決戦前夜
どうも、作者です。69話です。
さて、覚悟を決めたジョゼ、とはいえ、作戦開始までに進めなければならないことがあるので、今回はそのお話です。
私は落ち着いて、奴隷たちがいる場所の周辺をしっかりと観察する。その時が来た時、一切の無駄がないように。正直なことを言えば、今でもこの状況を放置している現状に吐き気はある。でもみんなに説得された。ならこらえるしかない。もうこれは私だけの問題ではない。
なんとか、詳細な地図をイドハさんとナインの一人と一匹で書き上てくれた。明日は恐らく迷いはしないだろう。
お昼を過ぎた頃、二人が帰ってくる。二人とも、やはり真剣な顔をしていた。これで確信する。きっと私以外の皆は、恐らく奴隷の人たちの現状を知っていたのだろう。詳細なことは分からなかったとしても、多少そうであるという推測は立てていたはずだ。
だから深刻そうな顔をしていた。それと同時に私がああなることも何となく理解していたのだろう。
「戻ったぞ」
「おかえり、二人とも」
モロゾフが私の顔をまじまじと見る。そして一つため息をついた。
「昨日、いや今日の朝とはまるで別人だな・・・。聞いたんだな?」
「うん」
「そうか、ならもう何も憂いはないか?」
その言葉はきっと、私が奴隷たちを見たときにああなるのは何となく聞かされていたんだろう。でもその問題はもう解決した。
「ないよ、私はもうただやるって決めたから」
「・・・わかった、じゃあ作戦会議を始めよう」
その一言で、私たちはみんな覚悟を決めたように席につく。
「さてまず一つ、奴隷の詳細な位置は分かったんだな?」
「はい、こちらで詳細な地図を作りました」
私とイドハさんに関しては地図がなくても頭に入っているが、あったほうがいいだろう。
「ならいい、ならもうやるべきは」
「ダハーカの目論見をつぶすこと、それが一番の目的ですわね」
「そうなるな」
奴隷を救うこと、魔獣をつぶすこと、そして私には言ってないけど、
「この際だ、こっちのやることも言っておく、俺たちが王から命令されたのは一つ、ダハーカの当主を殺すことだ」
当主を始末すること。それは、何となく私もわかっていた。というか、イドハさんも、話が分かっているか微妙なラインだがイサムも、何となく理解していたんだろう。それに対して誰も驚きはしなかった。
「もう少し厳密に言えば、当主のすり替え、と言ってしまった方がいいかもしれません」
「すり替え?」
「はい、今のダハーカはあまりに危険すぎます。南の貴族の反帝派の中心はダハーカの家ですからね、だからといって、今有力貴族であるダハーカを没落させるのはあまり得策ではありませんわ」
「今、ダハーカの家がつぶせば、南の貴族全体の調和が崩れる。ただでさえ、十年前の魔獣侵攻で不安定な南の領地から、中心となるリーダーがいなくなれば、不毛な争いに発展しかねない、それも他の土地も巻き込んでの」
ふむ、要はこの前のマフィアの時と同じなんだろう。確実に悪影響はあるが、それ以上に無くなったときのデメリットがそれを上回る状態。だからへたに壊せない。
「なるほどね、それですり替えか。権力をそぐんじゃなくて、権力者を変える。それも反帝派の人物から親帝派の人間に、多少対立は生まれても、崩壊まで至らないように」
「そういうことですわ」
「だが、そんなにうまくいくものなのか?」
確かに、そのすり替えがうまくいっても、崩壊まで行かないとは限らないのではないだろうか、リーダーが変わると人はついていかなかったりするし。
「そのための根回しはもうしてある」
「そちらは王と私たちの領分ですからね」
あ、そういえばレーシュここに来る前にどこかに行ってたな。しかも王命で。あれってそういうことか。
「ですから、そちらに関しては考えてもらわなくて結構ですわ」
「まぁとりあえず、まず一つ目の作戦は、パーティを乗っ取ること」
乗っ取る、明日ダハーカが催すパーティを。
「実はこれに関しても元々決めたてたんだ。なんせこのパーティの告知は一か月以上前にあったからな」
そうだったのか。ということは
「もともとそっちとしては、パーティの日に動くつもりだったていうこと?」
「そういうことになる。パーティの目的が帝都襲撃を告げることだったのは初めて知ったがな」
「恐らく信頼が厚い貴族にだけそのように告知していたんでしょうね」
なるほど、偶然というのは恐ろしいものだな。
