幻想召喚
どうも、作者です。そういえば、タイトルの読み方わかりにくいなということに気づきました(今更)。
読み方は三月裏道譚です。今更ですみません。
前回のあらすじ。
異世界転生二日目で二度寝を決め込む私。ギルドに行ってとりあえず金を稼ぐ手段を手に入れようとした。しかし、ギルドのお姉さんに一瞬で異世界人であることがばれてしまった。これからどうなるんです私?
「......。え?」
なんでばれたの? いや、心当たりしかないけど、それにしたって、あの一瞬で?他の職員さんがのぞく間もなく気づかれたが?このお姉さん、もしかしてすごい人なのか?
「ジョゼさん、違うのですか?」
どう返答するのが正解なんだ? よくよく考えたらもともと隠しているつもりもないけど。それより、この世界ってそんなにポンポン異世界転生者がいるの? わからない。ただ、ほとんど確信めいた声音だった。
「え、えーと、そうです」
「はぁ、やっぱりですか。でしたらいろいろと面倒ですね。でも、転移者のあなたがどうして直接ギルドに? いや確か、そういう事例もゼロではないのでしたか」
「あ、あの、えとギルドに来たのは、」
あまり女神のことは言うべきじゃないだろうか? ものによっては、世界と神が敵対しているなんて話はよくある。わからないことが多い。伏せれるところは伏せよう。
「お金稼ぎには、ギルドが一番だ、って人づてに聞いたので。とりあえずここに来ました」
「なるほど、まぁ間違ってはいませんね。ちなみに、この世界に来てから何日目ですか?」
「えと、二日目です」
「二日目、ずいぶんと早いですね。あなたは誰かに呼ばれてこの世界に来たんですか?」
「いや、唐突にこの世界に来ました」
そう言うとお姉さんは黙り込んだ。しばらくすると、何かを受け入れたようにこちらを向いて微笑みを見せてくれる。
「わかりました。申し訳ございません、急に質問攻めしてしまって。何分、異世界の方と話すのは初めてでして、ギルマス......、いえ、私の上司に聞いた程度の知識しかなかったため、いろいろと聞いてしまいました」
「い、いえ。全然大丈夫です」
どうも、乗り切ったらしい。私も、安堵と共に小さく笑う。
「一方的に名前を知っているのは失礼ですね。私の名前はバンカ・クラウリースと申します。このギルドで受付をやっております。おそらく、長い付き合いになると思いますので、以後お見知りおきを」
「海野ジョゼです。よろしくお願いします」
「さて、あなたのこれからですが、正直に言ってしまいますが、異世界の方の扱いに関しては何も言えることはありません」
「え」
そんな、ここなら世話をみてくれるといわれたのに。
「ですが、そもそもあなたは冒険者になりにきたのでしょう? それならば先ほどの続きをしましょう」
そうだった、冒険者になろうとしたんだった。忘れるところだった。
「ちなみに、ジョゼさんはギルドについてはどこまで知っていますか?」
「いいえ! まったく知りません!」
本当に何も知らない。ラノベなんかのよくあるギルドの設定なら知っているが。
「簡単に説明しますね。ギルドは冒険者に依頼を仲介する場所です。ギルドにくる依頼を選んで受注、達成すれば報酬が、失敗すれば違約金が出る場合もあります。受けられる依頼は、ギルドが設定するランクによって決まります。ランクは、依頼を達成して上がったり、こちらの独断によって決まることもあります。少々駆け足だったでしょうか?」
「いえ、理解できました!」
あまりによく聞く設定そのままだったので、つい自信満々に答えてしまう。大丈夫かな? 実は知らないゲームの世界だったりしないよね?
