救おうとするもの
どうも、作者です。71話です。
今回から、少しずつ本格的な戦闘パートになっていくから頑張りたい。
お腹が減った、体が痛い、起きるのが怖い。そんな感情に慣れ切ってしまったのはいつごろからでしょうか。檻に閉じ込められて、外に出れば鞭に打たれながら言われたことを言われたままやって、閉じ込められれば、美味しくないご飯を与えられる。辛かった。でもいつか誰かが助けてくれるんじゃないと期待していました。
そんな日々が続いて、ある日、他のみんなと鎖をつながれて、無理やりあるかされたり、ぎゅうぎゅう詰めで馬車に閉じ込められました。そしたら、明かりもつかない建物にとじこめられて、ただでさえ少ないごはんはもっと少なくなって、うごく気力もなくなりました。ああ、私はここで死ぬんだとさとりました。
でもそれはらくだろうな。もうなにもかんじなくていいんだろうな。やっとおわります、こんなひび。でも、もっとおいしいものがたべたかった。おともだちともっとあそびたかった。おかあさんのてつだいをして、ありがとうといわれたかった。おとうさんにあいたい。死にたくないな。
「ねぇ、お嬢さん、君はまだ、生きてるかな?」
そんなとき、つらそうなこえのおめんのおねえさんが、わたしのほうをみていいました。
「ジョゼ、本当に一人で行くのか?」
「うん、多分そっちの方がいい」
事前に中を調べた限り、というか、そっちの方がやりやすい。
「・・・そうか。でも気をつけろよ、あっちも手練れだからな」
「うん、わかってる」
もちろん油断するつもりはない。それに一切許すつもりもない。最初から負けるつもりもない。
「ウロクもイサムをよろしくね」
「おう、精々迷わぬようにサポートするさ」
「頼んだぞ! ウロク殿」
ウロクは、困り顔である。呆れ顔かな? まぁ、どの道SSランク冒険者の道案内をすることになるとは思っていなかっただろうな。でもちゃんとやってくれなきゃ、本当に迷子になるから責任重大である。
「イサムも、一匹も通さないでね」
「わかっている、その程度はやって見せようではないか」
「うん、頼んだよ」
イサムは答えてくれる。頼りになる。普段は頼りないけど、でも、何だかんだで私の信頼には応えてくれるのだ。
私は二人をあとにして、黒い面をつける。今回どんな形になっても、自分たちがやったという最低限の情報も与えないように。この黒い面をつけて作戦は実行される。黒い面の効果は、自分の姿を偽る能力ともう一つ、自分の姿が曖昧になって認識されなくなる能力の二つ。
前まではこの二つは同時に起動できない。片方だけだ。曖昧になる方は今回初めて使うが、何でも相手の記憶の中で、黒い面の人、以外の認識ができなくなるらしい。要は中の人間が何者だろうと、黒い面以外の一切の特徴が記憶できなくなるのだとか。
まさしく隠密に向いた魔道具だ。こんなものをさらっと作れるギルマスが恐ろしいが、敵じゃないから無問題。
私は奴隷にされた人たちが詰め込まれたその場所にたどり着く。老若男女、種族すらバラバラだった。だが一つだけ共通することがあるとするなら、誰一人として、生きる気力がない。私のことにほとんど気づいていない。本当にこれを、生きていると形容してもいいのだろうか。分からない。
私は目の前に倒れているエルフの小さな少女に話しかける。
「ねぇ、お嬢さん、君はまだ、生きてるかな?」
その少女は、その言葉に反応してくれた。私の方を向いて、ただ一言だけつぶやいた。
「しに・・・たく・・ない・・・」
涙を流す気力はないだろう。感情を載せる気力もないだろう。ただ、それでもこの少女は死にたくないと願った。
「うん、君は死なないよ。私がそうさせない」
私は『鑑定』を起動する。さぁ、救おうか。今だけは救世主でもなんでもなってやろう。
わたしはちからをふりしぼっていったひとことにおねえさんはこたえてくれました。わたしはそれがうれしくて、きっとこれはゆめなんだろうとおもいました。
『出でよ、救命の木、寄り添える者、生命樹、ライフ』
