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冒険者か、それとも

どうも、作者です。

ちょっと今回は重いかもしれません。まぁ、気軽に見てもらえれば。

前回のあらすじ

毒草を没収される私! ギルドマスターとの初邂逅! バンカさんに殴られるギルドマスター!以上!


「はっはっは! すまんすまん! 言い方が悪かった!」


殴られた割にこの人平気そうである。だが、確かに初手冒険者向いてないはさすがに失礼だ。まぁ、私も向いてると思ってないので特に気にしてないが。


「そうですよ、 言い方は考えてください」


さっきと打って変わって冷ややかな声で言うバンカさん。


「まぁ、気にしてないのでいいですよ」


「それはよかった。じゃあ改めて聞こうジョゼよ、冒険者業をこのまま続けたいか。話を聞いた限り、お前は冒険者になりたくてなったわけじゃないだろう」


そう言う声音には、豪快さが消えていた。まるでこちらを値踏みしているような、そんな声音だった。これは、正直に言った方がいいのだろうか。しかし、どうだこの人のことは、どうもわからない。悪い人ではない。それは分かるが、しかしこの人相手に油断しちゃいけない。そんな気がする。どうする?


「安心しろ。別になんて答えてもらって構わんよ。それは俺じゃなく、こいつのことを信用してくれ」


そう言って、バンカさんを指さす。私はバンカさんと目が合う。バンカさんは喋らない、しかしただ優しく微笑んでうなずく。こんな顔をされたら、信頼するしかなかった。


「正直、冒険者より楽に稼げる方法があるなら、全然やめます」


「ほう、こだわりはないと?」


「はい、全くやる気ないし、なんだったら働かないでいいなら働きたくないです!」


ほんとに、全部正直に言う。それを聞いた瞬間、ギルドマスターは口を大きく開く。


「がっはっはっは! なるほど! そうか、よく正直に言ってくれた!」


豪快な感じにギルマスさんは戻る。むしろ、バンカさんの方が少しあきれたように苦笑していた。


「なるほど、そういうことなら、もう一人、一匹でいいのか? 獣殿」


「お、なんだ俺のことか!」


「お、ほんとに喋るのか」


どうしてシゼルなのか。まぁ、何かあるのだろう。ここは黙っとこう。ただ口を開いたのは、バンカさんだった。


「シゼルさん。改めてあなたのできることを教えてください」


「あぁ? まぁいいぜ! 俺ができるのは薬の調合ぐらいだぜ! あとは食ったものの性質がわかるくらいだな。食えるのは草とか鉱物ぐらいだがな!」


「なるほどね。そして、ジョゼの『活性』、か。これは、そういうことかね」


ギルマスさんは何か考え込んでいる。その顔は、なんというか、まぁ美形である。


「さて、ジョゼ、俺の提案を聞いてくれるか?」


「いいですよ~」


「よし! それならジョゼ、薬屋をやってみんか!」


薬屋、確かに! それなら、シゼルに丸投げして、私は何もしなくていいじゃん! いやでも待て。


「私、お店を開けるくらいのお金なんて持ってませんよ?」


そうだ、元々何かできるほどの資金がなかったから冒険者を始めたのだ。


「だろうな、だがそこは安心しろ。俺が全部だす」


「は?」


いや、それはいくらなんでも怪しいだろう。こんなやり方、あまりに詐欺のそれである。流石に怪しすぎる。


「それはいくらなんでも、怪しいです」


「だろうな」


「どうして、そこまでしてくれるんですか?」


ギルマスは、紙とインクを取って、何かを書き始める。


「バンカ、これをやってくれるか? とりあえず、他の仕事は俺が後でやっておく」


「ギルドマスター」


バンカさんはギルマスをにらんでいる。その声には怒りの声が含まれていた。ギルマスはそんなバンカさんに、臆することなくバンカさんに微笑みを返す。


「頼む」


やがてバンカさんは、折れたようで、ギルドマスターから紙を受け取り、扉に向かう。そこで立ち止まり、ギルドマスターの方を見る。


「ギルドマスター、彼女をここに連れ込んだものとして、私には責任があります。彼女に何かあるようでしたら、私はあなたの元から離れる覚悟もあります」


「今日会ったばかりの奴にずいぶんと入れ込んでいるな」


「放っておけないんです。なんとなく」


バンカさん...。本当に、本当にこの人には頭が上がらない。私は、本当に運がいいらしい。


「わかった、誓おう。決して彼女に危害は加えんよ」


何か、やわらかい雰囲気が流れる。きっとこれは、ただの確認だったのだろう。


「ジョゼさん、何かあったら報告してください。あとでお仕置きするので」


あんまりに朗らかな笑顔で言い放つので、逆に恐ろしさが増す。


「は、はい」


バンカさんは、礼をして部屋を退出する。絶対に怒らせないようにしよう。


「...。よーし!ジョゼ殿、失礼があったら言ってくれ! 全力で修正するぞ!」


「ジョゼでいいです。でも、善処します」


「はっはっは! 俺もお姉さんに逆らうのはやめよう!」


ここにいる全員の気持ちが一致した瞬間だった。


「さて、俺がどうしてここまでやるか?だったな」


「はい、どうしてそこまでやってくれるんですか? 正直何もやってくれる必要はないでしょう? それとも、やっぱり借金という形ですか?」


