冒険者のお仕事
どうも、作者です。27話です。
冒険者のお仕事見学です。
「じゃあ、レイドさんのクエスト見学していい?」
「見学というと、レンズさん越しに見るというよことですよね?」
「うん、冒険者の仕事って見たことないから気になる。一応一日だけ冒険者やってたけど、薬草採取しかしてないし」
そうなのだ、結局この世界の冒険者業というものをほとんど見たことがない。まぁ、そもそもこの世界に来てからほとんど引きこもってるからほとんど他人の仕事というのを見ていないのだが。
「別に構いませんが、私のそれはあまり参考になりませんよ? 冒険者としてはあまりマネしてはいけな部類だと思いますし」
「いーよ別に、だって私は別に冒険者として参考にするわけじゃないし」
結局興味があるわけではないのだ。それに、最強の冒険者の仕事なんて貴重そうだし、これからそう何度も見れないだろう。そんな貴重な機会を逃す必要もないだろう。暇つぶしにちょうどいいし。
「鎧の人の仕事を見ようって話してたところだぜ!」
「見学ですって!?」
「ありゃ、レーシュじゃん、いらっしゃーい」
話し込んでいて気付かなかったが、いつの間にかレーシュが店に来ていた。どうやら、シゼルから今の話を聞いていたらしい。
「ジョ、ジョゼさん、まさかレイド様の仕事を見学するんですの!?」
「うん、面白そうだし」
なんというか、すごくレーシュが興奮している。というか顔が近い。もしかして、思った以上にレーシュはレイドさんのファンなのか?
「ジョゼさん、うらやましいですわ。私も見たいのに」
「見学してもらうのは構いませんが、さすがに連れていけないですからね。ジョゼさんだけになりますね」
「ん? 行けると思うよ」
「「え?」」
ということで、次のレーシュの休日、青の月の終月五日のことである。薬屋のカウンター席でレーシュと二人で並んで座っている。
「よし、じゃあモンジお願い」
「わふ」
モンジが魔法を作り出す。要は自動情報取集装置に利用した視界共有をレーシュ(とシゼル)にかけた感じである。それだけである。ただ、レーシュはしばらく視界が増えたことで能が混乱しているようだった。まぁ、私も視界をずらす技術を習得するまではなかなか大変だったが。
「一番簡単なのは、目を閉じるといいよ。それだけで情報量減るから」
「わ、わかりましたわ」
今日のレーシュは少し緊張しているのか、少しそわそわしている。見学するだけでも、そんなにソワソワするものなのか、あれかな、自分のめちゃくちゃ好きな漫画の新刊を読むようなものなのかな?
「そんなに楽しみだったのか? お嬢様」
「当たり前ですわ! だってレイド様と言えば冒険者の頂点のお方であり、それと同時に剣士としてもトップクラスのお方ですもの。そんな人の戦いをみれるなんて、それだけで、光栄の至りですわ!」
す、すごい、今までにないくらいレーシュのテンションが上がってる。それほどまでにあこがれの人だったのだろう。でもバーレさんとかの話を聞く限り、もっと冷静な感じで応対していると思っていたんだけど。もしかして、私の緊急事態だったから、そういう感情は押し殺していたのかな?