おねえさんからひかりがあふれだしたかとおもうと、そのうしろからおおきなきがはえてきて、ひかりをわたしたちにあびせました。
その光は暖かくて、体を包んでくれるようでした。
「少しだけ眠っていてね」
お姉さんの声が心地よくて、私はつい眠ってしまいました。
『出でよ、箱舟の獣、運ぶ者、移送獣、アーク』
私はライフで回復した人たちを今度はアークで、移送する。アークはさっき退去したから、ここに再度召喚する。あとは、傷ついていた人たちだけをアークで運び出せばいい。
私はアークで指定した人間以外を収納する。やっぱり『鑑定』を全員に施すのは頭が痛くなるから使いたくないな。でも、これであとは、敵だけだ。
先ほどまで倒れていた人の一人が消えている。どうやら私の背後に回り込んだらしい。でも、意味はない。
背中から剣が何かにはじかれる音が聞こえた。どうやらあらかじめ出しておいたナインの触手にはじかれたらしい。
「な!? なんだこいつは!?」
攻撃してきた奴がナインに驚いていた。もう一人の奴隷に紛れ込んでいた兵士も立ち上がり口を開く。
「貴様、奴隷共をどこへやった!? いや何より、俺たちをどうやって見破った」
「そんなの、私をやってみればわかるんじゃない? 皆でかかってきなよ」
「くそ!」
男は口に指を突っ込んで口笛を吹く。どうやら相手の伝達方法らしい。他のところに潜んでいたであろう、兵士たちも集まってくる。
私はその間にライフを退去させる。ライフの回復能力は圧倒的ではあるのだが、魔獣以外なら無差別に回復しちゃうからこういう場面ではまずい。
「ありがとう、ライフ。いこうか、シゼル、ナイン」
「おう!」
敵の人数は二十人弱、平均レベルは50程度、多分相当強いな。流石にもう一匹使う必要がありそうだ。でも、やってしまいますか。
ウロクからの信号も来ている。外も始まったらしいし。
「灰氷! やっぱり来やがった!」
俺はジョゼに言われた通り、見張っていたら、案の定予想していた方角から例の魔獣どもがあらわれた。やっぱり大量のニスロク草が仕掛けられていたらしい。
「おう!」
「今のところ数は五匹! 多分こっから増えるぞ!」
イサムは、元気なわんこみたいな目で、敵を待ち構えていた。多分あれが本人の真剣な目なんだろうな。それとも、ジョゼの命令に百パーセント応えるためにあんな目してるのかね、どっちでもいいが。
魔獣どもがイサムに近づいて攻撃する。
「むっ!」
攻撃してきた魔獣を一瞬にして切り伏せ、背中からの一撃にも、ひるむことなく、避けて一太刀浴びせた。流石はSSランク冒険者、並の冒険者なら致命傷ぐらい追いそうな連続攻撃に余裕で対応した。だが今驚いたか。
「ふむ」
その後も残った三匹の同時攻撃に少なくとも俺の目に見えない速度で一匹に一閃ずつ浴びせていた。俺が認識した時点で切られていたから、細かいところは分からないが。だが、
「さっきからどうしたんだ?」
「こやつら連携している」
確かに、前の魔獣が攻撃した後からの死角からの攻撃、同時攻撃など明らかに統率の採れた動きをしていた。それの何が、いやそうか、ニスロク草で興奮しているはずなのに、連携できているのはおかしい。
「何か細工されてる?」
「それは定かではないが、数が増えると少々まずいか」
恐らく、勝てはするのだろうが、後ろに通すのはまずいか。
「少し、様子を見ていく。ウロク殿も用心を」
俺は魔獣避けを持ってるから大丈夫だと思うが、あのギルマス謹製の。
「魔獣七匹、さっきより増えた」
『氷は密に、鉄の如き』
あれは詠唱、灰氷の固有魔法! あれは第一段階の『氷牙』だったか、刀身のまわりに、空気が凍っているのか、白い煙が立ち上っている。どうやら本気でやるらしい。
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さて、久々のジョゼの本気戦闘、そしてイサムの固有魔法、どちらも大変そうな相手そうですが、無事ジョゼたちは勝てるでしょうか? お楽しみに。




