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お嬢様、来店

どうも、作者です。12話です。

ついに夏バテが襲ってきました。きつい。

「ここがジョゼという方のお店でよろしくて?」


金髪縦ロール、最初の印象はそれしかなった。明らかにお嬢様だ、しかも悪役令嬢系の! なにより、整った顔と、厳しさがにじみ出るきりっとした表情、間違いない。悪役令嬢系のお嬢様だ! うーん正直、明らかに陽なるものの気が出ているので近寄りたくない。


「あの、もしかして間違いだったかしら?」


はっしまった。あからさますぎて、完全に呆気に取られていた。


「いや間違ってませんよ~。というか、私がジョゼだし」


「本当ですの? 店主の娘か何かだと」


「失礼な」


「あなた、私と年が同じか下くらいにしか見えませんもの」


確かによく見たら彼女は制服を着ていた。どちらかというと、ラノベとかのファンタジー学園ものっぽいやつ。となると、確かに前世で学生だった私と同じくらいかも。この世界の学生が何歳くらいで通うか知らないが。


「まぁいいや、それで、どんなご用件で?」


「実は、ほしいポーションがありまして、それを欲してここに来ましたの」


なるほど、つまりお客様だ。お客様!? 初めて来た! まさか、来るとは思わなかったぜ。


「なるほどー、それは良いけどなんでここに来たの?」


「なんでって、その言い方店としてどうなんですの? まぁいいですわ、実はどこを探してもないので、ギルドまで行って、依頼をしようとしたら、ここを案内されまして」


なるほど、ギルマスめ、なんて面倒なことを押し付けてきやがる。あ、いや、そういえば、ギルドからの依頼を受けてほしいとか言ってたな。それか。


「ふーん、わかった。それで、どんな薬が欲しいの」


縦ロールお嬢様は、制服の胸ポケットから紙を出す。


「これですわ」


「ふむ、発光ポーション。ここにはないな、えっと調合レシピは」


ものは、ポーションである。当然だが、しかし、どうやら飲むものではなく、ポーションを壁なんかにつける光るものらしい。ちゃんとレシピまで書いてある。まぁ、今ある材料で大体揃ってる。一つを除いて。


「うーん、このバルド草っていうのはないなぁ」


「はぁ、やっぱりないんですね。ほかの店の方々も知らないそうですし、どうしましょうかしら」


「採りに行けばいいじゃん」


「もちろん、それも考えましたがそもそもどんな見た目なのかもわからない上、どこに生えているかもわからないですのよ」


なるほど、それは困るわけだ。見た目も産地も分からないんじゃあ、どうしようもない。しらみつぶしに探せばいつかは分かるかもしれないが、それでは途方もない。


「なーんてもん押し付けてくるの、あのギルマス」


「やはりだめですか」


うーん、少し申し訳ないな。何より、初めてのお客様だ。無下にしたくない。


「むー分かった。探してみるよ」


「本当ですの! ありがとうございますわ」


優雅に礼をする。多分貴族流のお礼の仕方なのだろう。それにしても、思ったよりこちらを見下さない。普通に対応してくれるお嬢様だ。もっと下々の者を見下してるのかと。偏見はよくないね。


「とはいえ、どうしたんもんか」


特に手掛かりがあるわけでもないしな~。


「もちろん、私も手伝わさせてもらいますわ」


「え、いいよ、お客だし」


「いいえ、ものを頼むのなら、そこに礼儀と対価あってこそ、このまま報酬を支払うだけでは、わたくしが満足できませんもの。たとえ、貴族だとしても、下の身分の方に誠実さを捨てていいことにはなりませんもの」


な、なんだこいつ。悪役令嬢どころか、完璧超人のそれじゃないか? いやまだわからない、この感じで超絶ポンコツかもしれない。いやそうであってくれ、じゃないと、私が勝てるところがない気がする。


「それに、わたくしはこれでもカウデン帝国立学校の年度優最秀生徒の賞を授けられた身、そのようなものが他者を無下にしたなどという評判が広まれば、学園にも泥を塗ってしまいますわ」


眉目秀麗、そして優秀。だめだ、勝てない。勝てるところがない、しかも心根まで清いときた。けなすところがない。私はもう虚勢をはるしかないのだ。


「そ、それは気負いすぎじゃない」


「……そんなことないですわ」


今すこしだけ、弱いところが見えた気がする。でもこういうのは突っついちゃいけないね。


「でも、そもそも何すればいいかわかんないんだよね」


「やはり調べるしかないですわね」


「まぁ、そうなるよね。でもどこで調べれば?」


「学校の図書館はもうあらかた調べつくしましたから、他の場所ですわね。わたくし、学校の図書館意外に調べる場所は知りませんわ」


縦ロールお嬢様と、二人で頭をひねる。あ、ギルドで調査依頼を頼むはどうだろうか?


