怠惰な少女の本気
どうも、作者です。36話です。
ジョゼの珍しい戦闘回です。お楽しみください。
ナイン、私がレベル30になったときに召喚できるようになったクラゲちゃん。私が何も言わなくても、私のやりたいことをくみ取る能力がある。基本私と違って勤勉な子だ。
何も特殊な能力がないからこそ至極単純、九本の触手を使ってあらゆることができる家事に、帳簿をつけたり地図を書いたり、また戦闘を行ったり。その戦闘力はあのレイドさんをもってかなり強いと言わしてメタくらいだから相当だと思う。
「さて、やろうか」
私がそう言うと、敵は相当の速度で私の喉元まで迫る。最近召喚士のレベルが上がったせいなのか、少し動体視力が上がったおかげ多少とらえることができた。やはり、元々それなりの戦闘能力が合うのだろう。かなり正確に私の喉元に突き刺そうとしていた。
しかし、その件が私の喉元まで届くことはない。一本の触手によって止められる。確かに速い。だがナインの触手の方が速い。ナインはそのまま反撃の一発を食らわせようとする。
相手はそれを察したのか、つかまれた剣をすぐさま離し後退する。反撃の速度もかなりのものだったはずだが避けられた。やはり、私の繊維が低いせいか、攻撃の時の方が触手の動きが遅い。
「やっぱり結構強いね」
敵はもう、一言も発さない。というより話す余裕がないのだ、一手間違えば負ける、そう感じたのだろう。しかし、意外なことに退かなかった。予想では逃げると思っていたのだっが。
「逃げないの」
私がそう言葉を出すと相手は少し私の表情を観察しながら言葉を出す。
「逃げてもどうせ終わりなもんでね」
戦意を高揚させるためなのか敵はその口を吊り上げながら言う。なら、こっちも本気でやろう。
「そう...。ナイン」
ナインは五本の触手を敵に向かわせる、敵は先に来た二本を腰に掛けてあっただろうナイフでいなしながらまた後ろに下がる。そして、射程外まで逃げられる。ナインの射程はせいぜい五メートル、私を守るように立ちまわっている分、射程差が致命的だ。
どうにか私が動くことで、射程内に収めようとするが、やはり相手の方が早い。ナインの動きがどんなに機敏でも、私の方が鈍足なのだ。
ギルマスからは事後処理が大変だからあんまり使うなと言われていたが仕方がない。私は種を取り出す。
『活性』、それによって取り出した種に魔力を込め放り投げる。この前逃走しているときに気づいたが、どうも魔力の込め方で成長するタイミングをずらせるらしい。取り出した種もまたあの時、敵の動きを阻んだ、蔓の植物、正式な名前はヘニル。
「んな!?」
蔓によって敵の後ろ側を塞ぐ。切ろうにも切れないほど強度の高い蔓だ。
「これでおわり、シゼル」
「おう!」
シゼルの入った瓶にナインが諸種の一つを入れる。そうすると、ナインの触手の中にある管に何かが伝っていくのが見て取れた。
ナインは触手の一本を相手の腹めがけて突き刺す。といっても別に貫通したりしないが。
「な、なんだ!?」
「終わりって言ったでしょ、チェックメイトってやつだよ」
ナインにはもう一つ能力がある。それは、液体を吸って、触手の先からそれをそれを注射のようにモノや生物に注入できる。今入れたのは、シゼルが作った睡眠薬である。
「ん、な」
「よぉし、眠ってるね、ちゃんと効いてよかった」
「俺特性だぞ! 効かないわけないだろ!」
ナインの触手注射は少し時間がかかるので相手を拘束する必要があったので使わない予定だったが、予想外に相手が速かったので蔓を使わざるを得なかった。まぁ、倒せたからよし。
「よぉし、終わり」
「お疲れさん」
後ろで見張ってくれていたウロクが声をかけてくる。
「ありがと」
「俺は何もしてないがな、上はどうか分かんねえが、下にいる奴らはレイドが処理してくれたみたいだ」
「そうなんだ」
どうやら、いつの間にかレイドさんたちがこっち側に来てくれたらしい。というか、まだ、十五分くらいしかたってないはずなのだが、どんなお速度で終えたんだ。まぁ、こっちももう終わったけど。