「さて、そしたら手続きをしましょう。といっても、基本手続きはこちらでやるので、ジョゼさんがやるのはジョブを選ぶくらいですね」
ジョブ、あのステータスの職業というやつだろう。確かに私は何も職業についていなかった。つまりニートだ。
「といっても、ジョブについても知りませんね。ジョブというのは、その人の仕事のことですが、それと同時にレベルにもかかわるものです」
レベルにも。そういえばレベル1って書いてた。あれは今の自分というより、職業レベルと考えたほうがいいのか。
「ジョブにつくことで、レベルが上がり、レベルに応じたステータスが得られる。逆説的に、ジョブを変えるとステータスがリセットされてしまうのでご注意下さい」
「わかりました」
「基本、ジョブというのは無数にあるのですが、冒険者には冒険者というジョブはありません。代わりに冒険者用のジョブがあります」
おそらく、自分のポジションを決めるジョブだろう。剣士だとか、魔法使いだとかの。
「この冒険者ジョブは、大まかに分けて、アタッカー、キャスター、ディフェンダー、サポーター、ヒーラーの五つです」
大体合ってた。
「冒険者はこの五つのうちの一つをメインとしていく形ですね。一応程度ですが、冒険者ジョブにつかなくても、冒険者は名乗れます」
絶対ではないのか。ただ、言い方的に冒険者ジョブ以外につくと、デメリットがあるのだろうか。あと、もう一つ気になることがある。
「メインってことは、サブもあったりするんですか?」
「その通りです、よく気づきましたね。サブもあり、さっき言った五つはより細かくジョブが別れるのですが、アタッカーであれば、同じアタッカーのジョブをサブにしたり、もしくは別の例えば、キャスターを選択して、万能性を高めたりですね」
なるほど。
「と、こんな感じでしょうか? どの職業につきたいなどありますか?」
うーん、どれでもいい。別にこれにつきたいなどない。なんせ、冒険者になりたいというより、金を稼ぐためにここに来たし。なら、やはり楽して金を稼げる職業だろう。だが、どれがいいかわからない。こうなったら、
「どの職業がオススメですか?」
聞けばいいのだ。
「そうですね、やはり適正をみるのが良いですね。あとは、スキルでしょうか。もう一度ステータスを見せてもらってもいいですか?」
そう言われて、ステータスを開く。
「幻想召喚、名前をみる限り、戦闘に使えそうなのは、これですね」
「やっぱり何か召喚できるんですかね?」
「あ、スキルは選択すると説明が見れますよ」
「そうなんですか」
というわけで早速やってみる。ステータスから幻想召喚と書いているところを触ってみる。すると説明が出てくる。
【幻想召喚Lv1】
・幻想の獣を召喚可能(現在同時に二体まで)
・現在召喚できる獣
生成獣、紋章獣
今のところ二種類の獣が召喚できて、二体とも召喚できる。という感じか。
「うーん、これは実際に使ってみないとわからないなぁ」
「そうですね。でしたら、実際に使ってみましょうか」
「え?」
そう言って、バンカさんは立ち上がって、扉を開ける。
「ジョゼさん、ついてきてください」
おとなしく、バンカさんについていく。少し歩いたところで大きな扉に行きつく。バンカさんがその扉を開けると、すごく広い中庭だった。
「ここは?」
「ここは冒険者用の訓練場です。この時期のこの時間は、使う人がほとんどいないので、ここならスキルの試しにはちょうどいいかと」
さすがギルド、こういう施設もちゃんとあるのか。ほかに人もいないようだし、確かにここなら気兼ねなく使える。
「ならここで使ってみますね~!」
「はい、どうぞ」
と、言ったはいいものの、機動の仕方がわかな...。あ、なんか頭に流れ込んできた。なるほど、専用の詠唱があるらしい。使おうとすれば勝手に使用できる状態にしてくれるのか。スキル便利だな~。さて、一体出してみようか。先ほど、頭に流れ込んだ呪文を唱える。
『出でよ、始原の獣、作る者、生成獣シゼル』
唱えると同時、自身の体がまるで炎になったかのように、熱くなる。しかし、どういう訳か苦しみはない。なんというか、何かすごく体の芯から何か生まれているような感覚に陥る。そんな感覚にとらわれて気づかなかったけど、何か光が生まれて、その中に何かいるのがわかった。
光が消える。そこにあったのは、生物、じゃなくない? あれ、どっからどう見ても黒い靄なんだけど。うん? 失敗したかな?
「黒い靄なんだけど?」
「ええ、黒い靄ですね?」
バンカさんはすごいきょとんとしている。多分私も。
「生物じゃないじゃん!? どっからどう見ても失敗じゃーん」
私はつい声を上げる。多分失敗した。だが、黒い靄が口を開いた
「おいおい? 人、じゃないな俺。なんていうんだ? 獣か、獣だな。獣である俺を呼び出しておいて、失敗とはひでーじゃねぇか! お嬢よ!」
「しゃ、しゃ、喋ったああああ!?」
バンカさんがすごい驚く。私はそれに驚いて、言葉が出せなかった。これが私が初めて呼び出した召喚獣、シゼルとの初邂逅だった。
読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字・コメントお気軽にどうぞ。