薬屋の日常
どうも、作者です。11話です。
実は仮タイトルが「薬屋ジョゼ」でした。
「ピース・スリープ」を開いて早半月、お客さんは来ない。といっても、元からほとんど来ないだろうと予測されていたので別に構わないのだが。
メインの仕事といえば、ギルドから発注された回復ポーションを作って売ることである。最近は、レシピを渡されて、解毒系のポーションを発注されることも多いが。まぁ、私がやってることといえば、『活性』で植物を増やすぐらいで、ほとんどはシゼルがやっている。
さて、今日も今日とて、惰眠をむさぼろうか。しかし、あまり寝てばかりいると飽きがやってくる。あっちの世界でも、夏休みなんかはほとんど昼寝などに費やしていたが、やはりどこかで億劫になってくるものだった。ただ、あっちの世界には、漫画やラノベなんかがあったからそれで時間をつぶしていたがこっちの世界ではそうはいかない。となると、あれをしよう。
私はそろえられた道具を取り出し、シゼルを呼び出す。
「よし、準備完了っと」
「お、お嬢! 今日もやるのか」
「暇だからね」
「仕事を暇つぶし扱いか!」
「別に、今は練習だしね」
私はこの薬屋を開くと同時、さすがにシゼルに任せっきりではいろいろとまずいだろうということで、ちゃんと職業を手に入れた。職業名は、もちろん薬剤師、ポーション・クラフターだ。冒険者職業の場合は魔物を倒すと経験値が入るが、こういう職業の場合はちゃんと薬剤師の仕事をこなすことでレベルが上がる。つまり、普通に地道に鍛錬あるのみである。まぁ、レベルという指標がある分、モチベーションは保ちやすいが。
「さーて、今のレベルはっと」
海野ジョゼ 所属:セントラルフラッグ 職業:薬剤師、サブ職業:召喚士 レベル2、サブレベル9 種族:人間
ステータス 攻撃3、防御4、速度5、魔力34、耐魔42
スキル 翻訳、幻想召喚Lv.1、鑑定眼Lv.3、活性、計算Lv1
お、やっと1レベルあがった。召喚士の方は何もせずとも上がるのにどうして、こっちはこんなに上がりにくいんだ。そういえば、シゼルやモンジがやったことが経験値として入っている可能性があるって、ギルマスが前言ってたっけ? 前こっそり店に来た時に言ってた気がする。半分寝ててあんまり覚えてないが。
「ま、地道にやるしかないか~」
「ははは! このままじゃあレベル10になるのに一年かかりそうだな!」
「わふ!」
「モンジ、シゼルの言葉に同調しないでいいの」
「わふ!」
「そんなことないよなぁ、モンジ?」
「わふ!」
あ、これ適当に返事してるだけだ。こう、普通に座ってるだけならモフモフした毛並みながら、すごくかっこいいのに、喋るとバカっぽいのはなんなんだ、愛い奴め。
「じゃあ、シゼル火と水お願い」
「わん!」
フラスコに水を入れる。そこに、つぶしたフリッグ草をいれる。これでフラスコの下に火をつけて。につめる。そうしたら一度煮沸する。できた薬を鑑定する。うん、途中状態になっている。なんでも、通常だとここでミスすることが多く、それに気づかないまま次の工程に行くことが多いのだとか。それで、うまく回復ポーションができないらしい。鑑定様様である。
さて、その後もあーだこーだした後、最後に砂糖っぽいやつを追加して、味を調える。途中にも入れたから、あまり入れると甘すぎるので、そこは、少し飲んでみて調節。こう聞くと料理みたい。個人的に塩味を少し効かせるとちょうどいい味になる。うん、いい感じ。
「よーし、完成...。時間かかりすぎ~」
私は机に突っ伏す。一連の作業を終えるのに約二時間くらい。それで、大体、小さめのポーション瓶10本である。しかも、シゼルの作ったものに比べて効果も薄い。あまりに割に合わない。他にやることがあったら、とっくにやめてるな。
「お嬢の腕はこれからだぜ!」
嫌味にしか聞こえねえ。私の召喚獣ながら、少し嫉妬する。なんせ、シゼルならこんな作業をやらなくても一瞬で中くらいのポーション瓶10本分になる。量も、速度も、質も段違いときた。私がやる意味がなさすぎる。まぁ、元々半分暇つぶしだからいいのだが。
私はいったん片付ける。そもそも人を来ないことをいいことに、カウンターで堂々とやるのはよくないね。
「はぁ、シゼルが手使えたら、片付けも楽なんだけど」
「わふ...。」
「あぁ、ごめんごめん」
まぁ、使えないものはしょうがないね。いつの間にか片付けも手馴れていた。私は一切の無駄なくものを片付ける。面倒くさいことはだらだら手早く、だ。
「さーて、一応棚の掃除するか~」
何もしなくても、棚に埃やらはたまる。それに、意外に掃除をすると時間がたつことに気づいた。まぁ、人が来ないので意味はないが、一応は店だ。それにやっておかないと、バンカさんに怒られるし。
