青月教会
どうも、作者です。51話です。
調査は無事に進むんですかね?
次の日、私たちは南の貴族ダハーカの目論見を暴くため早速調査に乗り出す。レーシュとイサムは朝早くから魔獣討伐に出かけたようだ。私の方はウロクのサポートをする。
「イドハさん、ギルドの方は大丈夫なの?」
「は、はい。最近は魔獣討伐しかないので、依頼受注することがないので私の仕事がほとんどないんです」
魔獣討伐系の依頼は先出で依頼を受けるだけじゃないんだ。そういえば、昨日もこの町に来るまでに討伐した魔獣の討伐報酬の精算とかしてたな。
「そ、それに、冒険者様が来たら分かるので」
「ここにもそういう結界があるんですね」
「は、はい」
なるほど、ギルドってどこでも結界があるものなんだな。それとも、ギルマスが張ってるんだろうか?
「そ、それでサポートってここからするんですよね?」
「はい、モンジお願い」
バーレさんに貸しているグラスと、大体いつも出しているレンズとシゼルの二匹。これで今まで限界だった。しかし、この街に来るときにレベル50になったのだが、同時に四匹出せるようになった。今回の一件で分かったが、どうやらレベルが25の倍数になったときに同時に出せる召喚獣の数が増えるらしい。次はめざせ、レベル75。
「わ、す、すごいですね」
この前も使ったレンズとモンジの合わせ技他人と視界共有である。やりすぎると視界が増えすぎて頭がおかしくなるので私は目をつむる。
「ウロク、聞こえる~?」
「大丈夫だ」
おっけい、問題なさそうだ。
「と言っても、普通に街の人間に聞くの?」
「いや、聞くのは商人とか、あとは情報が集まりやすいのは教会だな」
「きょ、教会ですか」
あまりいいイメージがないのか、イドハさんはすこし苦い顔をしている。
「教会は人が集まるから、ちょっとした雑談やら悩みやらが集まるんだよ。だから情報収集には都合がいい」
教会ってそんなに人が集まるのか。帝都にもあった気はするがあまり人が集まっているイメージはない。
「カウデンの中でも南の領地ってのは特に信仰心が篤い地域なんだ。特に十年前のあの侵攻から特にな。ま、それにしたってカウデンは青月信仰が薄い地域ではあるんだがな」
そうか、信仰心暑い地域なら納得できる。そういえば、レーシュが収穫祭の時にそんなことを言ってたよう気がする。この国の人間は信仰心があまりないだとかなんだとか。
でも魔獣侵攻があったときから宗教って盛り上がるものなんだな。やっぱり嫌なことがあったら何かにすがりたくなるものなのか。
「ま、とりあえず教会に行ってみるか」
「わかった。っていうか、教会ってたしか青月の女神の教会なんだっけ」
「女神ってお前、随分と気安い呼び方するな」
しまった、自分が知ってる女神があれだから、ついそんな風に読んでしまった。
「そ、そうですね。青月教会、この世界にいる三柱の女神の人柱、青月の女神を信仰する教会です」
「信仰されてるのって青月の女神だけなの?」
「き、基本的にはそうです。複数の女神を信仰する場所もありはしますが、こと獣族たる人間の国においては青月の女神だけですね」
そうか、やはり自分たちを生んだ女神を信仰されるのが基本なのか。獣族であれば、青月の女神。ということは、
「やっぱり他の、霊族だとか、魔族だとかも自分を生んだ神を信仰してるの?」
「それがそうでもないらしいな」
「は、はい。魔族にしろ、霊族にしろ、青月の女神を信仰してる人は多いです。逆はほとんどないのですが。もちろん、ジョゼ様の言う通り、自身を生んだ女神を信仰することも多いですよ」
なんというか、緑月の女神が言っていたことが分かった気がする。最後に会ったとき、自分はあまり信仰されていないみたいなことを言っていたが、何となく納得できた。なんというか、青月の女神だけ信仰されてる率が高いらしい。
「と、とにかくそれだけ青月の女神、さまは信仰されているというわけです」
「なるほど~」
ということで教会までたどりつく。人の多い通りを通っていたら特に問題なくたどり着いた。襲われたのも周りに人がいない瞬間と言っていたし、あの時から顔を変えているから問題はなかったようだ。
教会は周りの建物に比べて比較的綺麗だった。他の建物は多少なりとも古びた雰囲気を感じさせるのに、この建物だけ異様にきれいだ。なんというかここだけ新築みたいな感じ。
建物の見た目は私がよく知る西洋の教会に似ている。というかほとんど一緒かな? やはりこの世界から来た時から思っていたが全体的に西洋チックというか、よくある転生もののファンタジー感がすさまじい。ステータスとかもそうだが、それっぽさがすごい。
ウロクは特に緊張をした様子もなくさらっと扉を開く。どうやら、人はいないらしい。ただ一人、神父ような人を除いて。
