帝都の噂
どうも、作者です。38話です。
ある種の閑話のような回です。
赤月、初月十八日、特に変わり映えしない日が続いていた。今日も今日とて、客が来ないのをいいことにだらだらしていた。といっても、バンカさんが来る回数も多いので、掃除は欠かしていないが。
今日はレーシュも鍛錬に集中したいと言っていて来ないから余計退屈である。何もすることもないしどうしようかな。
「おう、邪魔するぜ」
「なんだ、ウロクか」
「俺じゃ悪いか」
ウロクは大体金欠で暇なときはここに来てだべっている。私しかいないときは私とシゼルと。バーレさんが来ているときはバーレさんとよく話している。年的には、ウロクは確か28くらいでバーレさんとは結構年が離れているのだが、結構同じ男だからか話が合うらしい。結構下世話な話もしているが。
「まぁいいや、今日も金欠で来たの?」
「おう、暇だから来た」
いつも通りである。
「どうせちびちゃんも暇だろ?」
「そうだけどさぁ」
「俺も暇だぞ!」
一応薬屋の鍛錬とかやっているが、別にやらなくてもいいので、正直最近はだれ気味である。なので暇度が加速していた。そういう意味で店に来てくれる皆には感謝しているが。
「なんか面白い話題ないの?」
「面白い話題ねぇ、嬢ちゃん達が興味あるものってなるとどうだろうな」
情報屋だから、知っている情報は多いのだろう。しかし、そういうのは大抵、私にとっては全く意味のない話題だ。つまるところ興味がわかない。
「あぁ、ギルドでよく話されている話題ならあるな」
「何々」
存外ギルドの噂などはバンカさんから聞かない。バンカさんは仕事中は基本集中モードに入っているので、そういう噂話は耳から抜けているらしいし、本当のことだったら、気密性もあるものが多いので、私にも話さないのだ。
「なんでも、また新しいSSランク冒険者が来るって話だ」
「レイドさん以外の?」
「そうそう、本当かどうかは知らんがな」
レイドさんの時も思ったが、世界的に見てもかなり大きい都市らしい帝都でもSSランク冒険者が来るというのはやはり一大イベントらしい。
「SSランク冒険者ってやっぱすごいんだよね」
「そりゃそうだ、レイドが来た時だって、結構な大騒ぎだったんだぞ」
ここに引きこもっている私には関係のない話だったから、じゃない、レイドさんが来た日って私が誘拐された日か。そんなの知らないはずだ。
「SSランク冒険者ってどれくらいいるの?」
「現状五人だったはずだ。まぁ、引退者含めればもっといるだろうがな、ギルマスとか」
あ、やっぱりギルマスもSSランクだったのか。となると、勇者パーティは全員SSランクなのだろうか?
「五人って少ないのか?」
シゼルが聞く。私としても多いのか少ないのかわかんないや。
「さぁ、俺もそこまで詳しくは知らん。ただ、帝都だけでも、冒険者数は千人は越えてて、帝国全土だと万は越えたはずだから、世界全体だと数十万単位になりそうだしその中の五人とかじゃないか?」
本当に狭き門じゃないか、あれ? レイドさんってもしかして私が思った以上にすごい人なのか? となると、確かに大騒ぎするのもわかる気がするな。ようは、私の世界だったらオリンピックで金メダル取った人が来るようなものか。それはすごいな。
「鎧の人すごいな」
「だから、初めてここで会ったときめちゃくちゃビビったわ」
そりゃ驚く。普通の店に入ったら、金メダリストが普通に店員とだべってたとか、普通にビビりますわ。
「それで、レイドさんクラスが数日と経たずに来ると」
「ま、噂だがな」
「どんな人かぐらいは見てみたいなぁ」
レイドさんいがいのSSランク冒険者ってどんな感じなんだろう。レイドさんは真面目!って感じだったけど他の人はどんな感じなんだろう。
「あまり、こっちとしては騒がれるのはよろしくないですけどね」
「おーう、バンカじゃん」
バンカさんがやってきた。今日は休みらしい。
「私達ギルドとしては、あまりそういう噂が広まるとやることが増えて大変なんですけどね」