「上の様子見に行きたいなぁ」
しかし、ここから動くわけにはいかない、流石に急に起きられても困るし、万が一があるしなぁ。
「レンズ飛ばせばいいだろ」
「あ、確かに」
それもそうか、起きたばっかりだったら、シゼルでも対処できるし。
「ありがと、ナイン」
私はナインを退去させて、レンズを呼び出す。そのままレンズを屋上まで飛ばす。
屋上につくと、そこには死屍累々の屍、ではなく、気絶した人間が積み重なっていた。その真ん中には少し休んでいるのか、無心でモンジを撫でているレーシュがいた。
「終わってるじゃーん」
「きゃあ! ってレンズさん」
「お疲れ」
「ごめんあそばせ! モンジさんの撫で心地がよくてついぼーっとしていましたわ!」
仕方ない、モンジの撫で心地はよすぎるがね。仕方ないね。
「大丈夫だよ、もう終わったから」
「終わった、ということはもしかして」
「うん、捕まえた」
「そうですか」
それを聞いたレーシュは安心したように一息つく。とりあえず、この後のクヤハの処遇とかは置いとくとして作戦成功である。
私たちは合流した後、いつの間にかウロクに手足を縛られたクヤハをモンジの上にのせて建物の下に降りる。そこには、レイドさんたちがいた。
「ジョゼさん、大丈夫でしたか?」
「大丈夫でひゅよ」
またバンカさんに頬を触られながら心配される。この人私の頬を触りたいだけでは?
「とりあえず、これでお前のやることは終わった、この後のことは俺に任せてくれ。ま、とりあえず、お前を狙うやつはいないだろうよ」
「それならいいけど」
ま、私もさらった張本人に一撃いれられてすっきりしたし、これで今回の件は終わりだ。
「みんなもありがと」
私の言葉にみんなが笑う。特にバーレさんとレーシュは巻き込まれた側なのに、助けてくれて本当によかった。これから恩返ししていこう。
とりあえず今日は帰りますか~
帝都の中心、その王城のさらに中心、そこには絢爛豪華な部屋とその中心にある玉座、来るものすべてを魅了し、それと同時に多大な威圧感を感じさせる空間だった。
その玉座に座れるは、ただこの世にただ一人だった。カウデン帝国の帝王。その人だけだった。
「王、ギルドマスターが起こした件について報告です」
「原因は何だった」
ギルドマスターによる、マフィアのアジト襲撃があった。それにより、マフィアの幹部一名が死亡、部下たちもそのほとんどが騎士に引き渡された。
あまりにも唐突なマフィアとギルドの衝突に、国側もその内情が把握できずにいた。
「どうやら、一月ほど前にギルド関係者がマフィアに誘拐され、これをギルドに対する攻撃だと判断したギルドマスター、グリムが独断で私兵を使って襲撃したとのこと」
ギルドマスターに説明を求めたところ、そのように返ってきた。
「ふん、それにしては用意周到なことだな」
「用意周到とは?」
「いくらあのギルドマスターと言えど、マフィアの主要アジト三か所同時襲撃、それもたった一夜にして崩壊させるなど、相当な準備が必要だっただろうさ。恐らくもっと前から準備していたな」
王の言う通りだろう、我々ですら完璧にマフィアのアジトを追い切れていないというのに、主要アジトを全て見つけた挙句、その全てを襲撃、崩壊というのはあまりにおかしな話だ。
「それに、マフィアの動向もおかしい、同じ幹部を殺されたにしては動きに混乱がない、他の幹部どもにも話を通していたんだろう」
「なるほど」
「ふむ、そこまでするほどの何か、いや誰か誰かかが、ギルマスの元にいるかもしれないな」
「どうして誰か、なのですか?」
「勘さ、ただの王の勘だとも。それに俺としてもギルドに関して気になることがある」
王は不敵な笑みを浮かべ、目を閉じる。退屈な日々が終わりを告げる予感に浸るように。
読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。
これにて、ジョゼ誘拐から始まったマフィア襲撃編はこれにて終わりです。とはいえ、物語はまだ続きます。王に目をつけられたジョゼはどうなるんでしょうね。




