氷結フェアリーテイル。
部屋の窓ガラスが寒波によって、ガタガタと震えている。最強寒波がやってきていると聞いた。風が強い。気温は-1度。でも、風邪は治ってしまった。
こんな日にでも学校に行かないといけない。
×××
「うい」
「おお、徹平。生きてたか。てっきり死んだかと」
「白雪姫のキスで生き返ったわ」
「逆だろ。毒リンゴを食って眠っていたのが白雪姫だろ。お前は王子側じゃねーのかよ。それだったら白雪姫が二人になっちゃうだろ」
「美女と野獣みたいなもんだ」
「いや、美女と野獣は別にキスで野獣の呪いが解けたわけじゃないからね? 勘違いしてる人も多いけど、あれは“愛”によって、呪いが解けたの」
「……雪柳?」
「そっちの愛じゃねーよ」
「じゃあなんだ。キスで風邪が治ったのを適切に表現する喩えをくれよ。眠れる森の美女とかか?」
「だからなんでお前が美女側なんだよ。雪柳が倒れていて、お前のキスで目覚めたのなら合ってるけど、お前は美女じゃねーだろ。確かに眠れる森の美女も呪いで眠っててキスによって生き返るけど、それも白雪姫と同じ系統だよ。王子がキスして美女側目覚める。こういうノリ。わかった? お前の喩えは王子視点が抜けすぎなんだよ。全部逆な! 逆!」
「宗介……ディズニー詳しいなぁ?」
「好きだからだよ、なんか文句あるかよ」
「ねえよ、カイロくれ」
「やなこった。……え、てかお前、雪柳とチューしたの?」
宗介が小さなカイロを両手でにぎにぎしている。
俺はなにも言わずに、ガタガタ震える教室の窓を見つめている。
※ ※ ※
雪柳と付き合い始めて、一週間ちょっと。明日はバレンタインデーである。彼女は「ごめん、今日は早めに帰るねっ!」言って、ファミレスに行くことなく、すぐに帰宅した。本人は隠しているつもりだろうけど、多分きっと明日のために俺のチョコを作る準備をしてくれているのだろう。
なんて……良い彼女なんだ。
俺はこんなに幸せでいいんだろうか?
家に帰ってきて、特にやることもなかったのでニコニコ動画でゲーム実況を見ることにした。「ドキドキ文芸部プラス!」と同じ系統の「君と彼女と彼女の恋。」というのを見ようと思う。なんでもギャルゲーの常識を逸脱しているとかなんとか。
でも、しばらく見ているうちに中々話が進まなくて飽きてしまった。
やることねえぞ、久々にU-NEXTでシュタゲでも見るか?とかなんとか考えているうちに、小腹が空いてきたので外出することにした。
※ ※
ファミリーレストラン「ガスト」。
今日は雪柳はいない。
外は寒すぎてダウンを羽織らないと歩けなかったけど、店内は暖房が効いてて、逆に暑かった。
いつものNo.8のテーブルに着席する。
一人で来たが、使うのは二人用のデカいソファーがあるタイプだ。店内も少ないし、自由席だしな。
「ドリンクバー」と「ポテから」といういつものメニューを注文した。
すぐに料理が届いたので、ポテからを食べてコーラを飲みながらアマプラでも見ることにした。
このファミレスにはWi-Fiがあるのが良い。
「……」
伝票入れにレシートが入っている。
興味本位で手に取ってみる。
そこには注文した品が記載されている。
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ご利用ありがとうございました!
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商品名 数量 単価 小計
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ドリンクバー 1 299円 299円
ポテから 1 499円 499円
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合計 798円(税込)
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ファミリーレストラン「ガスト」
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「……ガスト?」
俺は思考する。
こんな名前だっただろうか。いや、確かにガストは知っているが、この店はガストではなかった。
ポテから、というのも変だ。
確か、俺と雪柳がいつも食べてたのは──。
「ちょっと、座らせてもらうわよ」
「へ?」
イヤホンをしながら動画を見ていたら、ドスン!と音を立てて、制服の女性が俺の前に着席した。膝下スカートの中からハイソックスを履いた両脚を出してきて、勢いよくテーブルに乗せる。
衝撃で、コップが倒れそうになる。
「──アンタが米吉 徹平?
ふんっ、冴えない顔してるわね」
同じ学校の制服だが、顔を見たことはない。ということは上級生なのだろう。
大きな胸を張って、腕を組んでいる。
爆乳美人おねーさんが、俺を見下ろしている。
視線が、妙に鋭い。
「あたしは3年E組の服部 新愛。アンタに頼みがあるの。──もちろん、聞いてもらえるわよね?」
───Next Stage.




