Ⅳ.秘密
「さて、どこから話すべきか..."奴ら"は自分たちを"翅徒"だと、そう名乗った」
そういうと、ユウスケは驚いた。
「名乗った?会話できるんですか?」
「そうだ。俺より前から戦ってた男によると、ごくたまに知能の高い個体がでるらしい。俺は戦い始めて5年くらいだが、一度も出会ってないけどな」
「でも奴ら、見た目は統一性がないというか...同じ種族っていうにはあまりにも違いすぎって感じだよね」
ニシオカはこれまで遭遇した翅徒を思い出してそう言った。
「翅徒のサンプルを何体か知り合いに頼んでDNA解析してもらったことがある。ほとんど共通はしていたが、近縁の別種くらいの違いらしい。そして更におかしなことに...奴らの遺伝子は地球上で発見されたどのグループとも一致しない」
「じゃあ、正体は地底人とか宇宙人とかそういうこと!?」
ユウスケはやや興奮気味に言った。最近の学生にしては珍しくオカルト好きなのか?
「それはどうだろうな。今はとにかく奴らが人食いの怪物ということと、何故か俺たちのように察知し、バケモノに変身して戦える人間がいることくらいしか分からん」
「翅徒が人を襲うのが分かるんですか?」
ああ、とリュウジがいうとニシオカが付け加えた。
「なんかこう...突き動かされるんだよねぇ。奴らを排除しないといけないって気持ちになんのよ。ボクなんか今までリスクを取らない主義だったのにさ」
「俺たちがこうなった原因もよく分からん...ある日突然そうなった。変身のコツを掴むには、少し時間がかかったが...」
ユウスケは小さく頷き、もう一つ質問が、と言った。
「どうして世間にバレたら不味いんです?」
それを聞いたとき、やや軽薄さの見えるニシオカさえも神妙な面持ちになって口を開いた。
「以前...仲間の一人が警察や軍に協力してもらおうと、翅徒の死体を持って接触したんだけど...その時から...」
「...そいつとは連絡がつかなくなって...家族も突然いなくなった」
それは、この翅徒という怪物について、国や大きな機関が背後にいる可能性を示唆していた。