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第1話 水も滴る美少女と共に 8/1 11:01

新作です。よろしくです。


始まり。

 8月1日、夏真っ盛り。気象庁の話によれば、今日は35℃を超えるらしい。

 学生である俺にとって、この夏休みは最高でもありながら最悪の時季と言っても良いだろう。


「あー……あっちぃ……」


 これが証拠だと言わんばかりに、俺の顎先から陸上競技場のレーンへ大量の汗が流れ落ちる。


 痩せる為とは言え電車で行けば良かったかも。


 俺、入江(いりえ) 国史(こくし)16歳は、100キロオーバーの体重を持った唯の高校1年生だ。


 俺は後悔していた。

 何故ダイエットを始めようと思った今日に限って暑過ぎるのかのと。


 午前中の内に学校に隣接している陸上競技場でウォーキングでもしに行こう。そんな事を思ったばっかりに、ニュースを見る事も忘れてしまった自分に言ってやりたい。


 ご飯おかわりなんかしてる暇ないぞ、制汗シートぐらい持って行けと。


「うわっ、見てアレ」

「うわー……"ギッシュ"じゃん」

「やっぱり()()3()()がいなきゃ唯のデブだよねー」


 競技場の中心で練習する陸上部女子からの冷たい言葉が、耳へ入って来る。



『ギッシュ』


 これはあまりに汗をかくから付けられたあだ名で、油"ギッシュ"から来ている。

 まだ高校に入って数ヶ月でそんなあだ名が定着してしまったのは、3人のそれぞれジャンルが違うイケメンを幼馴染に持っていながら、それ以外何の特徴もない男の所為だろう。


 端っこを少し歩いているだけで、その言い草はなんだ。しかもどんだけデカい声で話してんだ、このヤロウ。


 そんな事を内心吐き捨てながら思う。

 3人が居なきゃ悪口なんてこうして言われ放題だが、俺にとっては、こっちの方が分かりやすくて好ましいのもまた事実。


 逆に悪口を言って来ない人も居り、しかもそれは女子達の作戦で、3人の幼馴染である俺に優しくする事で良い女アピールをしている者も居るのだ。

 まぁ、幼馴染達(アイツら)もそんな見え見えのアピールに騙させる事なく、そのツケは結局俺へと回って来るのだが。


 そんなずる賢い女子達が取った行動がーー


 幼馴染達には冷たくあしらわれるので、デブのギッシュから連絡先を教えて貰おう。


 そう思っての女子達の行動が、長年俺の精神をジワジワと痛めつけていて、今も尚続行中だ。


「もう絶対に騙されない……!!!」


 勿論、全ての女子がそうでは無いのは分かっている。だが、これまで精神を痛めつけた出来事を考えれば、そうとも言えないのが現状だ。

 小学校の時に謎に言い寄って来た歩ちゃん。謎にいつも勉強を教えてくれた明里ちゃん。謎にマラソン大会頑張ろうと一緒に走ってくれた沙織ちゃん。etc………。

 謎にそんな事をしてくれたのかは、全部が全部、幼馴染達の連絡先や関係を取り持って欲しいという願望の為だった。


「何かこっち見てる」

「キツイ」

「やば」


 周囲に睨みを効かせていると、ドン引いた声が鼓膜へ響く。これがギッシュと言うあだ名が付いたデブの宿命である。


「はぁ……そろそろ教室で休むか」


 不意に視界に入った時計台が11時を指している事に気付き、俺は歩くのを止めた。陸上部も練習を終える様で、片付けをしている。

 もう少しで昼時。昼は幼馴染達と一緒にご飯を食べる予定だ。その前に汗でも流しておくか。

 俺は更衣室にあるシャワー室へと向かうのだった。




 そして陸上競技場にある更衣室の中の、並んで2つあるシャワー室。

 12時になれば、我先にと午前部活だった者達によってシャワー室の争奪戦になるらしいそこは、まだ誰も居らず閑散としていた。


 外に入れば聞こえて来る感慨深い蝉の鳴き声が、更衣室に入った事で異様に静かになり、どうも煩わしく感じる。


 さっきまで嫌な事を考えてたからか?

