マフィアの下っ端、情報屋
どうも、作者です。31話です。
前回の続きです。
「ギルマスさん、今尋問中」
不審者を捕まえて、『鑑定』したらマフィアだった。あの学園の下校路を張り込んでいた理由はしょうもないっぽいが、フェメロスファミリアの人間なのは間違いなかった。
尋問中に、何故かギルマスが来た。
「どうしたんです? 」
「いや、お前が店の中じゃなく裏道で魔法使ったろ、なんかあったのかと思って」
なるほど、今まで裏道で魔法を使ったことはなかったな。レンズを出すのも店の中だし。というか、結界ってそういうのもわかるのか。
「んで、来たみたら知ってる顔が尋問されてる訳だが」
そういって、椅子に縛られているウロクの肩に手をのっけてあおるような笑みを向ける。
「なーんで、捕まってんだ。まぁ、どうせまた好みの女がいてケツ追っかけてたんだろうが」
ウロクは諦めがついたように顔を上げていた。やっぱりしょうもなかった。
にしても、二人は顔見知りなのか、一体どういう関係なんだろう?
「まて、ギルドマスター殿、こっちこそなんでただの薬屋とお前がつながってるんだ! それに、今は俺が女の尻を追っかけていたのは関係ない!」
やっぱりしょうもない。レーシュはこんな男を疑っていたのか自分はという苦い顔をしていた。
「あとなんでこのちび女は俺のことを知ってやがった! お前が喋ってたのか!?」
「いや、お前如きをこいつに教えることはねぇよ。ま、こいつ『鑑定』スキルを使ったんだろうよ」
「『鑑定』スキルだぁ!? なんちゅうもんもってんだ! それにあの獣を従えたことといい、やっぱりただのちびじゃなかったか」
こいつ、人のことを何度も何度もちびと言うとは、許すまじ。
「その通りだ。こいつはただの薬屋じゃねえよ」
心外だなぁ、やってることはいたって真面目に仕事やってるのに。すべてシゼルの放り投げてるだけで。
「一ついいかしら、結局二人はどういう関係なんですの?」
レーシュが聞く。私も気になっていた。
「あぁ、こいつはただのマフィアじゃなくてな。情報屋も兼業してる。というよりかはこいつの上司にやらされてるという方が正しいか。まぁこの町のことを聞くならこいつに聞くのが一番でな、そういうこともあって何度か俺が個人的に使ってるから知ってるってわけだ。安心しろ、クヤハの方とこいつの上司は仲が悪いからな」
情報屋なんだ。それで知り合いなんだなぁ。
「あ? なんでそこでクヤハさんの名前が出てくんだ」
「さん付けなんですのね?」
レーシュが不思議そうに聞く。確かに上司が仲悪いのにちゃんと敬称はつけるんだ。
「一応、立場的には上の幹部様だし、一応ここはその人の管轄だからな」
「そういうとこは世渡り上手だよなお前」
「そうじゃなきゃマフィアの世界で俺は生きれてねぇよ」
ふーむ、あほそうに見えてちゃんとしてるんだな。マフィアだけど。
「それでクヤハさんと何があったんだ?」
「なーんで尋問される側が聞いてんの?」
一応この人、私たちに捕まってる立場なのに。何かいつの間にか妙にきりっとしてる。多分仕事モードなのだが、状態が状態だからすっごいダサい姿なのだが。
「いいだろ! それにそれを聞いた方が俺も情報出しやすいんだよ!早く解放されたいんだよ!」
「まぁいいや、でも話していいの?」
ここまで、最初にかかわった人たちだけで進めてきたが、話してしまっていいのだろうか?
「いや話してくれ、色々とちょうどいいし都合がいい。だがそうだな、一応はなされるとまずいか」
「てめぇまさか」
ウロクは何か焦った顔をしている。何が始まるんだろう。
『汝、我らが契約に従いたまえ。汝、罪を開くことなかれ。さすれば何も変わらじ』
『罪作り』
光がウロクの体の中に光が入っていく。そして、光は体の中で光りっぱなしである。
「これが、賢者ですか」
「くそが!」
一体何したのかわからなかった。レーシュは感心していて、ウロクはすごい怒った顔をしていた。
「何したの?」
「簡単な話、今から出る情報を許可なしに話したらちょっと不幸になる魔法だ」
ちょっとじゃないような気がするがそこは無視しよう。わたしには関係ないのだ。
「ということで喋ってくれ」
「了解」
ということで、私は今までの経緯を話す。クヤハに誘拐されたところや、誘拐された理由、どうやって逃げ出したのか、そうして今どういう状況まで。
「ちょっと待ってくれ、情報量が、情報量が多い!」
「全部本当だよ」
「全部話したな、よし」
『罪は閉じられた』
さっきまで体の中で光っていたのものが収束したかと思うと。ぱっと消えた。どうやら、これで、今はした情報を気軽に喋られなくなったらしい。
「にしても、そんなことがあったのか。ちっ、今まで知らなかった。やっぱそっち方面はあいつ優秀だな。だがなるほど、まぁちび女を狙う理由は大いに理解できた。やべえな、あんた」
「まぁね」
ま、私だからね、やばいスキルくらい持っている。
「別に褒められてないですわよ」
褒められてなかった。
「それに、まさかSSランク冒険者まで関わってるとは、あの最強の騎士様とはね」
「なんで騎士?」
「見た目から何から何まで騎士だろ」
確かに、あの鎧と剣にあの剣術、確かに騎士っぽいな。