掃除をやり始めて、大体十分、そろそろ億劫になってきた。モンジに丸投げしようか。
「嬢ちゃん、やってるかい」
「あ、バーレさん、いらっしゃい。四日ぶりかな?」
バーレさんがくる。この人は、客扱いしていいか微妙である。あれだ、バイトとか、仕事したことないが、経営顧問ってやつだ。多分。
「帝都も四日ぶりだな、仕入れに行ってたもんで」
なるほど、本業にかかりっきりだったわけだ。
「それで、今日はどういったご用件で」
「様子見に来ただけだな」
「そうなんだ、って言っても特に何もないけどね」
「まぁ、そうだろうな」
まぁ、こうして様子を見に来てくれるだけ暇つぶしになってありがたい。
「あ、お茶用意するね」
「お、悪いな」
「ま、ゆっくりしてけよ!」
「わふ!」
「そうさせてもらうぜ。おぉよしよし」
いつの間にか、シゼルとも普通に喋るようになっていた。最初に紹介した時にはたいそう驚いていたが。
モンジの方もずいぶんバーレさんになついている。バンカさんよりもなついてるかも。バンカさんに言ったらしょんぼりしそうだが。
「はい、紅茶一丁」
「茶屋でもそんな掛け声しねえよ」
「あぁ、あとこれ」
「これは、回復ポーションか? いいのか売り物もらって」
「いいよ~、ていうか私が作ったやつだし」
「おう! お嬢が作ったもんだからな! 売り物にならんよ!」
「シャラップシゼル」
「お、おう。ま、ありがたくもらうわ」
「ま、爆発とかしてないからね、効果は保証するよ」
「はっはっは! これくらいも作れないんじゃ、お嬢の腕より、お嬢の人生が心配になるぜ!」
「シゼルぅ?」
「何でもねぇ」
バーレさんが何とも言えない顔で苦笑している。バーレさんの前でいつもこんなやり取りしてるな。
「相変わらずいつも通りだねぇ」
「私はいつも通りでいいので」
「刺激とかほしくならんのかい?」
「ないですね」
本当にない。私はひたすらゆるゆると、そしてだらだらと暮らすのが目標である。
「ま、嬢ちゃんらしいか」
そこからはだらだらとどうでもいい世間話をする。私が解毒薬作るの失敗した話とか、バーレさんの商売話や愚痴とか、最近バンカさんとも話すようになったとか。主に私の話で。あとは今度三人でどこか食べに行こうかなんて話もした。
「ここでもいいじゃないですか~」
「お嬢ちゃんがそんなだから、バンカが外に連れ出そうとしてんだろうが」
「一応外出てますよ? 三日に一回くらい、そこに買い物に」
「徒歩五分の道のりを三日に一回じゃ、十分出不精だよ」
「俺から見ても出なすぎだぜ!」
ここに私の味方はいないのか、おうじーざす。
「さて、そろそろ日が傾いてくるし、そろそろ帰るわ」
「いつもこの時間に帰りますよねー」
「あぁ、今の借家が学生寮に近くてな、この時間に帰らなきゃ押しつぶされちまうんでな」
「学生寮?」
学生寮とはあの学生寮だろうか、遠くの地域から学校に通う者たちが泊まる。ラノベでおなじみの。
「ん? あぁ嬢ちゃん知らねぇか。帝都のここから反対側、そこには主に貴族様が通う学校があってな、この帝国中の優秀な子どもやらが通ってんだ。まぁ、その学生寮が結構近くてな。この時間を過ぎると、授業とやらが終わって、寮に帰ってくるんだよ。なんで普通の市民街の近くに作るかねぇ」
「それ学生の人たち危なくないの? ほら誘拐とか」
なんだか、少し危機感がない気がする。善良な市民が一般的とはいえ、学生を襲うような犯罪者だっているだろうに。
「ははは! そんなわけないだろう」
思いっきり笑われた。そんなわけないのか。
「学生つっても、ほとんどが貴族の子か、騎士、魔術師の卵だ。まず、一般の人間じゃ敵わねえ、冒険者でも、場合によっちゃ中堅どころでもぼこぼこされるレベルだよあいつらは。むしろ、学生たちが喧嘩した時の方はこっちが危ないらしいぜ」
この世界の学生、そんなに強いのか。いや、大抵こういう世界の学校に行けるような人は、優秀な人間か貴族なのだろう。そりゃそんじょそこらの一般人でも歯が立たないか。私も近づかないようにしよう。面倒くさそうだ。
「おっとさすがに急がなきゃな、じゃあな嬢ちゃん」
「はーい、お気をつけて~」
私は、席からバーレさんを見送って。体を伸ばす。そろそろ、店じまいしなきゃな。まぁ、店じまいしようがしまいが人は来ないが。と、気を抜いて、背もたれに体を預けていると、扉を開く音がした。
「ありゃ、バーレさん忘れ物?」
「違いますわ。それであなた、ここがジョゼという方の薬屋でよろしくて?」
最初のお客様が来店してきた。金髪縦ロールの。
読んでいただき、ありがとうございます。誤字脱字・コメントお気軽にどうぞ。
次回、新キャラ登場。どんなキャラかわからないでしょうが、お楽しみに。




