Ⅷ.しるし
「俺がまた戦えるくらいになるには3日くらいかかる。メイリーに来てもらったのはそれが主な理由だったんだが、もう一つメイリーにやってもらう仕事が増えたな」
リュウジがそう言うと、メイリーとニシオカは頷いた。
「えと、どういうことですか?」
「...翅徒に何度も襲われるなんて、ものすごくレア。おかしい」
メイリーはユウスケに近づいた。互いの呼吸が分かるほど顔を近づける。ユウスケの心拍数が少し上がった。
「ユウスケ君が翅徒にマーキングされてるんじゃないかって、センパイは考えたわけだ」
「メイリーさんにはそれが分かるってこと?」
「あいつらを寄せる匂い、分かる」
メイリーはユウスケのうなじ、腕、背中とじっくり嗅いでいった。
一通り嗅ぐと、リュウジのほうを振り向いて答える。
「...やっぱりユウスケ、マーキングされてる」
「やはりか」
「...めんどくさいことになったねユウスケ君」
「そ、それってかなりマズイことなんですか!?」
ニシオカが真剣な表情になったので、ユウスケは動揺した。
「ここら一帯に潜んでる翅徒は、お前めがけてやってくる。マーキングがいつ効力を失うかは分からん」
「しばらくウチに居たほうが良さそうだよ、ユウスケ君。大丈夫大丈夫!ボクらがなんとかするからさ!」
ニシオカはそういうものの、リュウジとメイリーは眼差しを下に向けて暗い表情をしているようにユウスケは感じた。
4人は翅徒の死体を処分し終えると、ニシオカのマンションに帰っていった。