ギルドマスター
どうも、作者です。6話です。いつの間にか6話です。このまま続けたいな。
クエストを終え、帝都の門をくぐる。何かどっと疲れた。クエストそのものは簡単だったが、モンジの全力疾走で疲れた。我ながらよくしがみつけたなと思う。
だらだらと歩いていると、いつの間にかギルドに着いていた。そういえば、バンカさんからは裏口を通るように言われていた。まぁ、通常のゲートは、冒険者であふれかえっている。ちょうど夕刻で、クエストを終える時間なのだろう。あそこに入らないでいいのはありがたい。
裏口、というかここを出るときに使った扉から入る。そして、バンカさんに指定された部屋に入る。ここで待っておけばいいらしい。とりあえず椅子に腰掛ける。ちょっと高くて足が宙ぶらりんである。ちょっと寝そう。
「ジョゼさん、お待たせ致しました」
少し眠気に負けそうになっていたところに、バンカさんがやってくる。すごい早かった。
「いやむしろ早くないです?」
「あぁ、あの門には結界が張ってあるので」
なるほど、それであの出入口を指定したんだ。納得。
「それで、クエストの方はどうでしたか?」
「楽勝でした(-ω-)/」
そう言いながらフリッグ草が必要数以上に入ったバッグを机の上に得意げに置く。バンカさんは薬草の枚数を数える。
「はい、ちゃんと必要数ありますね。クエストクリアおめでとうございます、シゼルさん!」
「えへへ、ありがとうございます」
まぁ、私はひたすら草集めて、『活性』で増やしただけだが。
「それで、もう一つの隠したカバンはどうしたんですか」
「え?」
バンカさんは笑ったまま、冷ややかな声に変わった。な、何故ばれた。おかしい、確かに集めた草の中に毒草もあるから黙っとこうと思って隠した。しかし、そんな表情には出していなかったはず!? 一体何故!?
「な、何の話ですか?」
「隠しても無駄です。付き合いは短いですが、一つだけわかることがあります」
「な、なんですか?」
「シゼルさんがお喋りなことです」
???それが何故ばれる要因になるんだ!?
「クエストに出る前までのシゼルさんなら確実に茶々を入れるはずです。ですがそれがない、それはジョゼさんが口止めをしているからと推測できます。なら何か隠している可能性があります。そして、あなたは予備に渡したバッグを見せないので隠しているならそこだろう、と思っただけですよ? ですが、随分と動揺しているようですね、ジョゼさん?」
しまった、嵌められた! さっきのは、カマかけだったのか! 駄目だ、もう逃げ場は、もうない。
「しゅ、しゅみません」
「ははは、お嬢! 一瞬でばれたな!」
とりあえず、シゼルはあとでどうにか殴ってやる。
私は泣き目になりながら、バッグの中身を見せながら話す。『鑑定』スキルを見れば草の種類がわかること。『活性』スキルを使えば一つの種から草を無限に増やせること。それなら、今全種類集めれば、後で楽できるなと思ったこと。なので集めたこと。すべて話した。
「はぁ、そういうことですか。ですが、真に恐ろしいのは『活性』のほうでしたか。その能力を使えば簡単に市場を破壊できるじゃないですか!?」
「ひゃい...。え、しょうなんですか?」
「当たり前でしょう!? それを使えば素材費をなくせるうえに、希少だった植物の価値をなくせるということでしょう! そんなことになれば、商人の方々は大混乱になりますよ!?」
た、確かに。
「しゅみません」
「はぁ、ジョゼさん、そのスキル、絶対人の前で使わないでください。使うならば、一言私に相談してください」
「わ、わかりました」
「あと、毒草などはこちらで預かります! 危険ですからね。はぁ、それも含めてギルマスと話し合いですね」
「わかりました...。え? ギルマス?」
どうしてそこで、話し合いという単語が出るんだ?