バンカさんがため息をつきながら、出した椅子に座る。確かにその冒険者を一目見ようとギルドに押しけるのか、それは大変そうだ。依頼を発注する人や完了報告する人が受付に行くのも大変そうだ。
「じゃあ、他の噂を広めよう」
「いやぁ、これ以上の面白そうな噂なんてないだろ」
「俺の最近の薬事情とかどうだ!」
「私としてはちょっと気になりますけど、そもそも噂じゃなくて本当の話では?」
「確かに!」
私としても、シゼルは気が付いたら新しい薬を作ってるからちょっと聞きたい。
「ウロク、他に何かないんですか?」
「他か、ちびちゃんは興味なさそうだが、南側の貴族の動きがきな臭いって話なら結構出てるな」
政治周りの話は本当に興味がない。私に影響があるならまだしも、大抵こういうのは関係ないのだ。ギルドにかかわるならまだ聞いた方がいい気もしなくもなくはない。
でも、きな臭いって話だけだと、あまりに曖昧だから少しだけ中身が気になってしまうな。
「きな臭いですか、一体どのようにきな臭いんですか」
「あくまで噂だから、中身はばらばらだよ。国外の商人をこっそり中にいれたとか、帝都周りの地形を調べてるだとか、ま、そんな感じだよ」
「つまり、王に対する反乱の噂ですか」
確かにそれはきな臭いな。帝国に対する反乱、それだと私も結構まずいか?
「信憑性はどこまで」
「正直、今の情報じゃ、本当に噂程度だよ。それに反乱を成功したとしても致命傷だろうよ」
「それもそうですね」
「どうして致命傷になるの?」
そりゃ国家転覆なんてしでかしたらそれはやばいけど、それと同時に権力は手に入るから、勝てる算段があるならかなり大きな傷ができても補填できそう。素人の考えだから何とも言えないが。
「今はまだ、どこも傷があるからな、それを広げることになっちまう」
「傷?」
バンカさんが説明してくれた。何でも今から十年くらい前に、大きな災害があったらしい。その名も魔獣侵攻、この大陸の隣側にある大きなダンジョンから大量の魔獣があふれ出し、この大陸に攻め入ったという。その災害によってギルドも、この国を含めた国家たち、そしてその国の貴族たちに至るまでとにかく被害があったらしい。
「そんなことがあったんだ」
「実際、国が一つ消えるほどのものですから」
「ま、そんな災害の傷がまだ言えきってねぇ訳だ。特に南の地域は、その災害の被害が大きかった場所だからな。だから今反乱起こしたとしても、できて共倒れだろうな」
確かに、それにしても、十年たっても傷が癒えないほどの災害って、想像できないな。それなら確かに今やると無闇な特攻になるという訳か。それは確かに厳しいか。
「あ~、ただ一つ本当っぽい話がある」
「なんですか?」
「どうも、南の貴族にひっそりと人が一人入ったって話がある」
「人が?」
「ああ、素性がわからねぇ人間が一人な」
「誰かわからないというのはよくあるんじゃないの?」
私もそうだが、別に帝都に入るならともかく、地方の貴族の領地に入る人ぐらいだったら、素性がわからない人間なんてかなりいそうなものだが。
「ああ、そんな話はいくらでもあるが、今回はどうも違うな」
「貴族の手が入っている、というか招かれたといった感じですか」
「そういうこった」
えーと、つまり貴族が招待して、その土地に入った人がいて、でもどんな人間かがわからないってことか。確かに、貴族がわざわざ招き入れるような人ならそれなりにすごい人物なんだろう。それの素性が全く分からないというのは少し恐ろしいかも。
「まぁ、別にこれも、珍しい話ってわけじゃないが、他の噂と合わせると、何かしてる可能性はあるかもしれねぇ」
「うーん、とはいえ貴族間の話となると、ギルドとしては特に介入する余地はなさそうですね」
つまり、私にとって全く持って関係ない話だ。明日には忘れてそうである。
読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。
まぁ、今回の話はジョゼには関係なさそうな雑談ですね(煽り)。




