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別れ、それでもいつも通りに

どうも、作者です。37話です。

今回はあの冒険者とのお別れです。

アジト襲撃から数日、特に何かあったわけでもなくいつも通り過ごしていた。といっても、町の方は少し騒がしい。それはそうだろう、急にマフィアの一部地域から、ごっそりマフィアが減ったしまったのだから。といっても、あと数日もすれば他のエリアを縄張りにしているマフィアが入ってくるだろうとのことだが。


それでも、他の地域よりも安全にはなるのではないか、ということらしい。幹部であったクヤハは違法薬物を売るのが主要産業で、他のマフィアより悪質だったらしく、単純に治安が良くなったのでとにかくいい影響が大きいとかなんとか。


まぁ、私としても、私のスキルのことを知っている人間がいなくなったおかげで、平穏に暮らせそうである。何も憂うことのない人生、楽だね。平穏で変わりばえしない日常が戻ってきたのだ。


「ジョゼさん」


レイドさんが話しかけてくる。もしこの日常で変わることがあれば、それはきっとレイドさんがらみだ。


「ここから離れる日が決まりました」


「そうですか」


そう、レイドさんは世界中を回る冒険者、帝都に用がなくなれば離れるのは必然だった。


「今回の件、ありがとうございました」


「いえ、私も久々の穏やかな時間を過ごせました。ジョゼさんと出会えてよかったです」


それなら良かった。私もレイドさんと出会えてよかった。元々私が原因で起こった一件に巻き込んだのに快く協力してくれて、こんなに親しくなれたのはうれしかった。


「寂しくなるな」


「そうですね、シゼルさんもお世話になりました」


「おうよ!」


実際二人はよく話していたから、シゼルの方が私よりも寂しいかもしれない。黒い靄と最強のぼ上権者なんて、中々変な組み合わせのはずなんだけど、もう見慣れてしまった。


「そうだ、俺からもプレゼントだぜ! 餞別ってやつだ! お嬢、空瓶くれ!」


私も空瓶を何本か取り出す。それにしても、シゼルがプレゼントとは、中々に気が利く。というか私何も用意してないや。旅立つまでに用意しとこ。


シゼルは、空瓶に何かを注いでいる。私はシゼルに言われるまま、三本ほどに液体を注いでいった。


「これは...」


「こっちの二本は発光薬だね、この一本は何だ?」


私も知らない薬だった。『鑑定』しよ。


無名のポーション:未だ名前が付けられていないポーション、生成の獣特製。致命傷でも全快にする。魔力も大きく回復する。


「え? これ、回復薬としては最強なのでは? 致命傷も全快って?」


「おう! 俺が今作れる薬で一番効果が強い回復薬だ! 大量のフリッグ草とバルド草を使うから、効率悪いけどな!」


「そんな貴重なものを、いいんですか?」


「おう!」


「まぁ、最強の冒険者にふさわしいポーションでしょ。発光薬も洞窟とかで役に立つと思うし」


「ありがとうございます。私の方こそ、何か渡せればいいのですが」


「いいよ、そもそも私にとっては命の恩人なんだから」


まぁ、薬を作ったのも渡したのもシゼルだが。


「それで、いつ出発するの?」


「明日の夜には」


「結構早い」


「唐突ですいません」


レイドさんはまぁ、忙しい身なのだろう。よく三か月もいてくれたな。まぁ、冒険者自体かなり自由な職業だし、大丈夫だったんだろうが。


私たちは知り合いを呼んで、皆でお別れ会代わりに、食事をする。バンカさんとギルマスは慣れているのかいつも通りに、バーレさんやウロクは互いに笑いあって、一番名残惜しそうに別れの言葉をだしたのは、レーシュだった。


