終幕カタストロフィ。
まず左足が沈んだ。次に地面が真っ二つに割れた。シャンデリアが空間の狭間に落ちてゆく。建物全体が震えている。セカイの地盤が歪み始めている。視界がぐにゃりと曲がった。真ん中に落ちてゆきそうになる。
天使の壁画が笑っている。
血色のカーペットが踊っている。
フォークとナイフがメニューを引き裂き、
ティーカップの液体が空中で静止している。
破壊レベル100。完全なるジャンル崩壊。
「…………なんだこりゃ。無茶苦茶がすぎるだろ……」
雪柳の体内が白く光っている。
口から無数の文字列をビームみたく吐き出している。
表情は見えないが、涙を流しているようだった。
「……雪柳ぃぃ……っ!」
必死に手を伸ばすが、身体が落下をはじめた。
なんにもない空間が、全てを呑み込んでゆく。
「──安心しろ、雪柳愛。
俺が必ず……お前のパパを取り戻してみせるから」
※ ※ ※
ーー気がつくと、そこは学校のグラウンドだった。
上空から突き落とされた感覚だった。
咄嗟に受け身を取ったものの、腰骨が痛む。普通だったら多分死んでいたと思う。俺だから助かった。
雨のせいで、手のひらが泥まみれだ。
目の前でサッカーゴールがバク転をしている。
────ジャァァァァァァァァァァン!!!!!
瞬間、大気が震えた。
ピアノの全鍵盤を同時に鳴らしたようだ。
巨大な爆音のスピーカーが起動している。
黒雲の層が振動している。
グラウンドが、恐怖している。
鍵盤が旋律を奏でている。
爆音のBGMが流れている。
曲はベートーヴェンの交響曲第五番「運命」。
隣には鵜飼ハルヒさんが立っていた。
ビショビショに濡れた前髪で、天を見上げている。
「──くるよ、作者が」
「はい?」
聞き返すと同時に曲が止まった。
──ゴゴゴゴゴゴッ、という地響きのような音。
雲が胎動している。
それはまるで「侵略」のようだった。
「え?……ちょっ、ま……嘘だろ?」
驚くべきことが起こっている。
もはや、それはジャンル崩壊どころの話ではない。
完全に次元を超越していた。
到底、信じられない。
発光した『巨大な黒のフォント』。
端的に言うなれば、
空に──“文字”が浮かび上がってきていた。
「………………なんなんだよ、これ」
【 消え失せろ──四天女 】
【 お前らの物語は“完結”した 】
【 お前らは、モブキャラだ 】
「…………………」
「…………え、三体のパロディ?」