「んー、全額寄付でもいいが、借金の方が後腐れはないな。利息もつけんから、少しずつ返してくれていいが」


やはり借金、しかしJKであった私には難しいが、それでも条件としてはかなり破格だと思う。


「さて、俺がなんでお前にここまでするのか。実はな、俺はかつて冒険者だった」


「そんな以外でもないです」


「えー、そうか?」


「だって、エルフにしては筋肉質だし、なんか戦ってる感ありますし」


「確かに、俺を納得させるとは」


ふん、ただの小娘と舐めってもらっては困る。


「お嬢! いうほど得意げになることじゃないと思うぞ!」


「シャラップ! シゼル!」


「中々いいコンビだな!」


「と、さてここから本題でな」


先ほどの真面目な感じに戻る。この人よくこんなに一瞬で切り替えられるな。


「まぁ、俺がいたパーティにはな。転移者がいたんだ」


それって、つまり私と同じ世界の人がいたということだ。なるほど、バンカさんが転移者に詳しかったのはこの人が一緒にいたからなのか。


「なんだったら、そいつがパーティの中心だった。何せ、勇者っていってな、転移者の中でも特別の奴だったんだ」


勇者、明らかに主人公みたいな人の名前が出てきた。っていうか、勇者パーティのメンバーだったってこの人、すごい人なのでは?


「どうして抜けたんですか?」


「あぁ、抜けたんじゃないんだ、解散したんだ」


「どうして?」


ギルマスさんは懐かしむように遠くを見る


「勇者が死んだからさ」


「それは、すみません」


「お前は知らなかったんだ、気にしないでくれ。それに、あいつが死んだことに俺たちは誰も怒ってないんだ。なんせ、あそこであいつが死ぬしかなかったからな」


そう言う目には、悲しさと後悔がにじみ出ていた。きっとこれがこの人の本性なのだろう。でもきっと、そこに触れちゃいけない。そんな気がする。


「ま、それが一番の理由さ。かつて異世界人と共に旅し、助けられてきた。そしてその恩を返しきれなかった。だからこうやって返す。そいつみたいに死んでほしくはないないしな」


それが理由。でもそれはあまりに悲しい理由だろう。


「それだけじゃあない、お前が特殊事例なんだ」


特殊事例? 私が特別だというのか?


「どうゆうことですか?」


「通常、この世界に来る異世界人は、誰か、まぁ通常は国だな。誰かに”呼ばれて”この世界に転移する」


国? 誰か? 女神もその誰かに入るのかな?


「えーと、それがどうして理由になるんです?」


「お前が特殊事例たる所以だな。通常、呼ばれた転移者は、そのまま国の所有物ってことになる」


所有物!? 人を? それってつまり


「奴隷だ。訳も分からないままこの世界に呼び出されて、服従させられる。そして、お前も、いやお前は若干違うか。まぁ、転移者はとてもなく強いスキルを持ってるからな。そのまま兵器として運用されるわけだ」


あまりに、いやな話だった。あの女神はどうしてその話をしなかったんだ?


「俺は、いや俺たちはそれを許さねえ。だから、そうなってないお前の面倒を見る」


その言葉には怒気が含まれていた。恐ろしく、底冷えするような声。大丈夫だ、この人は味方であると確信する。


「一つ聞いていいですか?」


「なんだ?」


「この世界に転移者を呼び出すのは”人”だけですか」


ギルマスさんは私の言葉の真意を探るように、こちらを見据える。私はそれをまっすぐ見る。


「あぁ、”人間”だけだ。それ以外の存在が異世界人を呼び出すなんてのは聞いたことがない」


「ほんとに私、特殊事例じゃないですか」


あの女神、もしかしなくても厄介案件じゃないですか。


「なるほどな、やっぱりお前、女神に呼び出されたか」


「え!? 何で分かったんですか」


まるで当たり前のように言われて驚く。誰に呼ばれたのかなんて言ってないのに。


「簡単な話だ。ジョゼ、お前のスキルはできすぎている。『活性』に『幻想召喚』、そしてそこから呼び出される最初の召喚獣が、薬を生成できる獣と来た。まるで最初から、薬屋をやらせるためにスキルを持ってる。明らかに作為的だろう。確かに強力なスキルをもって呼び出されるとは言ったが、それだって基本ランダムだ。あまりにできすぎているからな」


確かに、そういえば、楽に生きれるくらいの力と言っていた。多分、そういうことなんだろう。だが、あの女神とはもう一度話し合う必要があるらしい。


「まぁ、でもわかりました。納得できたと思います」


「つまるところ」


「受けます。あなたの提案」


まぁ、元々私にはデメリットのない話である。納得できる理由があるなら、断る理由もない。


「じゃあ、細かいところを話し合おうか、本当に受けるどうかはその後決めてくれ」


「わかりました」


冒険者業初めて0日。引退である。

読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字・コメントお気軽にどうぞ。

読み直して思いましたがこっちの方がタイトル「ギルドマスター」っぽいですね

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