「ジョゼさん、レーシュさん見えていますか?」
「見えてますよ~」
「見えていますわ」
レーシュも返事するが、視界を共有しているだけなので、聞こえているのは私の声だけである。
「わかりました、この子は私の動きについていけるでしょうか?」
確かに、レンズもかなり俊敏ではある。しかし、レイドさんの動きについていくのは難しいかもしれない。
「ほうほう!」
レンズが大丈夫だと言わんばかりに返事をする。どうやらレンズは自信があるらしい。
「わかりました、できるだけ配慮はしますがダメそうなら、上空から観察してください」
レイドさんとレンズは、帝都よりそこそこ離れた森まで来ていた。
仕事内容に関しては聞いている。今回の依頼は、Aランク相当の魔物が群れを成しており、周りの村に被害が出ているので討伐するという内容である。なんでも、もう二か月は放置されていたクエストらしく、村の人々も今は避難をしている状況らしい。
通常このクエストは、Aランクのパーティがいくつか寄せ集まってやるものらしい。しかし、レイドさんは一人である。一人でこのクエストを引き受けたのだ。
魔獣の名前はハグテンダー、大きな牙が特徴の狼型の魔獣らしい。特に目立った特徴はない、ただひたすらに身体能力が高く、そして五感が鋭い。単体ですら、Aランク。Sを超える魔物は純粋に厄災のそれであり、Aは実質的に魔獣と言える範疇で最強クラス。それが群れを成しているという状況らしい。
普段は人間が住む領域に来ることはないらしいのだが、何かがあったのか村に降りてきたらしい。それだけ危険な魔獣たちに対してたった一人でやるらしい。
「大丈夫なのかな? 私たちが見学して気が散ったりしたら危なくないといいけど」
「大丈夫でしょう、なんせあのお方は、最強なのですから」
「魔獣発見しました、レンズさん、巻き込まれないようにだけしてくださいね」
レンズの目にも、ハグテンダーの姿が映る。そして、魔獣たちの目にもレイドさんが写ったらしい。レイドさんは自然に剣を取り出す。レイドさんの鎧にも負けないほどの大きさの大剣。それを体の前に構える。一切ブレのない姿勢、その姿に力みはなかった。
その立ち姿に見惚れそうになった時、魔獣が地を蹴る。一瞬だった、私の目から見れば一瞬にしてレイドさんの目の前に現れたようにしか見えなかった。だが、それに気を取られて、剣がぶれたのすら捉えられなかった。
魔獣の体は真っ二つだった。一瞬あの時の光景がフラッシュバックする。ちょっと吐きそう。
魔獣たちはその姿を見て一瞬後ずさるが、逃げることはできないと感づいたのか魔獣の群れは、一斉に飛び出す。
「素晴らしい連携ですわね、ですが」
正直あまりに速すぎて見えない、と思ったら、モンジが魔法をかけてくれたのか、動きがスローモーションに見える。ハグテンダーの数は六匹、一匹は後列で構えている。前列の二匹は正面から、中列にいた三匹は側面に回り込んでいる。
確かに、一人に対しては過剰と言っていい連携、ほぼすべての方向からの同時攻撃、普通ならどこかを崩しても他のところから殺されるそんな布陣。
しかし、剣士は一切ひるむことなく前の二匹に突っ込む。斬撃による一刀両断ではなく、殴打。大剣の大きさを利用して一瞬にして前二匹を吹っ飛ばし、側面の敵は後方から追い込もうとする。
剣士は後ろに目でもついているのか、後ろの三匹の獣に対して一閃を放つ。一匹は鋭かったのか、それとも、一番遅かったのが故なのかわからないが、前の右足一本で済んでいた。ただし他の二匹は言うまでもなかった。
吹っ飛ばされた二匹の一匹は当たり所が悪かったのか、完全に頭が陥没していた。一匹はうまくどうにか生きていた。一瞬にして、三匹を倒し、二匹は瀕死にまで追い込まれていた。恐らく群れのリーダーと思われる獣は完全におびえた目に変わっている。
獣たちは一瞬にして死骸に変わった。その真ん中に、ただ一つの鎧だけが汚れ一つついていない姿でたたずんでいる。
「す、すさまじい」
「あれが、頂点。動きに一切の無駄がないですわ」
強い、ただそれだけだった。それ以外の言葉が必要ないほどただ強かった。それからも、ただただ一方的な蹂躙だった。ハグテンダーの群れは他にもいた。通常ならば、恐らくそれだけで絶望感が増すことなのだろうが、一切そんな感じはしなかった。時に防御したり、魔法を使うことさえあった。できないことはないのだろうか?
クエストはあっさりとおわった。本当にあっさりと、一切の危機もなく、ピンチもなく、波乱もない。
「本当に一瞬だったなぁ」
「あまり、参考にしないでくださいね、本当は仲間と連携することが必要なのですから」
「確かに、一人で完結させてしまえるレイドさんが異常なんですもの」
たった一人で、攻撃し、守り、時に魔法を使う、まさしく万能そのものだった。
「そうだね~」
「えぇ、私ひとりで十分ですから、こういうやり方をやっているのですし」
でも、ほんとにそうかな?
「でもレイドさんが攻撃だけに集中できれば、もっと最強になると思うけどなぁ」
「そうですわね」
あぁ、本当に今日はすごいものを見た。
読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字報告・コメントお気軽にどうぞ。
少しだけ、SSランク冒険者の強さがわかってくれたらうれしいです。