「だから厳密な作戦としては、ダハーカの当主の暗殺、それとパーティ会場にいる警備兵の始末になる」
そうか、勝手に当主が変わったなどと宣言することなど不可能なはずだ。だから、安全な状態を作る必要がある。
私はちらりとイドハさんを見る。イドハさんは少し何かを考えているようだ。
「これが一つ目の作戦になるわけだが、こっからもう一つ、奴隷の救出」
「そっちに関しても、同時でやったほうがいいだろうな」
ウロクがそのように言う。もちろんそのつもりなのだが、どうして同時にやる必要があるのか。
「どうして?」
「あの兵士たちが言ってたんだろう? 帝都襲撃を始めるのはパーティの次の日だと、となると準備はすんでるはずだ。なのに、どうして、魔獣たちに奴隷を食わせていないのか」
そうか、もうすぐに出発するならもう食べられていても、おかしくはないんだ。
「恐らくデモンストレーション、自分たちが本気でやることの表明として、奴隷たちを魔獣に食わせて示すつもりなんだろうよ」
これまた胸糞が悪い話だった。
「というか、これに関してもほぼ確定だ。あの兵士たちに色々と聞いたら、げろったからな」
「ということは」
「十中八九、今日確認した奴隷がいる場所に魔獣たちが放たれる。だからそうされる前に、奴隷たちを救出する必要がある」
やっぱりそうなるのか。
「だから明日は同時に作戦を進めることになる。パーティの乗っ取りと奴隷の救出」
「つまり二手に分かれるってことだよね?」
「あぁ、そうなるな。ってことで、明日のメンバーだが、パーティ側に俺とレーシュ、奴隷救出側にジョゼとイサム、ウロク。このメンバーだ」
「了解した!」
イサムの言葉に同調するように他の皆もうなづく。私含め、誰も異論は無いようだった。イドハさんはいないのか、って一応イドハさんはただの受付嬢だったな。
「え、えと私は?」
「イドハには、いつも通り受付嬢の仕事をしてもらいたい。そっちの方が不審な感じがないからな」
「わ、わかりました」
なんだろう、多分他の皆は気づいていないが、イドハさんは嘘をついている気がする。
「さて、それじゃあ、後は細かい作戦を詰めていくぞ――」
作戦会議は終わる。残るは明日、戦うだけだ。
私たちは多分このメンバーで食べる最後の食事になる。モロゾフとレーシュは作戦が成功すれば、色々と事後処理があるそうで、そこでお別れになるそうだ。特にモロゾフとはもう会うことはないかもしれない。同じ転生者として、色々と話したいところだが、仕方ないだろう。
「ちびちゃん、明日は大丈夫かい?」
ウロクがそんなことを聞いてくる。今日の私のメンタルを気にしてのことだろう。
「うん、皆のおかげで今はすごい冷静だよ。それに今ならフルパワーで戦える」
「どういうことですの?」
レーシュが疑問を投げかけてくる。モロゾフとイドハさんも首をかしげていた。それもそうだろう、今までフルパワーじゃなかったのかとなるだろうから。
「今まで一匹、というかグラスをバーレさんに貸してたんだけど、どうも、今日の朝に退去したみたいだから」
この街まで運んでくれたバーレさんはイサムもこの街で降りる都合上、帰りにバーレさんを護衛してくれる人がいないということで、グラスを貸し出していた。そして安全地帯についた時点で退去するようにと、バーレさんとグラスには伝えてあった。
実は召喚獣たちは自分たちの意思で、退去することが可能なのだ。といっても、基本従順なので、自分たちから退去することはないのだが。
「な、ならジョゼ様は今まで」
「うん、同時に使える召喚獣が一体少ない状態でやってたね」
「三体でもやべえのに四体同時に使えるのか」
二人ともすこし身を引いていた。そんなにかなぁ? まぁとはいっても、この街に来る前は三体同時が限界だったから、使い勝手に差はなかったのだが。
「そういうことなら問題はなさそうだな」
「うん」
「なら後は全力でやるのみ!」
イサムの一言にみんながうなづく。そう、誰も妥協する要素はない。あとはただ勝つのみ。
私たちはそれぞれ食事と片付けを終えて、床に就く。私はベッドに入ろうとした瞬間、ノックの音がする。
「少しいいでしょうか?」
私の部屋を訪れたのは、
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さて、いよいよ次からは、作戦開始になります。ジョゼたちは無事に作戦を完遂できるのか、ご期待ください。




