ダマ―ヴギルドの受付嬢
どうも、作者です。48話です。
前回の続きです。
「で、ではここに記入してください~」
冒険者とひと悶着あったものの、とりあえず、”移動報告”というものをする。私より小さくて猫背で少しだらしなそうな受付嬢のお姉さんが書類を出してくれる。
「わかった」
イサムはさらさらと紙に記入していく。それにしても、言葉にしろ文字にしろ、頭は悪いっぽいのに言語関係は普通にできるんだよな。つい『翻訳』スキルで忘れがちだが、この世界の言語は地域によって全然違うっぽい。特に種族が違うと言葉も文字も全然違うそうだ。
ギルマスももとは普通のエルフだから、獣族の言葉を覚えるのに苦労したと言っていた。そう考えると、普通にこの国の言語を使えているイサムはすごいのではないだろうか。なんて考えていると、書き終えたらしい。
「これでいいか?」
「は、はい確認しますねぇ~、ねぇええええええええ! がふ!」
「お、おねーさーん!?」
お姉さんが、紙に記入された(恐らく)ランクを見てぶっ倒れた。しかも泡吹いて。
「ど、どうしたのだ?」
「いや予想はつくけど、とりあえずどこかちゃんとしたところに寝かせ」
「すいません、帝都のギルドからの書簡を届けに、ってジョゼさん!? いやどういう状況なんですの!?」
何故かレーシュがあらわれる。よりによって、倒れた男と女一人を運ぼうとした状況をみられながら。もうめちゃくちゃ。
とりあえず、ギルドの裏にあった職員用の休憩室のようなところにお邪魔させてもらい、倒れた人間たちを寝かせる。男の方はついでであるが。
「なるほど、そちらの男性は絡んできたのを返り討ちに、女性の方は灰氷さまのランクを見て気絶したと、なんというか、すごい状況ですわね」
「うむ! 俺もなぜこうなったかわからん!」
レーシュの方はイサムの存在に驚く気力がないようだ。というか、
「なんで、レーシュがここに?」
「まぁ、色々とありましてね、そもそもジョゼさんがこうなったのは私のせいですし、さらに言えば、今の状況も私のせいですわね」
レーシュ曰く、そもそもこの国の王様に私の存在をばらしたのはレーシュだということ。王様に詰められて言うしかなかったらしい。そして、その王様に命令されて西の貴族との話し合いに言っていたらしい。内容は守秘義務があるから答えてくれなかった。
本当ならそこで帝都に帰る予定だったらしいのだが、王によって私が南の貴族の調査に行ったことをギルドからの書簡と、王からの書簡で同時に知らされて、帝都行きの馬車の進路を変更してこの町に直行したらしい。
「ああ、あっちからの協力者ってレーシュのことか」
「私だけではないですが、そういうことですわ。そして最初の任務がこのギルドにSSランクの冒険者が来ることを先に報告するという任務だったのですが」
そしたらちょっとだけ私たちの方が先に来てしまったということか。なるほど、先にレーシュがついていればもっとましな結果にはなっていただろう。
「本当に申し訳ありませんわ」
レーシュが今までにない落ち込みようをしていた。まぁ、とうの私が気にしていないものの、友達の秘密をばらしてしまい、その上その友達のことを手伝おうとしたら、段取りもうまくいかないとなっては落ち込んでしまうのも無理ないが。
「別に私は気にしてないよ」
「私が気にするんですわ」
レーシュはずいぶんと気を落としているようだが、私がいつも通りにしていれば、そのうち調子が戻るだろう。
「んんむ、ふあ?」
「起きたか」
「んぎゃああああ!? あ、も、申し訳ありませえええん!?」
受付嬢のお姉さんは起きてすぐ飛び上がると、そのまま綺麗にとび華麗に土下座に移行していた。今のが協議だったら百点の札を掲げてたね。今日私なんか謝罪を受けてるんだろう。
「まぁまぁ、落ち着いて、深呼吸」
「は、はい、すぅうううううううううう、う!?」
「吐いてくださいまし!?」
うん、落ち着くまで時間がかかりそうだ。
「すいませぇん、落ち着きました」
「よ、良かったですわ」
「それで~、そちらの方は?」
あ、まずい。
「申し訳ありませんわ、わたくしは、」
「まって、レーシュ、また混乱しちゃう」
先ほどからの情報が多いのだ。このお姉さんはまず間違いなくまたパンクするだろう。多分一度に大量の情報をたたきつけるとダメなタイプだ。ついでに、かなり弱気だが相手の身分が高いと縮こまるタイプだ。流石に避けねば。