「あ、すみません。伝え忘れてましたね、ギルドマスター、このギルドの一番上の人ですね、その人が戻ってきたので、貴方のことを話したんです。そしたら、ジョゼさんも含めて話し合いをしようということになりまして」
そうなのか。ギルマス、どんな人なのかわからないけど、ここまでバンカさんにはお世話になっているし、断るわけにもいかない。少し不安だが。
「わかりました」
「大丈夫ですよ、ジョゼさん。ギルマスが何か失礼なことを言ったら私が殴るので!」
バンカさんが物騒なこと言った! しかも得意げに! 何かあったこともないのに、バンカさんとの関係性が少し見える気がする。
ということで、バンカさんについていく、ちなみに予備バッグはとりあえず、そのまま没収された。ぴえん。
少し豪華で大きめの扉の前につく。バンカさんがノックし、扉を開く。先に広がっていたのは明らかに装飾に気合が入った部屋。前には、来客者との話し合い用の椅子と机。そして、その先にはいつも使ってるであろう執務用の机と椅子。しかし、使ってる人間の雑さがにじみ出ている。おそらく、その椅子に触っているいるのがギルドマスターなのだろう。
「お! 来たなバンカ!」
豪快。最初に感じたのはその印象だった。白い歯を見せた笑顔、左目の眼帯、筋骨隆々と言っていい肉体。その特徴だけ見れば、海賊の船長かドワーフだといわれて納得する姿だった。しかし、その顔は明らかに美形で、その耳はとんがっていた。そう恐らくバンカさんと同じエルフだ。
「そいつが海野ジョゼだな。野良の転生者の」
「はい、ギルドマスター。彼女がジョゼさんです」
「ど、どうも」
「おう、俺はグリム・サンバーチ。このギルドの頭だ。長い付き合いになると思うがよろしく頼む!」
グリム・サンバーチ。長い付き合いになるらしい、ギルドマスターとの初邂逅であった。
「さて、じゃあ、海野、お前の今後について話し合おうか」
「あ、その前にギルドマスター、報告が」
バンカさんが『活性』スキルについて話す。それをギルドマスターは真面目に聞いているが、だんだんよすがおかしくなり、
「だっはっは! なんだ、やばいスキルは一つじゃなかったのか!」
大爆笑した。と、思ったら落ち着いて小さく笑う。
「まぁ、ちょうどいい」
「何がちょうどいいですか! 明らかにこちらのスキルの方がまずいでしょう!」
バンカさんが私の前では見せなかった姿を見せる。きっと普段から
「まぁ、確かにやばいスキルではあるが、それに関してはこっちで管理すればいい」
「ですが」
「何、元々”俺”がこいつの面倒見るつもりだったんだ。そんなに問題はねえよ」
「あなた直々にですか。なら、確かに問題は少ないでしょうが」
「ま、お前にも関わってもらうつもりだが」
「それは、あなたに言われる前からそのつもりです」
「そうか」
バンカさんとギルドマスター。バンカさんからは扱いの雑さは感じるものの、お互いにとても信頼している感じがする。それにしても、私のこの人に面倒みられるの。バンカさんはいいけど。
「おっとすまん、完全に置いてけぼりだったな、海野」
「いえいえ、あ、さっき言いそびれたけどジョゼでいいですよ」
「そうか、ジョゼ。なら、俺のことも好きに呼んでくれたらいい」
ギルドマスターさんはすこし長い、しかし、名前よりギルドマスターの方がしっくりくるし...。よし、
「わかりました。よろしくお願いしますね、ギルマスさん」
「おう!」
この人は少し不思議な感じはするが、バンカさんも信頼してるし、信用できる気がする。
「さて、じゃあ単刀直入に聞こう! ジョゼ、あんまり冒険者業向いてないだ、ぶへ!」
「言い方ぁ!」
あ、バンカさんが殴った。
読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字・コメントお気軽にどうぞ。
ギルドマスターの登場です。ギルマスもやかましいタイプなので、シゼルの出番は控えめです。