「そういえば、いつまでに必要なの」


「この緑の月が終わるまでには必要ですわ」


緑の月って何だろうか? 期限を聞いて返ってきた答だから、多分、暦か何かだと思うが。あ、いやそういえばこの世界の夜に出る月が緑だった。あれと関係があるのかな?


どうしよう、異世界人と言う訳にはいかないからここは適当にごまかそう。


「なるほどー、あと今何日だっけ」


「今は21日ですから、あと15日ですわね」


お、ラッキー。詳細な時間が聞き出せた。でも、それだと、どうだろうか、こういう依頼は、発注されなければ、時間がかかる可能性があるな。


というか、この世界の一月は36日なのかな。そういえば、この世界に来てから、今が何日なのかとか気にしたことがなかったな。バンカさんに教えてもらおうかな。ん? 扉が開いた、あのシルエットは


「ジョゼさん、こんな時間まで空いているなんて珍しいですね?」


「あ、バンカさん」


「このお方は?」


「バンカさん、ギルドの受付嬢だよ」


「そうですのね、ギルドのお方。わたくしは騎士貴族の一家にして、ここからカウデンの西の地方の統治を任されているフーニルの娘、レーシュと申します」


レーシュというのか。もしかしてとてもすごい貴族の一族なのか? というか、


「私には名乗ってないのに」


「あ、ご、ごめんあそばせ、失念しておりましたわ」


思ったよりも申し訳なさそうに謝られた。まぁ、気にしてないが。


「フーニル家のレーシュ様でしたか。お噂はかねがね、ギルドの一員としてご挨拶させていただきます。バンカ・クラウリースです」


うーん、このちょっとついていけないぞ。私だけ置いてけぼりだ、異世界の習慣とかしらないしなぁ。


「それで、ジョゼさんたちは何を」


あそうだ、暦のことを、じゃなかった。私はバンカさんに経緯を説明しつつ、ポーションとその素材について聞いた。


「まぁ、私はこのポーションもバルド草についても知りませんね。というか、ギルドも知らなかったので、貴方に依頼したのでは?」


あ、そうか、ギルドが知ってたら、そもそも私のところに来てない。いやギルドが知らないのに私が知ってるわけないじゃん。


「そうですわよね」


「ですが、調べものができる場所は知っていますよ。この帝都には、帝国が作った図書館がありますから。そこに行ってみるのがよろしいかと」


「まじか、めっちゃちょうどいい場所あるじゃん」


この世界にも図書館あるのか。仕事とは関係なく、今度行ってみようかな、本が借りられるかも。


「有益な情報感謝しますわ」


「いえいえ、こちらも依頼された側ですから」


「でしたら、ジョゼ、明後日に図書館で待ち合わせいたしましょう。学校が休みの日なので、そこなら丸一日使えますわ」


え? 私も行くの? 面倒なんだけど。


「ジョゼさん、大丈夫ですね?」


バンカさんから圧を感じる。くっ、一応私も依頼された側か、逆らえないな。仕方ない。あまり外には出たくないが、いくしかないか。


「わかりました、行きます」


約束をしたあと、レーシュは店から出ていく。バンカさんは私に用があるようでまだ残っている。


「それで、バンカさんどうしたんですか?」


「いえ、本当は様子を見に来たんだけなんです」


そうだったのか、バーレさんと同じ日に来るとは、今日はラッキーデイかな? 初お客様もきたし。


「ですが、まさかギルドから依頼があったとは、しかもフーニル家の娘さんの。ギルマスですね、私に相談もなしに、ジョゼさんに。今度きつく言っておきます」


バンカさんは、頭を抱えていた。ギルマスの笑い声が聞こえる気がする。でもまぁ、バンカさんが文句を言ってくれるなら私は何もしないでいいか。めんどーだし。


「こちらからのお願いである以上、きつくは言いませんが、あまり失礼のないようにお願いしますね。フーニル家、この帝国でもセントラルフラッグに懇意にしてくれている貴族なので」


やっぱり、そういう政治っぽいのもあるのか。私にはあまりわからないが、ま、迷惑はかけないようにしよう。


「わかりました」


「それでは、問題もなさそうなので、今日は失礼しますね」


「はーい、さようなら~」


「はい、さようなら」


私はバンカさんを見送って、店じまいをする。ふー危ない、少しでも掃除しておいてよかった。バンカさんに掃除してないって思われたら、また怒られる。ってそうだった、バンカさんに暦のこと聞くの忘れてた。また今度聞こう。


ま、とりあえず、明後日はちょっと頑張りますか。

読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字・コメントお気軽にどうぞ。

お嬢様と怠惰のコンビ、うまくいくのか。

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