 俺はそんな事を考えながらすぐに服を脱ぎ、畳んでロッカーに入れると1番奥のシャワー室へと入った。


 中は蛇口とシャワーだけが付いた、簡素な作りになっていた。


 ま、シャワーが付いているだけでも贅沢ってもんか。


 俺は手際よく、横っ腹や顔をマッサージしながら全ての汗を流し終える。するとその直後、外から扉がゆっくりとだが開いた音がした事に気付く。

 もう部活が終わった奴が来たようで、随分急いでいるみたいでガサゴソと音が聞こえて来る。


 俺も混む前に出た方が良いな。


 そう思いながら、最後に冷水のシャワーを頭から浴びていると、隣のシャワー室の扉が開閉音が響いた。


 気分もスッキリしたにも関わらず、流石の乱暴な開閉に心がモヤっとしたが、この人にも事情がある筈。無闇に注意するのは良くない。


 そう判断し、俺はシャワー室から出て、持ってたタオルで水分を拭き取りながらスマホで時間を確認した。時間は11時半だ。


 早く行って教室で涼もう。


 制服に着替え、ロッカーから荷物を持った瞬間。



「え! もう!?」


 シャワー室から、甲高い声と扉の開閉音が鳴り響く。反射的に振り返ると、そこに居たのは部活終わりの男子生徒ではなかった。



 艶やかしく、細く、長い黒髪が濡れており、飛び出してきた拍子に飛んで来ただろう水滴が顔に飛んで来る。幻覚を見ている訳でもない。

 奥から此方を見る凛とした顔立ち、長いまつ毛に縁取られた瞳に、均整の取れた鼻筋、ぷるんと潤っている桃色の唇は薄く開かれ、耳の横に翳された手にはスマホが握られている。


 下に視線を移せば、一糸纏わない柔らかそうな生まれたままの姿が目に入った。


「やばいヤバい!?!?」


 その女子は俺の事を何も気にする事なくロッカーへと移動すると、目の前で着替え始めた。


 急いで下着を装着しているのが目に入り、揺れる肢体がとてつもなく艶かしく、頭がクラクラとしてくる。


 彼女はそんな俺に視線を向けて来た。

 俺は冷静を装いながら急いで彼女から視線を外し、手に持っていたスマホに視線を落とし、すぐ様幼馴染のグループに連絡する。


 至急! 陸上競技場更衣室まで来られたし!! 何故か隣で女子が生着替えしてる件について!!


「……ふぅ」


 内心焦ってる俺を知らずか、横に居る彼女は暫く俺を見続けると安心したかの様に大きく息を吐いた。


 何が起こっているか分からない。

 もしかしたら自分は異世界に飛ばされたのではと思ってしまう。


「早くしないと……」


 急いで私服であろうGパンを履こうとピョンピョン跳ねる彼女の髪から滴る水が、床に飛び散る。やはり居る。そこに彼女は居るのだ。


 コイツの感性狂ってんじゃないか!?

 とも言える訳も無く、俺が動きを止めていると、更衣室の扉が開いた。


「はぁっ! はぁっ! 国史ーッ!! さっきの連絡本当だろうな!!? 嘘だったら幼馴染のお前とは言え容赦しねえぞ!!?」


 そこにはとんでもなく息切れをした幼馴染、(なだ)アレクが登場する。どんだけ必死に来たんだ。

 いや、それも後で言おうと、俺は彼女を指差した。


「アレク!! コイツだーっ!!」

「えっ!?」


 彼女は大きく目を見開いて、此方を見て来た。


「よし!! ちゃんと目に焼き付けて……」


 そしてアレクが俯いていた顔を上げたと同時に、アレクは動きを止めた。



「? 何だ、()()()()()()()()()()?」



 アレクは首を傾げて、見るからに落ち込んだ様子で大きく溜息を吐く。



 は!? な、何で!!



 彼女の方を見れば、彼女はバスタオルで身体を隠しながら此方を細目で睨みつける様に見つめていた。その後彼女は大きく手を振りかぶりーー



 バシンッ



 いってぇ。


 俺の左頬に当たったそれは、大きな音を立てて赤紅葉を作った。そのぶたれた勢いのまま座り込んだ俺に、アレクが心配して近づいて来る。


 何が起こったのか理解も出来ず、彼女はアレクの隣を通り過ぎ、更衣室から出て行く。


 俺は花の匂いが漂ったジワジワと汗が噴き出る更衣室で、大きく溜息を吐くのだった。

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