとんどは、途中で別れたり・・・私の身代わりに」


ジョゼ様は苦しそうな顔をしながら、私の言葉を遮った。


「違う、私が聞いてるのは、そんなことじゃない! ならどうしてイドハが殺さなきゃならないのさ、イドハは関係ないでしょ! それに同胞なんでしょ、それだったら」


「同胞だからです。同胞だからこそ、止めるんです。それが私の責任です」


今度は私が遮る。同胞であるからこそ、私が止めなければならない。


「私はあの日、ギルドマスター様や、バンカ様に助けられてから自分の過去に蓋をしてきました。ここで隠れてしまえば楽だからと、自分のことさえ偽れば、みんな私に優してくれるからと」


「それで」


「良くないんです。ジョゼ様が優しいのは知っています。今その過去が私に追い付いたというのなら、私はそれに向き合わなくてはいけない」


ジョゼ様のように。ジョゼ様が、目の前の苦しみから逃げなかったように。私はそう決心したのだ。


私はジョゼ様の目をまっすぐ見つめる。こんなに人の目を見たのはいつぶりだろうか。誰かの顔を見るのは怖かった。だからいつも下を向いていた。でも、今だけはそうするわけにはいかない。


ジョゼ様は、しばらく抵抗するように私の目を見る。


「お嬢、別にいいだろ?」


言葉をかけたのはシゼル様だった。


「お嬢だって、向き合ってる。長髪眼鏡のこの人も、いつもと違ってこんなにまっすぐお嬢を見つめてる。それに、こんなに強そうだ! だから、大丈夫だろ?」


シゼル様は唯一あるその口を大きく開けて笑う。


やがて折れたようにジョゼ様は大きくため息をつく。


「・・・わかった、明日皆には分からないようにこっそりとアークに乗せる。・・・死なないでね」


その言葉に私は少し笑みをこぼしそうになる。


「はいっ必ず。ジョゼ様、ありがとうございます」


その後、細かいところを詰めて、ジョゼ様の部屋の扉に触れる。私は少し、この空間から出るのが惜しかった。


「ジョゼ様・・・お友達のままで、いてくれますか?」


ジョゼ様は、一瞬驚いて声も出ないようだった。でも、すぐに優しく微笑んでこう言う。


「・・・何言ってるの? 当たり前じゃん」


その言葉に私は言葉が出なくて、咄嗟に深くお辞儀をして少し駆け足で部屋を出る。友達、それを肯定してくれて、私は顔が真っ赤になってしまった。いつかもう一人の友達にも、このことを報告したいな。




――扉の先にいたのは、一人の男だった。


「おやおや、来客者とは、珍しい。どんなご用件で?」


「あなたを殺しに」


男は、少し不機嫌そうに立ち上がって、作り笑いを浮かべる。


「こんな忙しいときに、ああ、町に入り込んだ虫ですか」


私は、黒い面を取り外す。男は仮面の下より現れたその顔に驚愕の顔を浮かべ、苛立ったように作り笑いを深めた。


「おや、おやおやあなたは同胞、いや”裏切り者”ですか。そういうことですか、一体どこに潜んでいたのやら、ですが、そういうことならこちらこそ、殺してあげましょう」


男は真顔になる。彼は私はまっすぐと見つめる。これ以上、言葉はいらないだろう。私は確信する。こいつは殺さなければならないと。


私は眼鏡を外した。起動する、生まれた時から持ちうる、”魔眼”を。

読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。

ということで、彼女、イドハの戦いを次回描くことになります。何となくわかってくれると嬉しいですが、魔眼同士の戦いとなります。よしなに。

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