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賢者の話し合い

どうも、前話で予約投稿をするのを忘れた作者です。

まさか、五時間もたたずにもう一話掲載することになるとは。

冒険者業を引退してからもう八年、いつの間にかギルドマスターという地位に慣れ切った今日この頃、俺はとある場所に来ていた。この部屋、いやこの()の主の趣味によって素朴な造りになっているが、それと同時に並大抵の人間では気づくことさえできない緻密な造りの結界が張ってある。俺でどうにか時間をかけて破れるものだ。


そんなことを考えながら、出された慣れない茶に口をつける。すると、扉が開く。その男はたった一人でさらっと入り、ごく当たり前のように椅子に座る。それは本来あり得ないことだった。何せこの男はこの城の、いやこの()の主なのだから。


「呼び出しておいて遅刻とは、随分と態度がでけぇじゃないか」


「当たり前だ、俺はこの国の王だぞ」


「前の時はもう少しまじめだったと思うがね」


「それは前の王の話だろ」


「・・・そういやそうだな」


時間の流れとは残酷なものだね。人が変わるほどの時間を忘れがちだな俺は。この国の王、もといドミカ・リード・カウデンは少し、茶を口に飲んだ後話始める。


「さて、ギルマス殿を呼び出した理由だが、何となくわかってるだろ」


「さて、何のことだか」


俺は少しとぼける。こういうのは認めてしまった時点で負けだ。


「わかりやすい情報二つもだしといて、今更とぼけるとは」


「おいおい、何の話だか、少なくとも俺主導だったのはアジト襲撃の作戦だけだよ」


そう、パレードの件もアジト襲撃でお嬢様が参加したのも本人たちの意思だ。俺は()()()()()()()だけだ。


「なるほどね、その情報を俺が偶然理解しちまっただけか」


「そういうことだ」


さて、帝様のことだ。恐らく俺がそんな情報を提供した理由は分かっているだろう。となると、恐らく今回の呼び出しは何かお願い事だろ。


「まぁいい、本題の話をしようか」


「本題、一体どんな相談事だい?」


「概要だけ言えば、南の貴族の対処だ」


南の貴族、この前、ウロクがその情報を持ってきてたな。最近きな臭いとかだったか。


「南の貴族っていうのは、厳密にはどこだ?」


「まぁ、いくつかの貴族どもが共謀してるが、ダハーカ家だ。あそこが主導だな」


ダハーカ、南の貴族の中では一番大きい貴族だ。この国ができたころからある伝統的な貴族。そして、反帝派としても有名なところだ。


「相変わらず、戦争が好きだねぇ、あそこは。双帝時代の時から戦争ばっかりだ。だが、今やるっていうのはおかしくねぇか?」


「あぁ、俺もここ最近まではあんまり信じちゃいなかったんだがね。まぁ、種があれば当主のすり替えぐらいはやっとこうぐらいだったんだが」


それはもう、十分警戒してる相手への行いだと思うが、少なくとも対処した方がいいくらいには認識してたわけだ。


「まだ、魔獣侵攻の傷が十分癒えてないわけだ。南の貴族どもが弱体化したのだけはあの戦いの功名かね」


「それなのに、何か今回の決断の材料なんだ」


「一番でかいのは、密偵が殺されたこと。今から大体二か月前だな。密偵なもんだから、告発もできない」


「それはまた大胆だな」


密偵、王の隠し玉。リードとしても密偵が殺されたと騒げば、逆に貴族との信頼は瓦解するだろうし、逆に貴族からからすれば密偵をさらそうにも、その密偵が口を割らなければ、王がやったことだという証拠が挙がらない。大胆ではあるが、


「合理的な判断ではある。だが、それと同時に何かやってることの裏返しではある。何より気づかれたっていうのがまずおかしなことだ」


「ずいぶんと信頼してるんだな」


「まぁ、長いこと使ってた人間てのもあるが、ここ六年ばれた跡がない」


なるほどねぇ、それが唐突にばれたんじゃ流石に疑いもするか。それにしてもこのタイミングか。準備が整ったってわけでもないな。六年間密偵が野放しだったうえでこの王が動かなかったことを考えるに、今までの動きに怪しい部分がなかったってことだろう。


「んでもう一つ、こっちがお前に頼む理由の一つでもあるんだが」


俺に頼む理由の一つでもあるか、一体どんな理由だ。俺がダハーカと関わった記憶はない。相当前にもめたことはあるが、それはもう関係ないことではある。いやまて、あの時もめたのは確か、


()()だよ。この国に運び込ませてやがる」


「まてまて、この国では奴隷が禁止のはずだろ」


俺はそこで少し嫌悪感をあらわにしてしまう。こういうのは上に立つものとしてあんまりよくないのだが。流石に無視できる案件ではなかった。


「あくまで禁止してるのは売買だけだ。受け入れなら抵触しない」


そういうことか、思い出した。ダハーカと言えば有名な奴隷売買の一家だ。奴隷商を抱え込んで富を得ていた。その一件でもめた。今思い出しても吐き気がするな。確か半帝派になった大元の理由も奴隷売買が禁止されたことが理由だったか。


