第4話 喫茶店にて 13:23
受け入れ。協力。
俺と彼女が数秒動きを止めた後、口を開いたのは2人の間に居たダウナー男子だった。
「えっと、2人は知り合い?」
「な、なんで此処に痴女が
「ちょっと!!」
言った後彼女はハッと気づき、その大きな声に店内に響き渡っている事に気付く。彼女は全体に向かって小さく頭を下げて、席へと着いた。
「ちょっとした顔見知りなんだよぉ〜、ね?」
「……まぁ」
ここで無理に話をややこしくしても、店の迷惑になるだけ。ここは大人しくするのが吉だろう。それに態々話す必要もない。
俺はなるべく話に関わらない様、ソーシャルゲームに集中した。
「へぇ、そうなんだ。同じ学校?」
「ま、まぁ偶々話す時があって」
彼女は焦っている様だが、笑顔で彼と話していた。彼に良い所を見せようと取り繕っている様に見える。
「そうなんだ。同じクラスとか?」
「いや、本当に偶々で。一言二言話した事があるぐらいなの」
どうやら会った事は認めているらしい。俺としては、会った事すら認めて欲しくはなかったのが本音だったが。
右隣から聞こえて来る話にイライラとしながらもゲームに集中していると、隣にいたダウナー男子が突然席を立った。
「あ、ごめん。俺ちょっとトイレに行って来るよ」
「はーい……」
「……」
彼女は此方を睨みながら、テーブルにあったプリンを食べ始めた。顰めっ面のままの彼女はただただプリンを食べ進めている。
「ねぇ」
「……」
彼女が一言声を掛けて来る。それは周囲の人達には聞こえない様な声量だったが、俺は無視した。彼女と話して何の得があると言うのか。
折角新しい開店した店の美味しいプリンも食べて、これからホットケーキも来ると言うのに……食べる前に態々不快な気持ちにならなくても良いだろ。
俺は女子と話して碌な事しかなった事がない。道を聞かれる等本当に些細な事なら問題無いが、この様な場で世間話となれば必ずと言っても良いほど、幼馴染の連絡先を聞かれた。同じ学校と言っているなら、学校でも有名人な3人の事を知っている筈。
聞いて来ない訳がない。
「無視しないでよ…………私の裸見た癖に」
ゴッ
俺はカウンターにあった足場から足を踏み外す。
そ、それはそれだろう……。
「何よ、聞こえてるんじゃない」
「はぁ……悪かった。だけど、アレはお前があんな所に居たからで決して俺の所為じゃ……」
俺は何故謝ってるんだと冷静になり、口を閉じた。
すると彼女は何か戸惑っている様に視線を動かしながら話し掛けて来た。
「別に、謝って欲しいって訳じゃないから……ただーー」
ガタッ
俺はその後の言葉が予想出来た。
『謝って欲しい訳じゃない、ただ見た代わりに、幼馴染との連絡先・仲を取り持って欲しい』
勿論、俺がやってしまった事は大事だ。しかし、全て悪いと言われればそうではない。全面的に悪いのは彼女の方だ。
俺は彼女の言葉に聞く耳も持たず、トイレの方へと向かうのだった。
「……ふん」
俺は奥にある角を曲がり、gentlemanという立て付けが掛けられた方へと入る。
そして何度か通路を曲がり、小便器の前でチャックを下ろした。
はぁ〜……まさかこんな所で会うなんて。
予想外としか言いようがないこの状況に、思わず大きな溜息が溢れる。喫茶店で楽しくデザートを食す予定だったのに、これでは美味しいものも美味しく食べられない。
さっきの彼が戻るまで、此処に居させて貰おう。
そう思い、ふと気付く。さっきの彼もトイレに来ていたと。そうして個室に耳を傾けると、聞き覚えのある声が聞こえて来る。
「あー……じゃあ5日は? 5日の午後から……OK? よし! じゃあ楽しみにしとくねー……はーい」
誰かと話をしていたのか、話し声が聞こえなくなると同時に彼は個室から出て来た。俺に気付くと、彼は目を細めて此方を見て来る。
「あー……貴方もトイレに来てたんですね」
「まぁ、はい。生理現象なんで」
そんな鋭い目で見て来なくても。
俺が出すもんを出している間に、彼は俺の後ろを通り過ぎて手を洗って出て行った。
おいおい。ウ○コを流さないだと? 汚過ぎるだろ?
俺は流石にこの喫茶店に悪いと思い、個室へと入って後処理をしようとしたが……
「何だ、ちゃんと流してたか」
ま、流石にウ○コを流し忘れるなんて、そんな爺ちゃんじゃあるまいしある訳ないよな。
そんな事を思いながらトイレを出て席に戻ると、俺の隣に居たカップルは何故か話もせずにただ座っていた。
喧嘩でもしたのか?
嫌な予想に嫌気が差しながら席に座るとーー
「ねぇ、澪が何処に行ったか知らない?」
「はい?」
突然話しかけられ、俺は?マークを浮かべ首を傾げた。
「知りませんけど。てか澪って?」
「何だ、名前も知らない関係だったんだ。アンタ達」
そんな事を言われたって、知らんもんは知らん。ウ○コ流さない人とは話したく無いし。
流石に神聖な喫茶店では言えず、口を引き結んでいると、彼が口を開いた。
「水瀬 澪。俺の《《隣に座ってた彼女》》だよ」
は?
俺はその言葉に、彼の隣に目を向けた。
そこには《《彼女が今も居る》》。少し呆然としている様に見えるが、確かにそこに居る。
……彼の言っている事が俺には理解出来ないんだが?
「……座ってた?」
俺がもう一度問い掛けると、彼は頷いて隣に手を向けた。
「あぁ、さっき話してたろ? 此処に居た奴」
そう言われても未だに理解出来ない俺。
どうしたら良いのかも分からないので、無視しようかと思っていると彼の隣に座っていた彼女、水瀬澪が立ち上がり、俺のすぐ背後へと近づいた。
「来て」
「は?」
「良いから、店の外に来て」
意味が分からないの連続だ。
「何でだよ? 俺、ホットケーキ頼んでるんだけど」
俺は振り返る事もなく言う。
ったく、何だってんだ2人して。これが世に言うサイコパスって奴なのか?
「ん? 誰と話してるんだ?」
ほら。2人して協力してるだろ? 2人が面白いって思ってても、やられてる方は全然楽しくないから。
俺は2人を無視して、スマホに目を向けているとーー
「いいから来てって言ってるでしょッ!!!!!」
先程よりも数倍デカい声に、俺は思わず身体を跳ねさせた。これ以上騒がれても面倒だと、俺は大きく溜息を吐き振り返ると、そこに居たのは真剣そうに眉間に皺を寄せ、目尻に涙を溜めている彼女。
「…………はぁ。すみませーん!やっぱりホットケーキキャンセルでお願いします! お代は此処に置いていくのでー!」
俺は何枚かの小銭をテーブルへと置くと、彼女と共に店から出た。
「面白い!」
「続きが気になる!」
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