「寂しくなりますわ」


「また来ますよ」


「それでも、名残惜しいです」


「なら、そうですね」


レイドさんは、少し考えた後、腰から何かを取り出した。


「それでは、これを」


「これは」


レーシュに渡されたのは、七十センチくらいの剣だった。


「予備で持っているショートソードです。といっても、もう十年以上も持っていたものですが」


「よ、よろしいんですか? そんな大切なものを」


「いいんです。ここ最近は使う機会がなく、意味もないまま手入れしていたものですから。あなたならきっと正しく使ってくれるでしょう」


「レイド様」


レーシュは手に持った剣を見つめる。少しした後、何かを覚悟をしたようにレイドさんの方を向く。


「えぇ、わたくし、この剣に誓いますわ。あなたのように正しく、強く、立派な騎士になると」


「はい、頑張ってください」


「ありがとうございます」


レーシュは微笑む。顔は見えないが、レイドさんも微笑んでいるのだろう。


「いいもんだね、憧れがいるっていうのは」


「ウロクにはいないの?」


「日陰者には関係ないさ」


別に日陰者に憧れの人がいてもいいと思うけど、ギャングスターとか。


「あ、そうだ、ちびジョゼよ」


「そのあだ名どうにかなんない?」


「うーん、どうにもならん」


一瞬考えたふりした後に、軽く笑いながら言われる。普通にむかつくが、そのうち慣れるか。


「で、どうしたの」


「実はな、お前の隣に住むことになった」


「へー、え、隣?」


「おう、俺も結局ずーっと元仲間に追い回されててな、主にお前の秘密の件で。別に逃げるのは構わんのだが、四六時中ってのはちょいときつくてね。ギルドマスターに相談したら、この裏道に住めばいいって言われたわけよ」


なるほど、結局ずっと追いかけまわされているのか。


「町から出ないの?」


「ま、それでもいいんだけどな、俺は結局帝都が好きなんだよ。それに、まだあのお姉さんには、声かけられてないからな!」


あの日のあれ、まだあきらめてなかったのか。しかもまだ声かけられてないのかよ。


「ま、そういうことだから。お隣さんとしてよろしく頼む」


「というかこの道に住むってことはもしかして」


「あぁ、半分強引にだが、ギルドに所属することになった。情報屋としてな。自分で言うのもなんだが、結局この帝都の情報に関しちゃ、俺よりうまく集められる人間もいねえしな。ギルマスにしてもちょうどいい駒なんだろ」


「おう、そうだ! なんだかんだ優秀だし、近くにいた方が万一にも対処しやすいからな!」


酒を飲んでいるためか、少しテンションが高いギルマスはそう言った。


ギルマス的にも、私の秘密を知っている人間を自分の手元に置けて安心という訳だ。つまり、私的にはある意味で同僚になるという訳だ。


「じゃあ、これからもよろしく、ってことかな?」


「ま、そうなるな、お前も何かあったら頼ってくれていいぞ」


出会いは最悪だったはずなのに、いつの間にか馴染んでしまったな。今回の一件がなければ、きっと関わることもなかっただろうに。


「それに、バンカ殿もよろしくな」


「はぁ、元マフィアがギルドにとは、私としては少し不安ですが。ギルマスとジョゼさんが信頼している以上、私としては信用せざる終えないですね」


バンカさんから見て、私はウロクを信頼しているように見えるのか。あながち間違いでもないけど。クヤハを襲撃の件の時点であまり疑念はなかった。


「こう見えても、義理堅い方でね」


でも、半分ぐらいはギルマスに枷をつけられてるからな気がするが。


「はぁ、よろしくお願いします」


宴の時は、バーレさん含めて三人仲良く泥酔していたから、案外心配はない組み合わせな気がする。仕事時のウロクは案外頼れるし。


皆で飲んで食べて、いつの間にか夜も更けていた。私はみんなの笑い声を聞きながら眠りについていた。





「ジョゼさん」


「ん、レイドさん」


どうやら起こされたのは私だけらしい。まぁ、皆とは別れをすましているしいいのだろう。


「そろそろ行きます」


少し名残惜しいけど、別に今生の別れではないのだ。帝都で仕事をすることがあったら、また来るだろう。だからきっと、引き留める必要もない。


「じゃあ、またね」


「はい、また」


「またな!」


レイドさんは、頭を下げたあと、歩き出す。


「あ、レイドさん」


「どうしましたか?」


そういえば、結局見れていない。


「顔、見せてよ」


無言で兜を取るレイドさん。


「これでいいですか」


「なんだ、きれいじゃん」


「お嬢よりきれいじゃねえか!」


私よりは余計だが。綺麗だった。少し妬けるくらい。


レイドさんはずいぶんと遠くに見える。次に会えるのはいつか分からないが、まぁ会えるだろう。


私は今日もいつも通り、店を開けることにした。どうせ、ここにいる人間しか来ない店を。さて、皆を起こそう。他のみんなもどうせ、いつも通りの日常があるのだから。

読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。

レイドの出番はお終いです。ですが、お話はもう少し続くのでどうぞお付き合いください。

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