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終わらない夢

5年後の未来も、あなたと共に

作者: となりのOL
掲載日:2023/12/26

 とっくに沈んでしまった夕日を、いつまでも眺めていた。

 夜空に(またた)く星々が、俺たちの姿を優しく照らしてくれる。


 コスモスの咲く丘の上で、二人、肩を寄せ合って座っていた。

 この時が、一瞬のようにも、永遠のようにも感じる。


 頬をくすぐる、絹のように細い髪。

 肩に乗る、柔らく温かな頬。

 ともに前を向く、長いまつ毛。

 そして、手に触れる、細くて冷たい指。


 許されない関係だとも思う。

 

 本当は、ずっと秘めていたかった想いだった。

 けれど、あなたに触れて、隠したままではいられなかった。

 

 肩から伝わるゆっくりとした鼓動に、あなたの口から漏れる吐息に、耳を澄ませる。

 鼻から息を吸い込み、静かに、深く、この雰囲気を堪能する。

 

 冷えた空気に、脳が痺れるようだった。

 穏やかに周囲に舞う白い息だけが、俺たちを歓迎するように浮かんでは消えていく。

 

 いつまでもこうして、ここにいたいと願う。

 やっと掴んだこの光を、決して離さないと。


 ……ただ、それは、叶わない願いだった。


「5年後の俺たちはさ、どうなっていると思う?」


 何気なく放たれた言葉だった。

 それは、俺たちを取り囲む世界が何て美しいのかと、(とろ)けていた時だった。

 

「……変わらないよ」


 心の底から、そう思っていた。

 

 俺の言葉に、ふと、肩に乗っていた頭が動く。

 星空を受けて、宝石のように輝く瞳に見つめられて、ゴクリと喉が鳴った。


 ああ、あなたへは、(なお)も届かないのか……。

 そう、察した瞬間だった。

 

 ……あなたは、特別だ。

 俺にとっても……周りの人間にとっても。


 その瞳に囚われて、全てをあなたのために投げ出したくなる。

 けれど、その瞳は俺の真意を見透かし、遥か遠くを見通している。


 それは時に、手が届きそうに近くて……。

 それは時に、手を伸ばすことも許されないほどに遠くて……。


 誰もがあなたを見つめ、あなたに見つめ返される。

 けれど、本当に全てを投げ出し、受け入れられるものはいない。

 

 俺の心の奥底を覗く瞳に、また、ゴクリと喉が鳴る。

 

「ずっと、一緒にいてくれるのか?」


 あなたから向けられた、まっすぐな瞳。

 熱を帯び、(すが)るようなその瞳に……俺は揺れてしまった。


「ああ……」


 ぎこちない返事だったろうと思う。

 俺は、あれほど願っていた光を、やっと手に入れた光を、手放してしまった。


「お前は、本当に優しいな」


 すべてを悟ったあなたは、小さくそう呟いた。

 悲しそうにフッと微笑んで、瞳の奥に映る光は、目の前で消えた。


 ……そうしてあなたは、いなくなった。

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