「お前としては、気色が悪い話だろうが、こっちとしては外部でやる分には何も手が出せなくてな。それに今まで奴隷を持ち込んでたわけでもない。今回が初めてだ」


つまり、奴隷売買が禁止された後も、周辺諸国で奴隷商を使ってたわけか。俺が今まで知らなかったのは恐らく、名義を変えていたからだろう。相当丁寧に隠蔽してやがったな。


「ここ最近ダハーカが余計俺に対して反発してたのはお前たちと仲良くしてたのもあるんだろうよ」


周辺の奴隷商をこっそりお掃除してたのは伝わってたわけだ。原因は俺たちにもあるってわけか。


「まぁいい、国のことに関わるのはルールに反するから、隠してた件に関してはいい。だが、今更奴隷を引き入れてどうするつもりだ。戦争にはつかえねぇだろ」


奴隷を戦争で使うってのはいろんな意味できつい。一番に士気が上がらない上、戦力としては弱い。かといって使える戦力にするには一から育てないといけない以上金がかかりすぎる。つまるところ、それでは費用対効果が薄い。奴隷を人として扱ってくれるお人好ししかやらないし、それ以外の人間がやったところで、反逆の可能性が高くなる。いろんな意味で戦力と数えるには弱い。


「俺が知りたいのはそこだ。何に使うか、それが判然としない」


「つまり、今回知りたいのはそこか」


少なくとも、ずっと奴隷売買をしてきた連中だ。まともな理由ではないだろう。


「ああ、悪事を暴くこと、できれば解決までってのが一つ。もう一つは、暗殺の手伝いだ」


「さっきのすり替えか」


まさしくこの一件こそ、今の当主を切り捨てる種、という訳だ。こっちとしてはこういうのに関わりのはよろしくない。


「それはギルドとして受け入れられない」


リードはその一言を待っていたと言わんばかりににやりと笑う。


「おいおい、俺がいつ、ギルドに依頼すると言ったよ」


俺は頭を抱える。そういうことか。


()()()に任せろってか」


「あぁ、ギルドは関われないだろうが、ギルドの人間が関わることはある。何せギルドの人間なんて無数だ。あれだけ冒険者がいるんだからな、そのギルドの関係者が関わったところでその人間の素性が、本当は薬屋だろうが関係ないわけだ」


「もちろん、ただとは言わんよ。お前に対しては俺が直々に俺以外の人間に対する情報の隠蔽を許可する」


つまり堂々とこの国に対して隠し事をしていいという訳だ。王が一言、この件に関して追求する必要はないと言ってくれる。それは絶大だろうし、間接的にジョゼの存在を他の人間に知らせることはないという保証でもあるわけだ。


「そして、例の薬屋には貸し一つだ」


「おいおい、それは一国の王やっていい内容じゃないだろ」


それはつまり、この国のトップに一つ、何でもお願いを聞かせられる権利と言っていい。だが確かに、ジョゼなら悪用はしなさそうだが。


「お嬢様にどこまで聞いたんだ」


「はっはっは! それもあるが、あの真狼をあそこまでこき使える時点で信頼に値するな」


「おい待て、なんでそれを知ってやがる」


ジョゼの家に灰氷がいるのを知っている人間はほとんどいない、俺とバンカ、ウロク、バーレだけだ。バーレなら言っても仕方ないが、バーレが関わってたことまでは知らないだろう。なら何故。


「いや俺も流石に予想外だった。偶然だよ」


愉快そうにリードは笑う。はぁ、やはりこの男に隠し事をするものではないな。半分思惑通り、半分は良いように使われてしまった感じである。


「それで受けてくれるかい?」


「俺自身としては受ける。ただし、ジョゼが受けてくれるかどうかは分からないぞ」


俺としては、奴隷売買をしてるやつを許すつもりはない。


「それでいい、だが俺の思ってる通りなら、お前が受けさせるだろう」


よくわかってらっしゃる。俺の目的はまさしく王によるジョゼの保護、今回の件はこの上ない好機だ。こうも見透かされると、腹が立ってくるな。


「一ついいか? 暗殺者はもう決めているのか」


「あぁ、信頼を置ける奴を一人雇ってある。そっちが承諾さえしてくれれば、サポートもさせるつもりだ。何、嬢ちゃんとは相性はともかく、多少話は合うだろう」


その言い方、いや追及はしないでおこう。性格はともかく、この男は信頼できる。


「そうか、ではジョゼからは俺が話を通す」


「ああ、頼む」


これは、ジョゼに面倒ごとを押し付けることになっちまったな。

読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。

さて、本格的に今回の章の目的がわかってきたわけですが、ジョゼは無事に乗り切れるでしょうか。今のところ本人は何も知りませんが。

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