「た、確かに」
「とりあえずこの人は身分が高いひと」
「み、身分が高いですか?」
「とりあえず、この情報だけ覚えておいて、イサムの方について話そう」
とりあえず、少しずつ情報をかみ砕かせるのだ。そうした方がいい。
「わ、わかりました」
ということで、まずイサムと私がこの町に来た理由について話す。その時点で少し丸眼鏡の奥の目がぐるぐるしていたが、ゆっくりと話すことでなんとか情報を含めさせる。ちなみに男の方は聞かれるとまずいので、追い出しておいた。
「つ、つまり帝都のギルドマスター様の依頼、という訳ですね」
「大体そう」
なんとかそこまでの情報は飲み込んだらしい。
「な、なるほど、確かにこの町を統治している貴族様は最近の動きは怪しいですし、冒険者の動きを抑制しているのはそのためですか。何をしているかというのは分かりませんが、最近の依頼が魔獣退治に偏っているのも関係がありそうですね。そして、この件にわざわざギルドマスター様が首を突っ込むにしては少し対応が早すぎますね、ギルドは基本何か起こってからでないと対処できませんし。となると、この件を依頼したのは他の、しいて言うなら、東か北の領主様か、王様か」
「ちょ、ちょっと落ち着いて」
「ははは! 何を言ってるかさっぱりだ!」
情報を飲み込んだと思えば、今度は思いっきり手に入れた情報から推理し始めた、なんというか忙しい人!
「あ、すいませぇん、か、考え込むと周りが見えなくなる性質で」
またおどおどし始めた。本当に忙しい人だな。ただ、そこまで推測できたのなら、あとの話がやりやすくて助かる。
「さっき言ってたけど、これは王様からの依頼だよ。そして」
「私がその王から、彼女たちに協力するよう言われた者ですわ」
「な、なるほど」
というか、成り行きで喋ってしまったが話してよかったんだっけ?
「あれ、これって言っちゃ駄目なんだっけ?」
「いえ、問題ないと思いますよ。ギルドマスターから、そこのギルド管理者に話しておくようにと言うのは書いてありましたので」
ギルド管理者? あれ? このおねえさん、もしかしてただの受付嬢じゃない?
「この人ってギルド管理者だったの?」
「あ、はい、このセントラルフラッグ、ダマ―ヴ支部の管理者をやらせていただいているイドハと申します」
「思ったよりすごい人だった」
私より小さく、猫背でだらしなさそうな丸眼鏡お姉さんは私より偉い人だった。
「まぁ、そもそも今は私しかいないのですが」
「え、なんで?」
「まぁ、冒険者の方々はあの態度で、町の人たちからの評判はすこぶる悪く、領主様からの扱いは散々ですので、ストレスで皆様やめていきますか、他のギルドに移ってもらいましたので。私も転属する予定でしたがそうもいかず」
な、なんというか思ったよりすさまじい状況になっている。大丈夫なの子のお姉さん。
「それ、ギルドマスター様は知っておられるんですの」
「途中までは」
「「途中までは!?」」
「は、はい、報告するのも忍びなくなってしひゃったので、二、三人になったあたりから報告していません」
いや、もう一人なのだが、大丈夫なのこのお姉さん。
「それは色々と危ないでしょ」
「あ、いえ、冒険者の皆さんはなんだかんだで攻撃はしてきませんし、というかこれでもそこそこ強ひので」
? 元冒険者とかだったのかな。というかなんでお姉さんの事情を聴いてるんだ私たちは。
「あ、それで私たちの依頼の件だけど」
「そ、そうでしたね。も、もちろん、ギルドマスタ―様からの依頼ですから、こちらでも協力させていただきまひゅ」
いや、普通に黙秘してくれればいいだけなんだけど。いやでも、お姉さん、頭は回りそうだし、手伝ってもらってもいいかもしれない。町の事情には詳しいだろうし。まぁ、いいか。
「あ、はい、よろしくお願いします」
レーシュは大丈夫か不安な顔をしていたし、イサムの方はさっぱり何が起こっているわからない顔をしているが、何故かギルドのお姉さんの協力が得られた。うん、まだ何も進展していないが、拠点ができただけ良しとしよう。とりあえず、ここから依頼達成のため頑張ろう。
でも、できればお姉さんの方も手伝ってあげよう。
読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。
こんな行き当たりばったりで大丈夫なんでしょうか。廊下に放置された冒険者の運命はいかに。