「ようこそいらっしゃいました」
「こんにちは、神父様」
「おやおや、見ない顔でございますね」
神父様と呼ばれた男の人は、いわゆる修道服を着ている。青と白の汚れ一つないものだ。神父さんは優しいそうな笑みを浮かべた初老の男性だ。でもなぜだろう、この人の表情はどことなく、いやよくわからない違和感だな。
「ええ、最近この街に来た旅の者です」
「なるほど、旅のお方でしたか。どうぞどうぞ、それでこんなに汚れていらっしゃるか。どうぞどうぞ、お休みくださいませ」
そんなに汚れて、いやこの教会と比べると確かに汚れてる気がするな。
「ありがとうございます」
なんというか、ウロクの雰囲気がいつもと違う、いつもの飄々とした感じがない。むしろどこか、好青年のような雰囲気を感じる。情報屋としてのスキルだろうか。
「それで、ここに来たのは祈るためでしょうか?」
「いえ、少しこの街の話を伺いたくて」
それって真面目に言っていいのか? 実際神父の方も少し困ったように笑っている。
「ははは、素直なお方だ。だが、よろしいでしょう。ですが一つ交換条件を出してよろしいかな?」
「わかりました、私にできる範囲なら」
ギブアンドテイクというやつだ。ウロクはこうなることを見越してたのかな。
「ええ、それでしたら最近よく訪れる商人殿がいられるのですが、そのお方を手伝っていただけないでしょうか」
「最近訪れる商人?」
「ええ、そのお方は何でも、領主様より頼まれごとをされたそうなのですが、うまく達成できるか不安そうなのです。それに、人手が足りないそうで、彼のことを手伝っていただけないでしょうか」
領主様、つまりダハーカ家のことだ。そこからの頼まれごとということは、早速情報を得られるチャンスなのでは? ただあまりに都合がいいような気もする。
「わかりました、良いですよ」
「本当ですか、それは助かります。それでしたら、この街のことについてお教えしましょう」
そこから、神父さんは色々と語ってくれた。最近の町の悩みや、情勢なんかを色々と。
「やはり、一番の悩みの種は魔獣による被害でしょうな。この前も魔獣に襲われた人がこの教会に運び込まれましてね」
「ほう、神父様は治癒魔法が使えるのですね」
「ええ、これでも神の真との端くれでございますから、人を助けるすべの一つや二つは持っておかなければ」
「あと変わったことと言えば、最近異邦の商人の方々が多いですね」
異邦の、ということはこの国の人間じゃない商人ってことだよね。
「それはどうして?」
「さて、それは分かりませんが、領主のダハーカ様が最近よくパーティを催していますから、それが原因かもしれません」
「パーティですか。それは豪華でいい、ですがどんなパーティなのでしょう?」
「そうですね、確か、何か学者様を紹介しているとのこと」
学者? 何の学者だろう。紹介しているというくらいだから、何かすごい人っぽいけど。
「どのようなお方なのですか?」
「それは私にも」
うーん情報がないな。それも調べた方がよさそうだ。
「神父様、貴重なお話をしていただきありがとうございました」
「いえいえ、ぜひ今度は祈りに来てくださいませ。その時はもう少し身綺麗にしていただけると嬉しいですな」
「すいません、祈りを捧げるときはそうします」
「あ、こちらは先ほど申し上げた商人の情報が書いた紙です」
「はい、約束は果たします」
神父さんはその言葉に優しくうなづく。ウロクは教会を後にする。とりあえず、かなり貴重な情報を聞けた。
「結構、良い情報聞けたね」
「そう、ですね」
イドハさんの雰囲気もまた違うような。どこかおびえている気もする。でも、確かに神父さんの雰囲気は優しそうだが、すこし違和感があったようにも思える。
「ちびちゃん」
「なに?」
「あの神父には気を付けた方がいいかもしれない」
「怪しいところでもあった?」
「いや、ただの勘だ」
そういう割に、ウロクの顔には冷や汗がにじんでいる。だが、何か違和感があったのは間違いなさそうだ。気を付けておこう。
「エメル、どうしてあの人を逃がしたの? ”穢れている”のに」
「何、異種族のにおいがついたものなど、現代においては珍しくないとも」
「そう、いつでも言って、私が、踏みつぶすから」
「必要ありませんよ、彼は今のところ、敵対者ではないですし。彼女の計画を邪魔するかもれませんが、それはそれでよろしい。今回のことは些事です」
「そう、でも」
「いいんですよ。片方のゴミが消えてくれればもう一人のゴミも消えてくれるでしょう。何、利害の一致というやつです」
「貴方がそういうなら、わかった」
「ええ、私はしばしの休暇を害虫駆除には使いたくないですから」
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