「そうですわね、私も憧れる騎士ですわ」
いや冒険者だけど。
「だがなるほどな、俺に話した理由はわかった。我らがボスに話しを通してほしいわけだ」
「そういうことだ」
ボスというのはさっき言ってた上司のことだろう。でも何の話を通してほしいんだろう? 私の顔を見て私がなにも理解してないのをギルマスは察してくれたのかしゃべりだす。
「ようは、勝手にマフィアの幹部を消すわけにはいかねぇし、いくら俺たちが動くからって、さすがに本部まで話が行くといろいろとまずいからな。だったら他の幹部どもに口裏を合わせてくれるといいわけだ」
「そして、他の幹部的には消えてくれた方が助かる。つまり利害が一致してるわけだな、まぁうちのボスなら十中八九協力すると思うぜ」
なるほど、マフィアをつぶすために周りのマフィアの協力を得るのか、わかりやすいね。でも同じファミリ同士での内輪揉めで、すごいドロドロしてるけど。
「はぁ、私としては、あまりよろしくありませんのだけれどね。今回は目がつぶりまわ」
まぁ、騎士の卵としては敵対するべきマフィアと協力するというのはあまりよくないのだろう。しかし今回は目をつぶってもらおう。
「ま、ということで協力してくれるか?」
「この状況で協力しないの声が出ると思ってらっしゃる?」
男は両手両足を縛られた状態ですがすがしい笑顔で言い放った。
「全然思ってないが?」
「ですよねぇ」
「「はははははは」」
二人はそろって笑いあっている。と思ったら二人そろって真顔になる。
「やるのか」
「やります」
これが大人のやり取りというやつか。
「なんだか怖いですわね」
「うん」
「あともう一つ頼んでいいか?」
「ええ、もうなんなりと」
ウロクはもう完全に諦めてる状態だ。
「できれば、もう一つの方にも話をつけてほしい」
「まて、そりゃきつい」
「なんできついの?」
「簡単な話、さっきまではうちのボスにだけ争ってる敵が一人勝手に消えてくれるっていう情報が行く話だったろ」
確かにそういう話になるのか。片方にだけ情報が行く状態ってわけだ。
「なんで片方だけ情報がいくのが重要かわかるか?」
えーと、確かになんでだ? 別にそれを知っていようが知っていまいが敵が一人消えることは変わりはない。だとしたら、別に重要じゃない気もする。
「わかんない」
「縄張り争い、ですか」
「そういうこったな、ちび女にも分かるように話すとだな、今帝都にいる幹部ってのはそれぞれ縄張りを持ってるわけだ。縄張りってのはまぁ、自分たちが稼げる範囲だと思ってくれればいい。縄張りが広がれば、より稼げる状態だ。んで、クヤハも自分の縄張りを持ってるわけだな、ならそこからクヤハが抜けたらどうなると思う? そして、それを先に知ってたらどうだ?」
「あぁ、なるほど」
理解できた、もしクヤハが消えると今度は残った二人でその空いた縄張りを奪い合いになる。それなら、先にそれを先に知っているのと唐突に聞くのでは大分話が違うという訳だ。
「理解してくれたんなら、そりゃボスに言わずにこっそりいうことはできるがその場合俺はここで解放されても首が飛ぶ。だから無理だ」
「いや、時期はずらしてくれていい、数日アドバンテージがあるのと、俺からの条件だって聞いたら、まぁ納得はしてくれるだろ」
ウロクはしばらく悩んだ後、ため息をつきながらしゃべりだす。
「それなら、ぎりか、なら俺からも条件出していいか?」
「まぁ、聞いてやろう」
「その後、俺を守ってくれ! 多分殺される奴だからな!」
「ま、いいだろう」
ギルマスはあっさりと了承した。
「なんで殺されるの?」
「そりゃそうだろ、さっきの魔法で俺はクヤハさんが襲撃される理由は話せねぇ、そんな状態で自分のところのボスとそれに敵対してるやつに情報を私に行く。したら、ボスは裏切りは裏切りって言いそうだし、両方から確実に俺が持ってる情報については感づかれる。したら、俺がどうなろうと情報を吐き出させようとするはずだ。そのうえ、クヤハのところの残党にも狙われそうだし、そうなったら俺は十中八九殺される。どうあがいても死ぬ」
「それはまぁ、そうなるでしょうね」
「そういうこった」
つまり、味方からも狙われる立場になっちゃうわけだ。それは流石にいきついなぁ。
「そうなったら、マフィアやめるの?」
「俺にその気がなくてもそうなりそう。いやなんだけど。だからと言って今拒否すればここで終わるだけだからな」
うーん、ただ不審者を捕まえただけなのに、その不審者の人生を完全に変えてしまうとは、なんとも不幸な話である。
「ま、今更だな。だが、これで最後の懸念点はなくなったな。よくやった、レーシュ嬢、ジョゼ、これでいつでも襲撃可能だ」
「それはつまり」
「あぁ、いよいよ、襲撃計画を進めるときだ。ま、襲撃自体は赤の月に入ってからになるがな」
ようやっと、憂さを晴らせる時が来たらしい。
読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。
前回と打って変わって真面目な雰囲気になった気がします。ウロクはやってること、そうなった経緯は置いといて流石に不憫な気がする。いや、ほぼ自業自得ですが。




